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68.教えてくださいキョーコさん

 ラオルによると、ココ村の人達は流石に全員が同じ建物に泊まったりできないので、いくつかの仮設兵舎に別れて案内されたそうだ。

 フィーナが案内された兵舎は西門に近い場所で……俺がかつて捕まりかけた倉庫だった。


 その元倉庫の兵舎の前に人だかりができているのが見えた。

 大半が守備隊の兵士らしく、鎧下や鎧を来ている男だ。


『なんでしょう?』

『なんかフィーナと兄弟達の匂いがするんだが、なんかあったのか?』

 人だかりに近づいてみると、やはり中心にフィーナの気配がする。


 フィーナが石でも投げられていたなら一瞬で人だかりをまっ平らにしてやるところだが、そんな殺伐とした空気は漂っていない。

「へぇ~」「大したもんだ……」なんて感心したような呟きがあちこちから聞こえる。


 なんだ?


 人間の足元を縫って人だかりの真ん中に出てみると、そこには倉庫の前に敷いてあるゴザみたいなものに座り込んでいるフィーナにじゃれつく兄弟達、フィーナの隣に寝そべるキョーコが居た。


「あら、お帰りアルス」

 フィーナが微笑みかけてくれるが、なんでこんなことになってるの?

「皆さん、ピノン達が人に懐いているのが珍しいって」

 フィーナが俺の表情を読んで答えてくれた。ああ、堕ちた獣に見えるもんな、俺と兄弟達。まあ、確かに珍しいかもしれんが……


「はいはい、皆さん! お仕事は無いんですかぁ~?」

 ミリルフィアがパンパンと手を叩いて声を張り上げると、集まっていた兵士たちが気まずそうにして散っていった。ナイスだミリルフィア。フィーナが見世物になってるようで気分悪かったんだよ。


 後に残ったのはココ村の人達数人で、どうやらただの犬好きのようだ。ピノン達を、森ではお世話になった、と言いながら撫で回し始めた。ピノン達はわりと嬉しげに撫でられるがままだ。馴染んだもんだなぁ……ペペルなんかは5歳ぐらいの子供2人とつつき合って遊び始めた。


 さてと、じゃあまずは……


 俺はフィーナの前に移動すると、膝に頭を乗せ、寝そべった。すぐにフィーナが労るような手つきで俺の耳や首筋を撫でてくれる。あ~、癒される……

『ちょっとアルス君、キョーコちゃんに聞くことがあるって言ってたでしょう? あ、エスタちゃんまで!?』

 エスタもトコトコとフィーナの所に来て、背中がフィーナに触れるようにして寝そべった。


『覚えてるって、大丈夫大丈夫。ただ優先度の高い仕事から片付けたんだよ』

『仕事って……さっきまで凄く緊張してたのに、フィーナちゃんの近くに来た途端にグニャグニャになっちゃって、もう……』

 ミリルフィアがこめかみを抑えて、目を瞑った。


『なによ、人がゆっくりしてるってのに~』

 俺たちが近くで声を飛ばすので、キョーコが煩そうに寝起きのような声を飛ばしてきた。

『そうだな、とりあえず、真面目な話を済ませないといかんな。フィーナの安全にも関わる』

『なに? なんかあったの?』

 フィーナの安全の部分にキョーコが反応した。

『オーグラドの兵士が銃持ってたよな? あれって元からオーグラドにあったのか? それとも日本人の知識で作ったものなのか?』

『ああ銃ね。詳しい人がそういう知識を売ったって話は聞いたことがあるわね……誰だったかなぁ』

 知識を売った……あ、そういやジュンジがそんな事言ってたな。

『やっぱりそうか……』

『私も覚えてる限りの事は話して売ったわよ。学者じゃないから大した話しはできなかったけど』

『売ったって言うが、金もらってどうすんだよ?』

『現金じゃなくて、貢献度ポイント、みたいなのがあって、それが貯まるのよ。ポイントが多い人ほどより国に貢献したってことで、扱いが良くなる仕組みなの』

 なんでも、この仕組も日本人が考えたって聞いたわ、とキョーコが続けた。

 なんというか……凄いな……


『ポイントが多い奴ほど早く日本に帰れるってワケか?』

『明言された訳じゃないけど、そうだろうってみんな思ってる。ちなみに、日本人を連れて来るノルマを達成してもポイントが上がるのよ。知識の無い人間は足で稼ぐの』

『あ~、ノルマって聞いてもどんな内容なのかピンと来てなかったんだけど、なるほどそういうことだったのか。だから俺が誘いを断ったらキレたのか、お前』

『そ、そうよ』

 あの時の事を思い出したのかキョーコが若干気まずそうに身じろぎした。


『非常に為になりました……個人の特別な能力だけではなく、素晴らしい知識もお持ちなんですね。日本人って凄いですね!』

 ミリルフィアが凄い勢いで木札にメモをとりながら、なんか感動していた。

 いや、日本人って一緒くたにされても困るんだが……

『先に言っておくが俺はなんにも覚えてないからな。自分の名前も思い出せないぐらいだ。あと、日本人の知識を独占されていることに危機感を覚えろ』

『危機感……?』

 いまいちピンと来てないようだなぁ……

『まったく、あんたは本当に変わってるわよね。何にも覚えてない代わりに能力が特別製って向こうでも結構注目されてたわよ』

 なんだと……?

『アルス君が注目されてるんですか?』

『日本人1人につき、1つの能力だという常識をひっくり返したからねぇ。その内懸賞金ならぬ、懸賞ポイントを掛けられたりしてね』

『笑えねぇなぁ……ちなみに、同盟に日本人は何人いるんだ? 場所は? リーダーの名前は?』

『また物騒なこと考えてるでしょう?』

『数が少なかったら殴り込みに行こう、とか考えてますよ。絶対』

 ミリルフィアとエスタが左右から茶々を入れてくる。ええい、人をなんだと思ってるんだ! ……確かにちょっと考えてたけど。


『んーと……本部の場所はオーグラドの首都よ。大いなるオーグラドって名前の街。でっかい森が街の中にあるんだけど、その森の中にあるの』

 大いなるオーグラド、ね。なんか英語を直訳したみたいな変な名前だなぁ。


『リーダーの名前は私は知らない。すっごく沢山の人が私達の世話をしてくれるんだけど、誰も教えてくれないの。1番偉い人が演説したり、面接したり、みたいなことも無かったなぁ』

 これはわざと隠してるんだろうな。用心深いことだ。


『あと、正確な人数も知らないんだよね。名簿を見せてもらえる訳でも、全員が一箇所に集められて点呼をとられる訳でもなかったから』

 でも…とキョーコが続ける。

『百人以上はいると思うわよ。なんか学校みたいな感じの宿舎だったんだけど、20人が1部屋に入れられてて、その部屋が10部屋以上あったから』

 んな……とミリルフィアがうめき声を上げた。


 うん、多いな……最悪200人以上いるのかよ。日本人転生し過ぎだろ。だが……


『そんなに日本人が居るなら、あちこちで声を飛ばす犬の噂が出ても良いと思うんだが、どうなんだ?』

『以前にも言ったかもしれませんが、まったく聞かないですね……これは、どういうことなんでしょう……?』


 ----俺たちは偶然この世界に転生した訳じゃ無いからだ


 そういや、ジュンジが気になる事を言ってたなぁ。つまり、狙って転生させられてる、ってことか? だが、ミリルフィアは世界を繋げるような魔法は無いって……う~む。


 やれやれ、なんか妙な方向に話が転がったな。


『アルス君? なにか思いついたことでも?』

 ミリルフィアの問いかけに目で頷く。

『ジュンジと話す必要があるな。あいつらは今どうしてる?』

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