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吸血鬼とメイド アルト過去編5

翌日。

いつも通り吸血鬼らしくなく日中に目が覚める。

喉の渇きは癒えいないはずなのに人間の食べ物を食べたい。


アルトは昨日食べた料理が忘れられなかった。人間が作る食べ物があれほどおいしいとは思いもしなかったからだ。


あまり人間の街にはいかないのだが昨日の料理が忘れられず、街に行くことにした。

市場に来てみるとそこは人でにぎわっていた。野菜から魚介類まで様々なものが並べられていた。


そこで目についたのはイチゴを飴でコーティングし串刺しになっているものだった。真っ赤に美しく光り輝くその飴はどの宝石よりも美しく輝きとても魅力的に映っていた。


店主のおばさんに声をかけようとするがどのように話しかければよいのかわからずあたふたしていると、おばさんの方から話しかけてくれた。


「いらっしゃい!何が欲しいんだい?」


「……一つくれ」


いちごあめを指さして言う。


「あいよ、200シニーだよ」


アルトは懐から袋を取り出すと小さな金塊を取り出す。


「あんた、これは……」


おばさんは小さな金塊を見ると驚く」


「こんな高価なもの受け取れないよ。硬貨はないのかね」


硬貨の存在を知っていたが、お金に換えるのがめんどくさく、今までの買い物もこのように金塊を渡していた。たいていの人間はこの金塊を見るな否や顔色を変え喜んで受け取っていたのだがこの人間は違うのだろうか。


「オリヴィエさんこれでいいかな」


対応に困っていると聞き覚えのある声が後ろから聞こえてきた。


それはエルゼだった。先日孤児院の少女を無理やり連れ査垂れるところをたまたま助け顔なじみとなった。

自分は助けた覚えがないんだが彼女は恩を感じているらしく食事までおごってくれた。これが人間の食べ物に興味を持ったきっかけなので感謝はしている。


エルゼはオリヴィエと呼んでいるおばさんに銅色の硬貨を渡す。


「エルゼちゃん助かったわ~。この子どこの箱入り息子だか知らないけど丸々金塊を渡してきたんだもの。びっくりしたわ」


そのことを聞いてエルゼは笑う。


「あんたどこの箱入り息子なのよ。硬貨も持っていないなんて。お金の使い方を教えてあげようか」


からかうように言うのでアルトは少しムスッとしながら


「硬貨の使い方くらい知っている。ただ換金するのが面倒なだけだ。それに金塊を出せば大抵の物は買えるしな」


「それで街で暮らすなら硬貨くらい持っていた方がいいわ。それに金塊なんて持ち歩いていたらそこら辺のごろつきたちに身ぐるみはがされるわよ」


「そのようなことにはならない」


「強気なのはいいけど複数で来られたらひとたまりもないわ」


「大丈夫さ。人間はもろいからな。軽く力を入れただけで簡単に壊れる」


アルトが淡々と話すその言葉は冷たさを帯びておりエルゼは少し恐怖をおぼえたのか顔がこわばった。


それにアルトの瞳が青から一瞬だが赤くなったのをエルゼは見たが見間違えだろうとあまり気に留めていたかった。


「それでもこの街で暮らしていくなら硬貨くらい持っておいた方がいいわ。みんながみんなありがたく受け取るわけではないからね」


アルトは考えるそぶりを見せる。


「君の言うとおりだな。それこそ先ほどの店主のような人だったらそれも面倒だ。換金所へ案内をお願いしてもいいか?」


一瞬凍えるくらい冷たい雰囲気はなかったかのようにいつものどこか抜けているような感じへと戻っていた。


「案内はいいのだけれど、私の用事につきあってくれたらいいわよ」


「もちろんだ。そのくらいつきあおう」


********


2人は野菜を売っている露店にいた。


エルゼは野菜を選ぶと次々と店主に言う。カゴはあっという間にいっぱいになってしまった。

そしていっぱいになったかごをアルトに背負わせる。そして野菜だけではなく調味料や魚など日々の料理に必要な食材を買い集める。そしてあっというまにアルトの両手には食材でいっぱいになった。


「よし、こんなもんかな」


「こんな量を毎日買っているのか?」


「そうねえ、毎日買い出しはしているけれど今日は特にいっぱい買っちゃった。頼れる荷物持ちさんがいるからね」


「おまえなあ……」


その後二人はアルトの金塊を硬貨に換金し孤児院へ向かった。





アルトは大量の食材をテーブルに乗せる。


孤児院へ着いたが子供たちがだれ一人もいなかった。


「ガキどもはどこに行ったんだ?」


「ここにはね広い裏庭があってねみんなそこで遊んでいるの」


食材を整理していると裏口の方から子供たちの騒がしい声が聞こえてきた。


アルトに気づくな否やアルトの周りを子供たちが取り囲む。


「アルト兄ちゃんだ!僕と遊ぼ!」


「何言ってるのさ。僕と遊ぶの!」


幼い少年たちはそう言い争いながらアルトの服を両側から引っ張る。


「こら!困ってるでしょ。それにお兄ちゃんの服が伸びるでしょ!」



「「ごめんなさい」」


叱られた二人はおとなしくなる。


「ごめんね、騒がしくて」


「べつに気にしてない」


服にも大して執着がないし、それに子供たちのにぎやかな声も不思議と不快ではなかった。


「この二人はアーシャとジョンよここでは最年少の悪ガキどもよ」


「今度このジョン様が遊んでやってもいいぜ」


「アーシャだよ。よろしくね」


ジョンの大きい態度にまたエルゼがしかる。なぜ怒られるようなことをするのか。学習能力がないのか。


「年中組のピンクの髪の子がイヴ、緑の髪の子がセラ、茶髪の角刈りの子がヴォルク、黒髪で髪を一つに結わえているのがナイン、金髪の子がチェイスよ」


「エル姉、このじゃがいもは裏に持って行ってもいい?」


「助かるわロイお願いね」


つばの付いた帽子からカールのかかった茶髪が見える。

せっせとジャガイモを運ぶ姿は少しでもエルゼの助けになりたいという思いが伝わってくる。


「あの子私の次に年上なものだから自分がお兄ちゃんなんだっていって手伝ってくれるの。だけどまだ12歳だからあまり無理はしてほしくなくて」


「いつまでそこに隠れてるつもり?」


物陰に隠れている子を引っ張ている少女がいた。


「マーガレットそこで何をしているの?」


「ハナが引っ込んで出てこないの」


エルゼはしょうがないなあとかわいい妹を迎えに行く。

ハナはエルゼに連れられてくる。


「ほら、渡したいものがあるんでしょ?」


「ハナ頑張れ!」


声援を送るマーガレットと背中を押すエルゼに励まされハナはモジモジとしながら後ろに隠していたものを差しだす。


それは花冠であった。


「ん……」


ハナはアルトに花冠を差し出す。


「これを俺に?」


ハナは頷く。


花冠を受けとるとハナは逃げるようにその場を立ち去った。


「待ってよハナー」


マーガレットも後を追う。


「あなたのために一生懸命作ったんですって」


「俺のため?」


「あなたこの前ハナを助けてくれたでしょ?そのお礼だそうよ」


生まれて初めての贈り物に少し慣れなかったがとても暖かい気持ちになった。今度何かプレゼントでもしてみようか。これまでに抱いたことのない気持ちをアルトは体験したのであった。


「ねえ今度親睦会としてみんなでピクニックはどうかしら?」


ピクニックと聞いて子供たちが満面の笑みでエルゼの周りに集まる。


「ピクニック行きたーい!!」


「俺も俺も!!」


アーシャとジョンが満面の笑みで言う。

他の子供たちもはしゃぎ出す。


「アルトもいくでしょ?」


「いや、俺は……」


誰かとなれ合うなんて今までの常識では考えられなかった。深くかかわりすぎると自分の正体がばれてしまう恐れがあるからだ。なにより、それを理由に他人との交流を避けてきたのでどう接していいか分からない。いわゆるコミュ障である。


断ろうとしたが子供たちの熱いまなざしがそれを許さなかった。


「わかった。いくよ」


「「やったー!!」



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