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貞操逆転世界でも俺には関係ない!〜自分らしく生きてたら、どこに行っても愛される〜  作者: ビーム


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7/23

初めての食卓

オープンキッチンにくっつけられているダイニングテーブルに司が料理を並べ始める。

今日の夕飯は鍋。退院したばかりの俺に気を遣って、胃に優しいものを選んでくれたのだろう。


ただ、これで全てではないらしい。キッチンには南とつま先立ちでその様子を見ている明が何やら楽しそうに会話している。


「え!ハンバーグもあるの!?やったあ!!」


「今日は退院のお祝いだからね〜。明の好きなものも作らなきゃ!」   


「みーちゃん大好き!」


尊い。歳の離れた姉妹っていいな。仲良くなったらあの輪に入れるのだろうか?混ざりたい。

俺が2人を見ているのに気づいたのか。南がこちらに話しかけてきた。


「優は食べられそう?起きてから何も食べてないでしょ?いきなりお肉はやめといた方がいいかな?」


「食べてみたいかも。かなりお腹減ってるし。でも、自分でも体の状態よくわかってないんだよね。」


「そう?じゃあ、様子見で小さく作るね!無理はしないでね。」


「ありがとう。」


感謝の言葉を述べると、南は少し固まった。その後、再びフライパンに視線を落とした。

空気は決して悪くない。でも、妙な気まずさはある。無理も無い。俺としては完全に初対面だし、彼女らにとっては記憶を失った兄弟との距離感を図りかねている状態だ。すぐにどうにかなる問題では無い。時間をかけていかなければならない。異世界だって甘く無いのだ。


一方で母さんは露骨に上機嫌である。俺はそれに救われている。彼女が笑顔でいてくれるから明は普段通りにできているのだろうし、俺がいても司はリビングから出て行かない。

彼女の笑顔はこの家族の中心なのだろう。本当に素敵な人だ。


しばらくすると、全ての料理がテーブルに並び、家族5人揃って食卓に着く。俺の隣には母さん。その隣に明。俺の向かい側に南。その隣に司。

全員集まるとすごいな。顔面偏差値が高すぎる。なんかお邪魔な気がしてくる。あ、でも、転生して俺も結構イケてるんだった。


ここで俺は、ふと気づく。あれ?俺だけ似てなくね?

姉妹は大なり小なり母さんの面影を受け継いでいる。

一方俺は、前の世界の母親のほうに似ていると思う。何か違和感を覚える。でも、今それを口にはできない。なんせ初対面だし。もう少し打ち解けてから、それとなく探ってみよう。



全員でいただきますをして、食事が始まる。母さんが明と俺に鍋を装ってくれる。


「5人揃って夕飯なんていつぶりかしらね〜」


母さんが嬉しそうに言う。

そうか、しばらく一緒に食事をとっていなかったのか。今の俺にはどうしようもなかったはずだが、なんだか申し訳なく思う。


「そうなんだ・・・。これからはなるべく一緒に食べようね。」


母さんがこちらを向いて、泣きそうな顔をしている。南や司もこっちを見て驚いている。前の俺からは想像もできない発言だったんだろう。ちなみに明はハンバーグに夢中だ。可愛いやつめ。


食事は普段から南が用意してくれているらしい。流石というべきか、めちゃくちゃ美味しい。ご飯は柔らかめだ。多分退院したばかりの俺のためだ。南の小さな気遣いがとても嬉しい。


そうだ。ちゃんと伝わっていることを伝えなければ。俺は前世、それで大きな後悔を残したのだ。初対面でも関係ない。


「姉さん。とっても美味しいよ!メニューも俺のために鍋にしてくれたんだよね?ご飯も柔らかめだし。」


南が嬉しそうに笑顔を見せる。


「よかった!可愛い弟のためだもの!」


「ありがとう姉さん。」


「・・・。それにしても本当に変わったのね〜。さっきから驚かされてばかりよ〜。記憶喪失と聞いた時はかなり狼狽えたけど、またこうして一緒にご飯食べれてうれしいわ。」


「俺も目覚めた時は混乱したよ。でも母さんが心配してくれているのは痛いほど伝わってきたし、姉さんの料理からも家族だったんだなって感じさせられたよ。」


母さんはもう泣いている。もう目や鼻がびしゃびしゃである。明はハンバーグに夢中である。可愛いやつめ。


「っぐ、っぐすんっぐすん!今日は飲むわよ南ちゃん!」


「ママっ!飲む!」


会話を交わすごとに食卓は明るくなっていく。先ほどまでの気まずさも和らいできている感じがする。


しかし、司は口を開かない。表情があまり変わらないから何を考えているかわからない。俺から話しかけようにも話題はこれといって無い。今の俺に女子高生と話せるだけのトークデッキは持ち合わせていない。なぜなら、まだ高校生ではないから!しかも、年上の無口な美人に話しかけるのはハードルが高すぎる!



夕食が終わると、各自の時間が始まった。母さんと南は2人で飲み続けていて、司は自室へ。明はリビングのテーブルで宿題をしている。俺はその後ろにあるソファに腰掛け、テレビを見ることにした。どう過ごせば良いのかわからないのである。

ちなみに、母さんはまだ泣いている。それの相手を南がしている。


「うぅっ、よがっだ!よがっだねえみなぢゃぁあん!」


「ふふっ、よかったねえママ。」


「う”ん”!よがっだ!ごれがらぼ、ごばんもいっじょにだべるっでえ!」


「うん。よかったねえ。ほんとに。」


酔っ払いは同じことしか言わないのは異世界も同じだ。ただ、南は決して面倒そうではない。むしろ、楽しそうにお酒を飲んでいる。本当に仲の良い親子だ。


「わだぢのごど、があさんって!があさんっていうの!ゆうぐんが!があさんって!」


「私もおもった!ご飯の時も母さんっていうし、私のことも姉さんって!うれしいね〜。」


「う”ん”!う”れ”ぢい”ぃ」


「はあ・・・。私のことも昔みたいに、みー姉って呼んでくれないのかな〜??」


みーねえ??なんだそれは。むりだ。聞こえていないふりをしよう。いや、だってさ、初対面なんだもん。厳しいって。初対面の美人でエッチなお姉さんにいきなりみー姉は無理だ。ハードルが高いなんてもんじゃない。さながら、棒高跳びである。


「きこえているよね〜?ゆ〜う〜?」


ギクぅぅぅっ!

姉さんはあれだ、お酒が入ると気が大きくなるタイプだ。そう。大胆になってきている。聞こえていないフリに気づいていたのか。やられた。っく。こんなことなら明に勉強教えようか?とか言えばよかった。でも、この世界の勉強が俺の知っているものか不安だったんだもん。


「ん?ど、どおしたの?き、きき聞こえなかったけど?」


「あらそ〜お?じゃあ、こっちにきなさいな?」


「は、はい。」


酒飲み2人に現行犯逮捕された。誤解なんです。僕は無実なんです。こんなの不当逮捕だ!そうだ!

とはいえ、まあ、もう何を言おうが無駄なんでしょう。わかっています。


色々諦めて、母さんの隣に大人しく座る。

すると、母さんがびしゃびしゃのまま抱きついてきた。うん。そんな気がしてた。でも、今、南の隣に行く度胸はなかった。


「ゆ”う”ぐぅん!ゆ”う”ぐぅん!」


しょうがない人だ。笑 それだけ俺が大切なのだろう。これを突っぱねるほど俺は薄情ではない。

病室の時と同じように抱きしめ返し、背中をさする。


「えっ!!何!!だ、大丈夫なの!?」


南が驚き、慌てている。

え。なんですか?おかしいかな?これ拒むわけなくない?だって、母親が俺のために涙流してるんだよ?

全然大丈夫ですが?わからん。


「え?なにが??」


素直に口にする。

姉さんがまた固まった。今日いろんなとこで見たリアクション。何度目だろうこの反応を見るのは。

気づけば明もこちらを振り返って固まっている。そんなにおかしいですかね?


すると南が突拍子もないことを言ってくる。


「え。わたしは??」


はいぃ?みてましたよね?今。母さんのほうから抱きついてきたの!たとえ母さんでも俺からはできないよ!だって、美人なんだもん。

やっぱ南の気が大きくなっている。酒飲み相手すんの大変すぎる。

ってか、わたしは?って返事困るわ!無理だよとは言えないじゃん。


「・・・・。」


「ねえ。わたしは?」


「」


「できないの?」


「・・・・・で、できます。」


やっちまった。圧力ぱねえ。海賊王になれそうな覇気だ。

ただ、母さんが離れる気配はない。振り払うのはなんとなく申し訳ない。


「で、でも、ほ、ほら、今は母さんが。ね?泣いてるしさ?」


「・・・。あっ!うわーん!うわーん!」


あっ!って言った。今、あっ!って。嘘泣きですやん。

やっばいことになった。酔っ払い2人が永遠と泣き始めた(1人は嘘泣き)。

この奇妙な光景を明が不思議そうに見ている。

あっ!明と目が合った!・・・え?なんで逸らすの?なんか笑ってない?

どうすんのこれ。南はチラチラこちらの様子を伺いながら嘘泣きを続けている。

この家族むっず!難すぎ!


「ねえ?まだ?」


やべえ。覇気だ。現状維持は状況の悪化を意味する。なんとか打開するのだ。


「じゃ、じゃあ、姉さんがこっちにきてくれる?母さん離れなそうだし」


「みー姉だよ。」


「う、うん。わかったよ姉さん。ひ、ひとまz「みーねえだよ。」


「・・・。」


「ほら」


「い、いや、ほら、俺記憶がさ?ね?」


「私あなたの姉さんよね?」


「う、うん。」


「問題ある?」


「あの、いや、その、えーと。」


「なんでだめなの。」


やばいよお。もう勘弁してくだい。俺は転生してるけど、思春期真っ盛りの男の子に変わりはないんだよ。厳しいって。おっぱいボヨヨンなお姉さんにそんな。むりだって。


「ふーん。そう。」


ああ、これやっばい。もう正直に話そう。無理ですって。お姉さん美人でエッチなので恥ずかしいですって。


「い、いや、その、俺記憶無くって。ね、姉さんは姉さんだけど、年上の、び、美人にそれは恥ずかしいです・・・。」


「っっっっっっ!!!!」


南の顔が赤くなり、目を伏せる。お酒のせいだろうか?それとも俺の発言が弟として不適切だったのだろうか。もう、わかりません。俺恥ずかしいのです。俺も真っ赤になっていると思います。


南が立ち上がった。

あっ。来る。こっちへ。何をされるのかは察している。ただ、俺は今、猛烈に恥ずかしい。だって、姉さんがものすごく薄着なんだもん。来る。あと一歩。


ムニュうううう


キターーー!!ありがとうございまーす。もういいですよ。堪能しますよ。開き直ります。だって、男としては最高のシチュエーションです。両手に花とはこのことです。


南の背中にも腕を回す。


「んふふ、誰が美人だって〜??(ニヤニヤ)むふふ」


「ね、姉さんが。」


姉さん鼻息が荒い。母さんの鼻水が服にべっとり付いて冷たい。まあでも、どっちも嬉しそうだし、いっか!考えんのめんどくさい。


ガチャッ


扉が開く音。嫌な音だ。普段はなんとも思わないのに。今はすごく嫌な音に聞こえる。


「は?」


誰か今すぐ俺を殺してくれ。

読んでくださりありがとうございます。


書きたいエピソードがいくつかありますが、初対面が気まずくてなかなか前に進みません。夕飯だけで1話使うとは。というか、転生して数時間しか進んでない。

貞操逆転ものはすぐに距離が縮まってくれるのがいいのに!と作者も自覚しております。


まあでも、家族はこの物語の中心なので、悪しからず。

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