推力
川の男がついに川から上がった。そして、首から下は、何層にも渡って小石を纏っていた
「…は?」
ぶつぶつとして、陰影が見える。丸っこい石を絹のように纏っている
「ま、魔獣か…?」
川の男が、口元の石をぷかぷかと空中に移動させて、口を開いた
「いいや?魔法使いだよ…我が名はサクスム…決闘だ。お前みたいな、魔法も使えないグズを殺して回ってるんだ」
「なるほど、受けた!」
ウィースがそう高らかに叫んだ瞬間、石が胸部目掛けて飛んでくる
ウィースが素早く刃を下から振り上げるが、刃は空を切ったのだ。石はそれより早く通り過ぎていた
カンッ!!
鎧に石がぶち当たる
「…効かない」
「効かないね」
「フルプレートアーマー?」
「フルプレートアーマー」
「すごいね」
「うん」
ウィースが、警戒しつつ川の男に近寄った瞬間、膝裏に衝撃が走った!
「がっ…!」
「俺の魔法、「スラスト 」はよぉ〜…推力を与えた物を、自由自在に、操るんだぜぇ〜?フルプレートアーマーのよぉ〜…関節を狙うだなんて訳ないぜ」
ギュルギュルギュルと石が膝裏の鎖帷子を巻き込んで回転し、皮膚が捩れて千切れた
「ぎあっ…!」
ウィースの皮膚を捻った小石が、皮膚との摩擦で推力を失ったのか、ぽとりと落ちた
「…あの何層にも重なった予備をなんとかしなくちゃあ、攻撃が効かないってわけね」
ウィースが目を凝らし、注意深く見る。それは相手の攻撃を警戒して、カウンターを狙うためのものであったが、一つ収穫があった
ウィースは石の表面を見つめた。
丸みを帯びた粒。
それを繋ぐ、細かな砂
「…礫岩と砂岩か!」
川の男はニヤリと微笑み、自慢げに返した
「正解…どうやら、礫岩だけでもお前のスカスカの脳天にぶちこむには十分らしいがなぁ!」
石が二つ同時に、ウィースめがけて飛んで来た
「はっ、単純な機動だ、こんなの簡単に弾ける」
ウィースがロングソードを横に振りはらい、岩を弾き飛ばした!…と、その時、川の男がにんまりと笑顔を浮かべた
「ああ、知ってる。だからそう弾かせた」
二つの石はウィースが弾いたことにより、さらなる推力を得ていた!
「あんたの馬鹿力…秒速25mってとこかぁ?時速にして90kmだよなぁ…そんな速さで、岩を弾いたら、どんなスピードになっちまうんだろうなあぁ〜」
ズドンっ!胸のプレートアーマーがはっきりと凹んだ!
「ぶごぼっ…」
8cmの礫岩が、90km/hで衝突する。約210ジュールの衝撃!この衝撃は!満タンの水筒を、ビルの12階から落としたときに地面に激突した際の衝撃に匹敵する!
その衝撃が一点に集中すれば、鉄板を超えて、内臓まで届く!
「ぐ…確かに、強いな…」




