表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/17

吸血鬼とメイド アルト過去編6

 エルゼと食事した日からアルトは時折孤児院へ顔を出すようになった。

 これきりだろうなと思っていたが街で見かけるたびにエルゼはアルトに声をかけるようになり半強制的に孤児院へつれていかれるようになったためだ。

 

孤児院では人手が足りないらしく暇ならばとアルトに子供の相手をさせているのだ。

そのかいあってか子どもたちに懐かれ今ではアル兄なんて呼ばれている。


孤児院の年長者はエルゼで15歳。その他は大きくても11歳らしい。年上のお兄ちゃんができたみたいで子どもたちははしゃいでいる。


「アル兄今度は何して遊ぶ?」


「ダメ!次はハナとおままごとするの」


 喧嘩をする子どもたちをなれないながらも落ち着かせようとするアルト。しかし、子どもたちはアルトのことはお構いなしにいがみ合っている。

つい先日までアルトに対して人見知りしていたハナは今ではアルトにべったりである。


 今まで自分のことを取り合っていたのに当の本人の声はきこえていない。なんと滑稽な状況なのだろうか。自分で自虐する。


「こら!喧嘩はダメよ!!」


そこへ見かねたエルゼが仲裁に入る。


「ユーリは今遊んでもらったでしょ?次はハナの番よ」


すると今まで喧嘩していたはずの二人が面白いように大人しくなる。


さすが年長者の貫禄といったものだろうか。


アルトはハナに連れられ女の子たちが集まるところへ案内される。


「ミーナちゃんは夫を懸命に支える娼婦で、カナちゃんは女癖が悪くてギャンブルに財産をつぎ込む夫。エレナは仕事のできない社会不適合者で家に引きこもる息子役!」


(おいおい、悲惨な家族だな。もうすこし可愛らしいおままごとはできないのか!?)


アルトは毎度ながら現実味のある脚本を考えるハナが本当に10歳の少女なのか疑いたくなる。


「そしてアル兄がペットの犬!」


(こんな凝った設定作っておいて俺は犬かよ!?)


アルトは心のなかで盛大なツッコミを入れた。


 ハナの作った脚本はやや独創的だが女の子たちは気にせず楽しそうにおままごとをしていた。

アルトも見事ペットの犬の役を演じきった。子供の順応能力に恐れ入る。


 アルトは疲れたと椅子に座る。すると目の前に香ばしいコーヒーの香りが漂ってくる。

コーヒーがテーブルに置かれていた。


「お疲れ様」


 エルゼがコーヒーを入れてくれたのだ。


「随分と役にハマってたじゃない」


 エルゼはからかうように言うのでアルトは不貞腐れたような顔になる。


「まぁ、一カ月も続ければ慣れたものさ」


アルトはまんざらではないように言うと席を立った。


「日が暮れるからそろそろ帰るとするよ」


「あら、もうそんな時間なのね。たまには泊まっていけばいいのに。みんな喜ぶよ」


「いや、遠慮しておく」


エルゼが楽しそうにそう言うがアルトは少し複雑であった。夜になれば月の力が強くなり吸血鬼たちは活動的になる。


食事も夜に済ませるため、めったに孤児院には泊まらない。


「アル兄もう帰っちゃうのかよ」


「まだ遊ぼうよ」


ジョンとアーシャが寂しそうに言う。


「また明日来るよ」


エルゼたちに見送られながらその場をあとにした。


*******


薄暗い地下室にアルトはいた。


アルトは女性の首元に噛みつき血をすする。

血をすすられている女性はアルトの能力で快楽に溺れている。


喉の渇きを潤うために定期的に人間の血を飲まなければならない。

渇きを放置すると人格が崩壊し理性を失いただの化け物と化する。


「もと、あ~ンもっと血を吸って」


女性はアルトの首に腕をからめる。

普通の吸血鬼なら歓喜の笑みを浮かべるのだろうがアルトが感じるのは嫌悪と不快感だけであった。


アルトの能力で判断力が機能していない相手の言うまま吸い殺してもいいのだろうか。

エルゼたちの出会いで少しずつ変わりつつある価値観に戸惑うアルト。


「早く吸ってあげないの?」


リークが面白そうに言う。


「早く吸ってあげないと彼女苦しそうだよ?」


快楽に溺れ血を吸えと懇願する女性は苦しそうに言う。しかし、アルトは吸おうとはしない。


「君が吸わないなら僕が吸ってあげる」


リークはアルトから女性を奪うと懇願されるまま血を吸う。

血を吸いつくされた女性は生気が抜けたように肌は青白くなっていた。

女性を無造作に床に放り投げる。


女性は幸せそうに微笑んでいた。


「彼女たちが懇願しているんだ。罪悪感を持つ必要がどこにある?」


確かに女性は幸せそうに微笑んでいる。だがなぜだろう。彼女の笑みはどこか歪で偽りの物のように感じた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ