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13.静電気体質

 妙だと思ったのは全快してから初めての夜のネズミ狩りだった。

 ネズミを捕る度にバチバチいうので、集中できない。

 最初はネズミがなんか鳴いてるのかと思った。

 そんなわきゃ無いわな。急にネズミがバチバチ鳴き出すとか。

 試しに強めに足踏みしてみる。音は鳴らない。

 ん、ん~?

 手早くネズミ見つけ、踏んづけてみると、またバチバチ。

 踏んづけていたネズミから右手をどかしてみる。

 ネズミはビクビクと震え続けていた。

 もう1回踏み潰さないように踏んづける。

 ふんぬ!っと殺気を込めてみる。

 

 バチン!!


 スタンガンみたいな音と同時に右手に強烈な静電気のような衝撃が走り、ネズミがビクッと震えてぐったりと動かなくなった。

 ネズミから焼け焦げた匂いがする。


 ……

 

 右手を上げてよく見てみる。白くなった以外は指が増えたとか、ウロコが生えたとか、大きくなったとかは無い。

 だが……ぐっと血を指先に集めるような感じで力を入れる。


 バヂヂッ!


 右手の回りに火花が散った。

 

 ……これ、静電気ってか、電気、だよな?



 試し撃ちをしているとなんとなく感覚が掴めてきた。

 背中とかの視界外の部位はやりずらいけど、手に限らず全身バチバチさせることができる。

 これを使うと撫でるだけでネズミが死ぬから、肩が凝らず、実に快適だ。

 しっかし、なんでこんなことができるようになったんだろ?

 10中8、9あの蛇と戦ったのが切っ掛けだと思うが……

 んー……んんー……

 あー、やめやめ! こちとら犬になったんだ、何が起こってもおかしくないよね。

 電撃放てるぐらいでもう驚かないよ! いや、驚いたけど。

 格好良い特技を覚えたぐらいに思っとこ。

 でも、リィザにあんまり目立つなって釘刺されてるから、見せびらかすのは止めた方がいいだろうなぁ。

 フィーナだけに見せるにしても迷ってしまうな……ちょっとこれは普通じゃない感が凄い。

 もし、仮にだ、フィーナからよそよそしい態度とかとられたら、俺、死んじゃう。


 さて、もうちょっと試してみるか~


 

「今日は、張り切ったのね……」

 サレアさんが、家の表に積まれた獲物を見てドン引きしている。

 ちょっとやり過ぎたかもね……ネズミは過去最高数、多分30匹ぐらいで、それ以外にも畑をウロウロしてたタヌキっぽい生き物も2匹ほどヤっちゃった。

 タヌキの体格は俺よりちょっと大きいぐらいなんだけど、電撃パンチをぶち込んだらあっさりと倒せてしまった。

 仕留めるよりここまで運んでくることの方が大変だったぜ。

「タヌキをとってくるなんて……」

 あ、タヌキっぽい生き物の名前はタヌキでいいのね。

 サレアさんが真剣な顔でタヌキを調べている。

「アルスは本当に凄い子ね」

 フィーナはさっきからニコニコしながら俺を撫でている。

 これは、身内相手だから、目立っている内に、入りません、よね?


「アルス、あなたね、私が言ったこと忘れたの?」

 その日の水汲みでリィザに怒られた。

 リィザが俺の前に仁王立ちになっている。

 お、俺は人間の言葉なんて、わ、わからないし……プイ。

「フィーナ、あなたもアルスがなにかしても、皆に話さないの!」

「え、なんで……?」

 フィーナが首を傾げる。その仕草は可愛いが、焚き木拾いの時のやり取りが通じてなかったことが判明したね。

 リィザがフィーナを水汲み場の外れに引っ張っていく。

「あぁもう、なんか私が1人で気を揉んで馬鹿みたいじゃない……」

「アルスが頑張るとなにかいけないの?」

「ほら、もうすぐ市場が来るでしょ? 他所の人が来るから、あまり目立たない方がいいのよ」

 市場? へぇそんなのもあるのか。その口ぶりだと村の外から人が大勢やってくるっぽいな。この村、店とかなんにも無いから大きなイベントなんだろうなぁ。

 しかしリィザ、なんか前と言ってることが違ってない?

「そっか……アルスが拐われたりしたら嫌だもんね」

「そうそう!」

 拐われる? なんだか物騒だな。他所の人は物を持ってくるが、犯罪者も来るってことか?

 そんなんなら、俺よりもフィーナの方が心配だな。こんなに可愛いいんだし。

「そういうことだから、わかった? アルス?」

 はいはい。なんとなく前向きに善処する気になったようなならないような…いでぇ!

 ソッポを向いていると、リィザのチョップが俺の脳天に炸裂した。

 フィーナよりも強烈だ。くそ、こんな小さな子犬になんてことを!

「キャンキャン!!」

 全力で抗議しておいた。



 晩飯はタヌキ汁だった。

 なにこれ不味い!

 自分が獲ってきたものだから遠慮なく言わせてもらうけど、タヌキ不味い!

 ぐずぐずと泡立つ脂肪、肉の硬さ、臭み、どれも食欲を無くさせること甚だしい!

 こんなもの獲ってきて誠に申し訳ありません。ここに謝意を表明致します。

「狩人のご近所との物々交換で、タヌキの肉が出てこないのは旨いからじゃないかと思っていたが……」

 おっさんが口をへの字にしながらタヌキ汁を啜る。

「勉強になったわ」

 サレアさんも苦笑するしかないようだ。

「……」

 フィーナは始終無言で食べていた。顔が若干青い気がする。

 あぁ~! ゴメンよ~!

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