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貞操逆転世界でも俺には関係ない!〜自分らしく生きてたら、どこに行っても愛される〜  作者: ビーム


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シックスセンス

〜東海林 司目線〜


優と明がお風呂から上がってきた。

明はソファで優の膝の上に乗って髪を乾かしてもらっている。

満面の笑みを見せていて、かなり満足げだ。

妹に対して大人気ないのはわかっているけど、私は結構ムカついている。

なぜなら、明は今の状況がかなり特殊なことなのだと理解しているから。

明は男子のいる小学校に通っているし、異性にも興味の出てくる年頃。

しかも、記憶を失う前の優に馴れ馴れしくするなと遠ざけられていたから、明は優と血が繋がっていないのを察している節がある。

いや、絶対わかっている。生まれた時から明を見ている私には顔を見ればわかる。

明は一見無邪気な女の子だけど、賢い子だ。

優がとぼけているのもムカついたが、一番とぼけているのは明だ。

全てわかっていて、一緒にお風呂に入り、髪を乾かしてもらっている。


「明!自分でやんなさいよ!」


「ん?ドライヤーの音できこえな〜い。」


絶対聞こえている。

自慢げな顔をしてくるのが余計私をイライラさせる。

私の妹はこんなにしたたかだったとは。明日の夕飯は激辛にしてやる。

私もやってもらえるならやってもらいたいのに。


「優は明を甘やかしすぎ!」


「え?ダメなの?」


ダメに決まってんだろうが。今の優はどうも明に甘すぎる。

明が全てを知った上で今の立場を楽しんでいることを理解していない。

それだけじゃない。優は男の子としての恥じらいもなさすぎる。

私とお風呂で鉢合わせても平気な顔していたし。


はああ。高校なんか通い出したらもう終わりよ。

無自覚に女共を誘惑して、襲われるに決まってる。

ああ、一学年違うのがもどかしい。留年しようかしら。

優と関係が良くなり始めたのは嬉しいけど、そのせいで悩みが増えた気がする。


「優〜?私もお風呂上がりに髪の毛乾かして〜。」


「え?みー姉も?なんで?別にいいけど。」


「ちょっとお姉ちゃん!!!優もいい加減にしてよ!」


「・・・いや?俺が怒られるの?」


お姉ちゃんがお酒を飲んで調子に乗っている。

私を揶揄っている意味もあるのだろうが、下心も透けて見える。

お酒の力を使うなんてずるい。

なんで私ばっかり悪者みたいになっているの?


「みなちゃん。少し意地悪なんじゃないかしら?優くんも困ってるわよ?」


ママ大好き。

ママは私の唯一の味方だ。

そうだよね?私間違ってないよね?


「え〜。だって明だけずるいじゃん。ママもやって貰えばいいじゃん?」


「え!?ゆ、優くん!母さんもいい!?」


「・・・。母さんまで?いや、いいけども。なんなのこれ。」


ママ大嫌い。

ママとお姉ちゃんはすぐお風呂に向かった。

私に味方はいなかった。

あの人たち私の気持ち知ってるんだよね?

いじめだ、いじめ。優も優だよ。もう泣きそう。

ああ、自分の不器用な性格が恨めしい。私も流れに乗れたらよかったのに。

明に自分でやれと言った手前、私も!なんて言えない状況になってしまっている。

お姉ちゃんとママの素直なところが羨ましい。


「お兄ちゃん!じゃあ、今日は全員の髪乾かしたらいいじゃん!」


「え?別にいいんだけどさ?司は嫌なんじゃない?」


「つーちゃんだけ仲間はずれはかわいそうだよ!ね?つーちゃんも嫌じゃないよね?」


「・・・・・・う、うん。みんながやるなら。髪長いからめんどくさいし。」


明大好き。明日の夕飯は期待しておいて。

やっぱり賢くて良い子だ。今日の全ての行動に目を瞑ってあげる。

優は戸惑っているけど、今はそんなことはどうでもいい。

私も明と同じように髪を乾かしてもらえる。嬉しい。

こんなにも自分が単純だとは思わなかった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


何が起きているのだろうか?

妹の髪を乾かした結果、もれなく家族全員の髪を乾かすことになった。

酒呑共はいつも通りだけど、司に関してはさっきまで怒ってたよね?

甘やかすなとか言ってたよね?

やっぱり司が考えていることはさっぱり分からない。

まあ、でも、嫌われてはいないようだからいいんだけどさ。

さっきまで不機嫌だったのが嘘みたいにおとなしくなった。


マイエンジェルよ。毎日乾かしてあげようと思っていたが、前言撤回だ。

流石に毎日全員の髪を乾かすことになるのはめんどくさいぞ。

みー姉と司の髪は長いし。


しばらくするとお風呂上がりのみー姉がニコニコしながらこっちにきた。

司と明は急に2人並んで仲良く宿題をしている。


「じゃあ優、よろしくね〜。」


「優くん!次は私だからね!」


「はいはい。」


母さんはダイニングテーブルで再び飲み始めて順番を待っている。

司は入れ替わりで浴室に向かったようだった。


妹の髪と違って大人の女性の髪に触れるのはどこか緊張する。

みー姉の髪は長いから乾かし方も分からない。

こんな綺麗な髪の毛なのにこだわりとかはないのだろうか?

ばさばさになっても知らんからな。


「ねえ、これめっちゃいい。優、毎日やって?」


「それはだるすぎるから無理。」


「え〜。けち〜。」


めっちゃ時間かかるわこれ。長い髪の毛乾かすのってクッソ大変なのね。

世の中の女性は毎日これをやっているのか。誰かに頼みたくなる気持ちも理解できる。

結局みー姉の髪を乾かすのは20分くらいかかった。

みー姉は母さんと入れ替わりで再び酒を飲み始める。


「次は私ね!ふふん!」


「あーい。どうぞ〜。」


母さんは明と同じくらいの長さなので、みー姉ほど大変じゃない。

母さんはすこぶる上機嫌だ。というか、俺は機嫌の良い母さんしか知らない。


「こんな素敵な息子がいて幸せ者ね〜。毎日やってくれる?」


「いや、みー姉と同じこと言わないでよ。流石にめんどくさいから嫌だ。」


「え〜。優くんのけち〜。」


やっぱり親子だ。全く同じ反応をした。

まあ、こんなに喜んでくれるなら誕生日とか特別な日にやってあげようかな。


「お兄ちゃん!明は毎日がいい!」


「おお!いいぞ〜!」


「「え〜!明ばっかりずるい!」」


前言撤回を撤回!

マイエンジェルのお願いなら断れまい!

可愛い妹のお願いとあらば、俺も喜んでドライヤー屋さんをしてあげよう。

明はまだ8歳なのだ。妹だぞ。君たちとは話が違うのだよ。

成人した大人がずるいとは何を言ってるんだか。

そもそも、思春期の男が母親と姉の髪を乾かすなんてことありえないだろ。


それにしても、母さんとみー姉を軽くあしらえるくらい打ち解けたよなあ。

年長組がおちゃらけてくれてるのは実はありがたかったりする。


あ。司がお風呂から帰ってきた。めっちゃ緊張する。

一番よく分からん子です。歳が近いから余計に接し方が難しい。

どんな顔すればいいの?


「ど、どうします?」


「・・・。お願いするわ。」


目の前に司が座った。

司の長い髪に触れる。本当に綺麗な黒髪だ。

俺から顔は見えない。でも、機嫌は悪くなさそう。

手持ち無沙汰だからか、スマホを見ている。

すると、みー姉がニヤニヤしながらこっちにきた。


「あら。結局司もやってもらってるんじゃない。よかったわねえ?笑」


「お姉ちゃんうるさい!明がやってもらえって言ったから!私も面倒だったし!」


「じゃあ、明に感謝しないとね?笑」


「お姉ちゃんマジでうざい。てか、あっち行ってよ。」


ちょいちょい。みー姉よ。

司が不機嫌になってしまうだろ。勘弁してくれ。

みー姉はニヤニヤしながらダイニングテーブルに戻って、母さんとひそひそ話し始めた。

みー姉ってよく司を揶揄うよな。怖いもの知らずめ。嫌われても知らないぞ。


俺は機嫌を伺おうとバレないよう司の顔を覗き込む。

あれ?司はあんまり不機嫌になってない。

むしろ機嫌は良い方だと思う。ちょっと笑っている気がする。

マジで掴めないんですけど。

ただ、無言が続くのは気まずいので、なんとか話題を模索する。


「こんなに長い髪、毎日乾かすの大変じゃないの?」


「そんなの大変に決まってるじゃない。でも、朝に寝癖がつかないから支度が楽なの。」


「確かに!考えたことなかったわ。明は寝癖すごいもんな。」


「ふふふ。そうね。それに今も長くて良かった思ってるわ。」


「ん?どういうこと?」


「なんでもないわよ。笑 気にしないで。」


よく分からないが、自然に会話ができている気がする。

司がいつになく楽しそうに笑っている。


「それにしても乾かしてもらうのは楽でいいわね。毎日やってくれてもいいわよ?」


「司もかよ。めんどくさいから嫌だね。」


「ケチな男ね。」


おまえらマジで全員同じこと言うじゃん。

家族ってここまで思考回路が似るものなのか。

俺は召使じゃねーんだよ。もう腕攣りそうなんだわ。


「ねえ。優はなんで学校に通いたいの?」


「ん〜。家にいても暇だし、俺友達いないし。」


「ふーん。でも、女の子ばかりの学校で友達なんてできるか分からないじゃない。」


「いや、3年も通えばできるでしょ。多分。おそらく。メイビー。」


「優が友達だと思ってても、相手はどうか分からないじゃない。」


「え?司から見た俺ってそんなに友達できなさそうなの?」


「んー・・・。ある意味できなさそう。」


「ある意味ってなんだよ。ある意味って。」


「自分で考えなさいよ。」


酷いこと言うよな。友達できなさそうって相当な悪口じゃない?

俺は男女の友情は成立する派です。男に下心がなければね。

あ、司はそういうことを言ってるのか?貞操が逆転している世界なんだもんな。

向こうに下心が芽生えるってことだろうか。

確かにこっちの世界に来てから、そういう場面に何度か出くわしてるわ。

それは別に望むところなんだけど。彼女欲しいし。

あ、そうだ!早めに彼女を作っちゃえば、友達も普通に作れるんじゃね?


「優。今、彼女作っちゃえば友達できるかもって考えてるでしょ。」


ぎくうううう!女の勘恐るまじ。ほぼエスパーやん。


「すごいな。エスパーかなんか持ってる?」


「ふざけたこと考えないで。」


ふざけてなかったんだけどな。思春期男子の健全な願望だと思うぞ。


「それ全然健全じゃないから。」


「・・・。」


あれ?心の声全部漏れちゃってるのかな?

怖いんですけど。ガチのシックスセンスじゃんか。

会話をしていないはずなのに、会話が成立してるよ。

しかも、背中越しだよ?顔も見ていないんだよ?

元はといえば、司が友達できないとか言うからじゃんか。


あ、やべ。司の機嫌が露骨に悪くなり始めた。

もう、ほんとこの子わかんない。難しすぎるでしょ。


「お、おわりました。」


「ありがとう。・・・学校ではもう少ししっかりしなさいよ。」


「え?どう言う意味?」


「あんまり女を甘やかすなって言ってるの。」


はいい?お前らが髪乾かせ言い出したんやろがい!

俺が好きで乾かしたのはエンジェルだけですけど?

いや、女性の髪の毛に触れるという貴重な経験はありがたいとは思っていますけども!

まあまあな肉体労働をしたんだぞ?


「家族は別よ。なんか文句あんの?」


あ、やっぱ聞こえてるわ。

すみませんでした。許してください。


「わかればいいのよ。」


司ってすげえ。恐れ入りました。


さて、俺もさっさと寝よ。

なんかめっちゃ疲れたわ。


「そうね。早く寝な。」


「・・・・。」


無だ。無になれ。無。無無無無。

最後まで読んでくださりありがとうございます。

ブックマークやリアクション、評価が励みになっています。

最近はより多くの方に反応を頂けて嬉しいです。

今後ともよろしくお願いいたします


まさか、風呂上がりで1話使うとは。

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