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貞操逆転世界でも俺には関係ない!〜自分らしく生きてたら、どこに行っても愛される〜  作者: ビーム


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母VS医者

『』は心の声です。

〜長谷川 アンナ目線〜


私は精神科で医師をやっている。うつ病などの精神的な病のカウンセリングなど、この社会によって押しつぶされてしまった人々を救える。私はこの仕事に誇りを持っている。


救急センターに患者が来たらしい。睡眠薬を大量に摂取し、昏睡状態に陥っているようだ。しかも患者は男性らしい。


現在日本において男女比は1:20とされており、男性は最新の医療行為を、ほとんど無償で受けることができる。手厚い保険で費用を賄うことが可能なのだ。要は、絶滅危惧種の保護みたいなものだ。


男という生き物は横暴でわがまま。治療のためにこっちは色々考えているのに、そんなものは知らないと無視されたりする。そのせいで、入院、通院が長引けばこちらの責任。ふざけた話だ。言葉の通じない動物の方が幾分かマシだ。


そして、先ほど救急に運ばれていた男が精神科の病棟にて入院することが決まった。私は憂鬱だったし、少し腹も立てていた。

男性という優遇された立場でありながら自殺を試みるなど、女の私には全く理解できない。生まれ変わるなら男になりたいと思う女は腐るほどいるだろう。


その男は3日後に目を覚ました。運ばれてきた時も思ったが、綺麗な顔だ。この子の母親はかなり取り乱していたが、こんな綺麗な息子が自殺を図ったとなれば、取り乱すのも無理はないなと思っていた。


少し会話をしてみると、この男に対する印象は大きく変わった。かなり落ち着いた様子だし、女の私に対しても敬語を使う。

ましてや、こちらが敬語をやめても気にする様子もなく、さも当たり前のように会話を続けてくる。


やはり、薬の影響だろうか?普通の男とは感じが違う。全く見下されている感じがしない。むしろ、向こうがこちらを目上の人のように接してくる。この男との会話は苦にならなかった。


男が聞いてくる。


「あ、あの、俺ってなんで入院しているか聞いてもいいですか?」


やはり、覚えていないのか。睡眠薬によるODは意識障害が残ることがある。今までの普通でない様子を見ると、色々と腑に落ちた。


だが、そんなに単純な話ではなかった。


男にいくつか質問する。受け答えははっきりしているし、落ち着いて話せている。だが、質問の返答はかなりぶっ飛んでいる。20XX年生まれだといったり、家族構成は母と姉の3人家族だといったり、調べても出てこないような学校に通っているといったり。

確かに入院前の記憶は失っている。しかし、あるはずのない記憶が存在しているのも確かだ。彼の様子から虚言を並べているようには見えない。


私は、今まで見たことのない症状に頭を悩ませる。

すると、彼は驚くべきことに私が考えていたことを見透かしたような発言をしてくる。


「親に先に話すか悩んでますか?」


かなり驚いた。記憶障害のある人間が、自ら気付いたのだ。自分が記憶障害であると。

そんなことはあり得るのだろうか?

そもそも、自分のもっている記憶が正しい記憶ではないと認識するためには、事実を知らなければならない。彼に与えた情報は、入院した経緯のみだ。


記憶障害を持つ人に「あなたの記憶は間違いです」と伝えるのは非常に危険だ。取り乱してしまうケースもある。だから、記憶に関する問題はかなりデリケートなのだ。

ただ、彼の場合は、正しい情報を与えると一度は驚く。

しかし、その後納得しているような表情をする。なぜか、一人で「解決しました。」みたいな顔をしている。異常だ。明らかに。


一通りやり取りを終えると、彼は、母には先生から伝えてくれと言ってきた。冷静だ。母の心情も考慮した上で提案してきている。明らかに他の男とは違う。客観的な視点を持ち合わせている。


正直、かなり興味深い。もう少し話していたいところだ。が、この子の母親がまもなく着くだろうから、話を切り上げる。


男の母親と話をした。かなり落ち込んでいたようだが、最愛の息子に会えるならば、どんな状況でも関係ないのだろう。

実際、私は面会に対して、そこまで不安にはなっていなかった。

先ほどの男の様子から想定するに、たとえ自分の母と初対面となっても、勝手に納得しそうだなと思っていたからだ。


しかし、それは、私の浅慮な判断だった。母親の方が取り乱したのである。顔を見るなり号泣する。これはまだわかる。しかし、この後が問題だった。いきなり抱きついたのである。


私は冷や汗をかいた。心の中で、『これはやばい!』と感じた。たとえ母親であろうと、今は初対面。初対面の男に女が抱きつこうものなら、それはもう豚箱行きだ。私の落ち度だ。彼の方にばかり気を取られ、母親の精神状態を見誤っていたのだ。


だが、これは杞憂に終わった。


なんと彼は、拒絶することはせず、むしろ受け入れた上で謝罪したのだ。初対面の女に。私は目を疑った。言葉も出ない。この出来事を同僚に話しても信じてくれないだろう。「うちの犬は喋るんだ!」と言われた方がまだ信じられる。


また、母親の方も驚いている。会話を聞くに母さんと呼ばれたことがないのだろう。

ますます興味深い。記憶を失って、別の人格が生まれたのか?何かの防衛本能なのだろうか。彼とはまだ多くのことを話す必要があると感じた。


そして、私自身にも異常がみられた。彼が母を受け入れ、謝罪と感謝を述べているのをみて、胸の奥が苦しくなった。なんて愛おしく、美しい少年なのだろうと。白衣を脱いだ状態で話してみたいと。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


母さんはまだニヤニヤしているが、先ほどよりは落ち着きを取り戻したようだった。

俺としても、悲しい顔をされるものと思っていたので、かなり気持ちが楽になった。

先程まで病室の隅で固まったままこっちをみていた長谷川先生も椅子に腰を下ろしていた。

今後の話が始まる。


「病院側といたしましては、記憶障害の見られる優さんには、しばらく入院していただいた方が良いと考えています。緊急時も迅速に対応できますし、カウンセリングを続けていけば記憶が戻る可能性もあります。入院費についても保険適用内ですので、追加で掛かることもありません。」


『まだ帰したくない。この尊い子、あ、違う、珍しい症状をもっと見ないといけないし。うん。帰したくない。退勤した後にちょっとお話ししに顔出すくらいはするけども。でも仕事はしますよもちろん。ちょっとだけプライベートの関わりが欲しいだけ。』


「いえ、大丈夫です♪お家で面倒見れます♪おうちに帰ったら何か思い出すかもしれないですし♪(にやにや)」


『この子はうちの子です!♡ 絶対連れて帰るからっ!こんな女ばかりの病院に置いて置けない!ダメ。私の優くんなんだから。』


「いきなりお家に帰って、娘さんたち全員と生活するのは、少し危険かと思います。彼の精神に強い負荷がかかってしまうかもしれません。特に男性はデリケートなので。入院中のお見舞いという形で、徐々に交流を増やしていくべきかと。」


『この母親浮かれすぎだろ!まだ、入院して3日よ!?今日目覚めたのよ!少ししか話してないし。足りないわよそんなの!あ、そうではなくて、もっと慎重になるべきよ!そう!医学的にそうなのよ!』


「いえ、大丈夫です♪ うちでストレス無いように面倒見ますので♪(にやにや)」


『この女しつこいわね。だめよ。この女に夜這いされるかもしれない。私の優くんにそんなことさせないから!』


えっと、なんか先生と母さんの目線から火花散ってるように見えるんですが。どっちも譲らないし。どうすんのこれ。

俺としては家にお邪魔したい。いや、帰りたいが正しいか。姉妹たちは気になるし、記憶障害じゃないし。転生だし。家に行ったところでなにか問題が起こるとは思えない。

ただ、話を聞く限り先生の言っていることの方が正しい。だって、3日前に救急で運ばれて、記憶失った男を『目覚めたので退院です!』は明らかにおかしいと思う。普通それなりに段階ってもんがあるよね。


「優さんもいきなり姉妹に会うのは不安ですよね?まだ目覚めたばかりですし。」


『不安って言え。言え。言え。頼む。てか、まだ目覚めて数時間なのよ?この女。息子の体は心配じゃないわけ?』


「そんなことないわよね♪ 娘たちは優しいわよ♪ それにこんなに元気ですし♪(にやにや)」


『なんなのこの女。しつこいんですけど!優くんが外泊なんて無理!ダメ絶対!』


これは困った。母さんはこれから生活を共にする人だ。機嫌は損ねたくない。

一方、長谷川先生の方もおそらくこれからもお世話になると思う。だって睡眠薬大量摂取した体で生活するの怖いもん。きちんと治療は受けたい。うん。間を取ろう。


「・・・通院というのはだめでしょうか??」


「・・・・。」


『くっ。やられた。折衷案ときたわね。まあ、これからも会えるから悪い話ではないけど、やっぱ夜にちょっとプライベートな話がしたいのよ!仕事でしか会えなくなるじゃない。』


「・・・・。」


『通院ね。まあ外泊じゃないだけマシかしら。でも、この女と定期的に会うってことでしょ。いやよそんなの。でも、体に何かあってからじゃ遅いものね。』


「「そうしましょう。」」


イエス。成功したぜ!俺としては願ったり叶ったり!家に帰れば美人の母がいて、通院先にはダイナマイトなシゴでき先生。完璧だ。大満足である。


「では、お母様退院の手続きを。優さんは荷物まとめといて。まあ、ほとんど荷物はないけれど。」


そうして、俺は病室にまた一人になった。なんだかすごく疲れた。なんか、こっちの世界の女の人みんな勝気なんだよな。なんか別世界に来た実感が少しずつ湧いてきた。

何はともあれ、外に出るのが楽しみだ。4215年の街並みも気になるし、帰ったら散歩とかしてみよう。



おまけ

看護師A「長谷川せんせえ。ゆうくんもう退院ですか〜。はやくないですか〜。」


長谷川「私もそう思うが、東海林家の決定だ。こちらとしてはなにもいえまい。」


看護師B「お母様なんで機嫌がいいの!?息子記憶喪失なんですよね?」


長谷川「ま、まあ生きていてくれればうれしいんだろう。」『一連の出来事は教えん。悪い虫がつく。』


看護師A「退院前に連絡先聞いちゃお〜っと。」


長谷川「だ、ダメだ!馬鹿者!公私混同は」『こいつ目離したら危ないな。』


看護師A「え〜。でも、私の勘がビビッときてるんですよー!絶対にいい子ですよっ!彼。」


長谷川「お、男はみんな同じだ。わがままで横暴!例外はない!」『す、鋭い。ダメだこいつは近づけさせん。私が仲良くするのだ!!』


はい。ようやく、外の世界へ!出られますね。優に対するリアクションを1人1人描くとどうしても長くなってしまいます。

もう少しうまいことやりたいもんですね。

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