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83.決意と決闘

「ほう、アルスよ。そなたはフィーナの承認無しでは戦わないのか?」

『私の判断で戦ったことはあります。フィーナを守るためアッセンでは戦いました』

 通訳が追いつかなさそうなので一旦切る。

『ですが、この腕試しにはフィーナの身の安全が掛かっておりませんので』

「なるほどな」


 さっきからエスタが尻尾でバンバン叩いてくる。ええい、黙ってろ。


「フィーナよ、どうだ? アルスの力を皆に見せてくれないか?」

 呼びかけられたフィーナは俺に微笑み掛けてからゆっくりと顔を上げた。

「領主様、質問をお許しください」

 随分フィーナは落ち着いて見えた。声も震えず、真っ直ぐに領主さんを見つめている。

「許す。なにかね?」

「この腕試しには危険は無いのでしょうか?」

 フィーナの言葉に領主さんが何故か嬉しそうに目を細めた。

「騎士の訓練でも時に怪我をすることがある。まったく安全であるとは保証できん。だが、命の取り合いをさせる気はない。結果がどうであれ、アルスはお前の元に無事に帰ってくるであろう」

「領主様、お答え頂きありがとうございます。それでは……アルスの力をお確かめ下さい」

「結構! では練兵場の準備をさせるとしよう!」



 こちらです、とここまで案内してくれた兵士について練兵場に移動する間、ブチブチとエスタに文句を言われた。貴族達は俺たちよりも先に会議室から退出し、周りに身内しか居ないので言いたい放題だ。

『フィーナちゃんに判断を振るとか何考えてるんですか!? 貴族に目をつけたれたりしたらどうするんですか!』

『フィーナが飼い主の責任を果たすといってここに来たんだ。それなら俺はその責任を尊重するだけだ』

『って言ってもねぇ。いきなりあんな事言うから気でも狂ったのかと思ったわよ』

『そんなにかよ……』

 俺は思わずため息をついた。


「それにしてもフィーナちゃんは受け答えがしっかりしていて立派でしたねぇ」

「あ、はい、ありがとうございます」

 突然ミリルフィアに褒められたフィーナがはにかんだ。可愛い。

「アルスの信頼に答えないとって思って、頑張りました」

『あー、やってらんないわ』

 キョーコがむくれたような声を出した。

 ふふ、照れるぜ。



 練兵場は城壁と城に挟まれた空き地だった。端に何か積んであるとかカカシみたいな標的が置いてあるとかそんな事もなく、ただ土が剥き出しになった空き地だった。

 そこを取り囲むように観客がひしめいていた。会議室にいた貴族と護衛はわかるが、なんか騎士、兵士がすごい増えてて、わいわいガヤガヤとやってる。

「あ!」

 誰かが俺を見て声をあげると次々に視線が俺と隣りを歩くフィーナに向けられた。なんだ、堕ちた獣がどうとかって話か?

「ヴォウ!」

 吠えてフィーナから視線を奪う。お前ら、フィーナが怖がるだろうが。


 対戦相手のダルクストは広場の真ん中に立っていた。

 俺の能力の事を聞いているのか、鎧が鉄製ではなく、皮の鎧になっている。着替えるの早いね。

 領主さんは1番良いところに仁王立ちになってニコニコしている。その隣にマクルシオン、逆側にリーディン、斜め後ろに爺さんが立っていた。


「アルスさん、ダルクスト様はカルグナッツ随一の……いえ、キルグフィッツ随一の騎士と言われている方です。油断しないでくださいね」

 前を歩いていたミリルフィアが広場の端で立ち止まり、教えてくれた。

 まじかよ。ヤバい奴をけしかけてくれたもんだなマクルシオンめ……まあ、やってみるさ。


「準備は良いかね?」

 ワクワクしてるのを隠しもせず、領主さんが俺に話しかけてきた。

 この人ノリノリだな。ちょっと面白くなってきたぞ。

『始められます』

 おれは領主さんの声に答えて、広場の真ん中に進み出ようとしたが、フィーナに止められた。


「アルス……」

 フィーナが俺の頭を抱きしめてくれる。

 大丈夫だ、気をつけるって。

「頑張ってね。アルスは強いから大丈夫だよ」

 おっと、予想外。勇気づけられちゃった……ふふ、なんか震えてきたぜ。

 


 俺は広場の真ん中で5メートルほど離れてダルクストと向き合った。

 堕ちた獣を倒せだとか、ダルクスト様なら一瞬とか周囲からのヤジが五月蝿い。


「相手に負けを認めさせるか、戦闘不能にした方が勝ちとする。殺傷は許さぬ。双方よいか?」

「承知しました」

『承知しました』

 ダルクストが剣を抜き放って俺に向けた。発せられる気配が静かであるのに、強く俺を威圧するように押し寄せてくる。

 こいつ強いな。


「はじめ!」


 俺はすぐに転移してダルクストの後ろに出現し、ダルクストの首を魔力で掴む。盛り上がりとか知らんよ。これで瞬殺……


 ダルクストの姿が消えた。


 はぁ!?


 左から殺気が降ってくる。慌てて右に跳んで魔力でなぎ払う。


 それをダルクストに剣で切り払われた。


 ちょっ!?


 ダルクストが容赦なく距離を詰めてきた。


 左右から剣先の光が俺の足や首を狙って跳ね上がり、打ち下ろされてくる。


 俺はなんとか3回までは躱したが、体を捻ったり、跳んだりして避けれる速度と頻度じゃねぇ!


 起動しろ、守護の9番!


 ギギギンッ! 


 俺の展開した障壁とダルクストの剣がぶつかり合い、幾つもの鋼の悲鳴が上がった。


「はぁ!?」

 爺さんが俺の魔法を見て変な声をあげた。


 ダルクストは一息で攻め切れないと判断したのか、俺から滑らかな足運びで距離をとった。  

 

 引くところを追撃しようかと思ったが出来なかった。

 なんて隙の無い動きだ。

 普通に両足で移動してるのに、ふと動きを見落としてしまい、瞬間移動したかのように感じた。


 強い! なんでこんなのがいて負けこんでんだよカルグナッツ!


 ダルクストの剣がブレた、と思った瞬間に俺の障壁がとんでもない衝撃を受けて消し飛んだ。


 祝福者の能力か? くっそ! 受けにまわったら駄目だ!


 全力で3本の魔力の触手を形成し、ダルクストに打ちつけた。一瞬で3本とも両断される。


 ですよね。


 バヂヂィィィ!!


 両断された魔力が霧散する前に電撃を流してやると、派手に通電して辺りが真っ白に染まった。観客の悲鳴が上がる。


 これは予想できなかったのか、ダルクストが避ける間もなく電撃の嵐に巻き込まれた。


「お、おおぉぉ!?」

 爺さんがえらく興奮して叫び声をあげている。


 どうだ、やったか? 


 電撃にのけぞるダルクストにどれだけ流し続けるかちらっと悩んだ瞬間


 ダルクストの剣が俺の方に剣先を向けた。


 やべぇッ!?


 電撃を中断して横っ飛びに避けると、地面にバスケットボール程の穴が開いた。


 おいおい、なんで動けるんだよ! 化け物か!?


 ダルクストは鎧や皮膚を焦がしているが、よろめきもせず、まるでノーダメージだったかのように剣を構えている。


 一瞬の静寂。


 俺はあえて真っ直ぐにダルクストに跳びかかった。


 意外な動きだっただろうに、ダルクストは怯む様子もなく剣を跳ね上げて俺を迎撃してきた。


 魔力の触手で剣を打ち払う。が、すぐに剣がまるで巻き付くような動きで翻り、俺の魔力を両断し、迂闊に近づいた俺の胴体を貫いた。


 灼熱の塊が腹の中をかき回す。血が喉の奥からせり上がってくる。一瞬意識が飛びそうになるが、なんとか堪えた。


 俺は


 ダルクストの僅かに余韻に浸る剣とそれを握る拳を魔力で包み込み、発射した。


「ぐうぅ!?」

 ダルクストが初めて苦悶の悲鳴を上げた。


 射出され、凄い勢いで回転して飛んでいった剣は城壁に突き立つ。


 俺は無様に肩から着地してしまったが、すぐに起き上がりダルクストの様子を確認する。


 ダルクストは手首をおかしな方向に曲げ、吹っ飛んだ剣の方に腕を掲げるような格好で倒れていた。能力で手ごと剣を射出されたにしては軽傷だな。手が吹っ飛んでいくのを覚悟でやったんだが。


 俺が胴体に空いている穴を回復能力で塞いていると、ダルクストが曲がった手首を庇いながら起き上がってきた。


 お、おいおい、まだやるの? お前の剣は梯子でもないと取れないところに刺さってるぜ?


「私の負けだアルス。勝どきを上げられよ」

 俺が若干警戒していると、ダルクストが俺に向かって跪いた。


 あぁ、そうか。勝ったなら勝どきを上げないとな。


「ウオオォォォーーーーーーン!!」


 俺の雄叫びは観客が息を呑み、静まり返った練兵場によく響いた。

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