違和感
〜東海林 直目線〜
みなちゃんに追い出された・・・。
あんな素敵な優くんとはずっと一緒にいたいのに!
今日は絶対早く帰るんだから!溜まっている仕事なんかちゃちゃっと片しちゃうわ!
会社のビルは家からすぐなので徒歩で向かう。
ビルの受付に声をかけ、ビルの最上階のオフィスにて、社員たちに挨拶する。
そして、オフィスの奥にある社長室に入る。
社長室に着くと秘書が待っていた。
「おはようございます。社長。」
「おはよ〜。急にお休みしてごめんなさいね〜。何か問題はなかった?」
「特に問題はありませんでした。社長に振り回されるのは慣れていますので。」
大企業にまで成長したうちの会社では、私がいなくても大抵の業務に支障はない。
私の仕事といえば、付き合いのある企業との会食や株主総会などで、会社の顔としての外交がメインだ。
会社内でやることといえば、幹部連中との会議や決済の最終確認ぐらいなものである。
社長の私に定時はないので、ぶっちゃけ予定がない日は会社に来る必要がない。
ただ、私は一代でこの会社を築き上げたので、習慣として平日は出勤している。
コンコン
「は〜い。どうぞ〜。」
「なお〜!南ちゃんから休むって連絡が来たから驚いたわよ〜。」
入ってきたのは副社長で高校からの友人の霧島 友佳。
起業した頃から一緒に働いている仲で1番の親友でもある。
私が妊娠している時などは大いに助けられたし、この会社が大きくなった功労者だ。
うちの家族とも面識はある。
「ごめんて〜。優くんが倒れちゃってね〜。かなり大変だったのよ。」
「南ちゃんに聞いたわよ〜。もう大丈夫なの?」
「ええ。もう退院してお家にいるわ。」
「そうなのね。・・・って、なんか直ツヤツヤしてない?」
「んふふ。土曜日に優くんとデートしたの〜。でへへへ。」
「デッ!?デート!?なな、何よそれ!引きこもってたんじゃないの!?」
「今の優くんはとっても優しいの♪今日もお仕事頑張ってねって言われちゃった!」
「・・・嘘ね。優くんが倒れたショックでおかしくなったのね。病院に行きなさい。」
「し、失礼ね!ほんとだもん!今日は絶対早く帰るんだから!」
ほんと失礼しちゃう!私が後ろ髪をひかれながらも会社に来たというのに!
でも信じられないのも無理ないわね。私も最初は驚きすぎて夢かと思ったもの。
まあいいわ。帰ったら優くんが待っているし。みんなでご飯も食べられるし。
あ〜。早く帰りたい。
「・・・。ほ、ほんとなの?で、デートって。あの?男と2人で出かけたってこと?」
「ふふん!そうよ!真由美のところでご飯食べたんだから!嘘だと思うなら聞いてみたらいいじゃない!」
「・・・。ず、ずるい!私は心配してたのに!そうとも知らずデートなんて!」
「ごめんあそばせ〜。」
「わ、私にもデートさせてよ!直に変わって働いていたのよ!」
「ダメよ!私の優くんなんだから!」
小一時間友佳に文句を言われ続けた。
今度、家で一緒にご飯を食べるということで落ち着いた。
友佳には助けられているのは事実だからしょうがないわね。
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〜東海林 司目線〜
「つーちゃんなんか元気になったね!」
「そ、そうかな?」
「お兄ちゃんと仲直りしたの?喧嘩してたじゃん」
「け、喧嘩??・・ん、あー、それは私が悪かったから謝ったよ。」
私はいつも通り明と一緒に学校に向かっていた。
仲直りしたかと言われると答えるのが難しいところだ。
確かに一昨日の朝の件に関しては解決していると思う。
でも、あの日のことはまだ何も伝えられていない。
とはいえ、今はとても前向きだ。
明と別れて、高校に向かう。
別れてといっても5分も離れていない場所に高校はあるので、すぐに到着する。
私が通う高校は桜星大学付属高校。
国内でも数少ない男性も通っている高校だ。男子生徒はかなり少ないけど。
「つかっちゃんおはよっ!」
話しかけてきたのはクラスメイトの橘 あかり。
私の数少ない友人で、小学校からの付き合いだ。
一度だけ優と3人で遊んだが、デレデレしたのがムカついたので、それ以降は会わせていない。
もう会わせるつもりもない。
「あれ?つかっちゃんなんかあった?」
「え?なんで?」
「なんか今日可愛い!いつも難しそうな顔してるのに、今日は明るい顔!」
失礼な奴だ。
まあ、このくらいストレートで素直な性格じゃなきゃ私に話しかけたりはしないだろう。
私もこの裏表のない性格は好ましく思っている。
「別に。何もないわよ。」
「うっそだ〜!絶対良いことあったでしょ!最近は特に暗かったもん!もしかして男?」
「お、男!?そ、そんなわけないじゃない!」
「・・・え?まじ?その反応、男じゃん。」
私ってそんなにわかりやすいかな?
良いことあったというか、これから良くしていきたいというか。
あーもう、あかりは朝からめんどくさい。
でもいつもよりはイライラしない。
「ねえ。男なんでしょ?」
「違うから。しつこい。」
「ん〜〜〜。あっ!わかった!優くんでしょ!」
「・・・・。ちがうから。」
「あ!変な間あった!ねえ、何があったの〜?ねえねえ。」
あーもう鬱陶しい。早くチャイムなれ!
あかりにはHRが始まるまで問い詰められた。
無視してやったけどね。
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香織さんに一般的な男性の過ごし方を聞いた。
確かに食事中に話すような内容ではなかった。
正直香織さんに聞いたのを申し訳なく思うほど、今の俺にとってはえぐい内容だった。
簡潔にまとめると、男性の仕事は子作りである。
この世界において希少な男性が子作りに励まなければ人類は絶滅するため当然のことである。
国としては子作りさえしてくれれば良いという扱いになっているが、その仕事の重要性は極めて高いため、生活するにあたってかなりの優遇を受ける。
義務教育を終えた15歳以上の男性は大きく分けて3パターンの人生を選択する。
1つ目は国に月に2回一定量の精子を提供して収入を得るという生き方。
この場合、家で各々の趣味などをして過ごすそうだ。
そう、俺が嫌がっていたオナ⚪︎ーマシーン。
記憶を失う前の俺はこのパターンだったと思う。
女性に対して恐怖心があったり、内向的な性格の人が多いらしい。
おそらく家族たちにとっては一番好ましい過ごし方。
具体的には、読書や映画鑑賞、前の俺のように絵を描くなどの芸術活動をする人などが多い。
ちなみに男性が描いた絵や書いた本は高く売れる。
中にはネット配信などで副収入を得る人もいるらしい。
2つ目は今の俺のように進学して社会進出を目指すという生き方。
この場合、精子の提供は卒業まで免除される。成績が悪い場合は例外ではある。
外出による性被害などの危険もつきまとうため、このパターンを選ぶ男性は少ない。
そして国としても推奨しているわけではないので、最低限の安全保障や保険が適用されるくらいで、収入などは得られない。
実際、この社会は女性だけで回せるようにできている。
ただ、このパターンの男性が全く必要のない存在として社会に認識されているわけではない。
国立大や大企業が男性を餌にして、優秀な人材を確保したり、成績向上を促したりと、ゲームのバフのような効果を期待されている。
加えて、男性の研究者などは優秀な人も多いらしく、一定の需要は存在している。
男性にとってのメリットは自分の夢を追いかけたり、恋愛結婚ができることなど。
メリットの割にデメリットが多いと考える人が多く、割と変人扱いされる。
先日ニュースで見た男性議員などは良い例で、40年に1人の変人というわけだ。
そして3つ目。これがエグいのだ。
家に女性を呼びまくって酒池肉林を築くという生き方。
男性は20人まで婚姻を結ぶことができるが、男性側に不倫という概念がないため、欲望の限りを尽くして生きていくらしい。
男性は国から与えられたカタログのようなものから好みの女性を選んで派遣してもらう。
子作りが男の最大の存在意義のため、複数人を呼ぶことも勿論可能だ。
男性の家に勤める女性は国家公務員として扱われている。
基本は容姿を基準に採用されているし、人気の職業のため採用倍率は極めて高い。
その女性達に自分の世話をさせ、抱いて、飽きたら別の人を呼ぶ。
女性を妊娠させれば、国からの収入も手にする。
男が生まれればボクシングの世界チャンピオンのファイトマネーくらいもらえる。
ちなみに、派遣された女性はほとんど奴隷のような扱いを受けるらしい。
が、女性側も男性に呼ばれるのは栄誉になるため、喜んでその待遇を受け入れる。
この世界には御殿様がたくさんいると思ってもらえれば分かりやすい。
国としては3つ目の選択肢を取るように誘導していると言っていい。
義務教育を通して男性に女性と交流させ、味を覚えさせて、15歳を迎えたら子作りマシーンになるように育てているというわけだ。
この世界の常識マジでえげつない。
20人に1人は男の子が生まれるので、相当な金持ちだし。
衣食住も性欲も全てが満たされ、王様になれる。
そりゃ、男の人間性が終わり散らかすのも頷ける。
記憶を失う前の俺が3つ目の人生を選択しなかったのを褒めてやりたい。
前世の母親から女の子は泣かせるなと教育されているし、前世の姉からも女性の扱い(主に機嫌取り)をスパルタで学んでいる。
この世界の女性は奴隷のように扱われても泣かないわけだが、俺としては女性を見下して生きていくようなダサい奴にはなりたくない。
きちんと対等に愛し合える関係を築くことが望ましい。
前世の記憶のある俺の倫理観では3つ目は受け入れ難い選択肢である。
今の家族は記憶を失った俺に3つ目の説明をしていなかったが、まともな家族で良かった。
いや、この世界では非常識な家族なのかもしれないな。
・・・・・・・・・・・。
ん?待てよ。・・・あれ?いや、やっぱり俺って家族に囲われてないか?
確かに、俺は進学が許された。でも、相当渋られた。なんとか言いくるめたのだ。
過保護すぎる一面があるのは男だからなのは事実だと思う。
外出を経験して男が外出する危険性も理解している。
でも、病院の先生や母さんの友人ですら関わるのを拒むのは流石に行き過ぎではないだろうか?
愛ゆえにと言われればそうなんだけど・・・。
なんか違和感があるんだよな〜。
明らかに女性から遠ざけている節があるよな。
うちの家族ってこの世界において相当非常識じゃないか?
この国の方針と食い違いすぎてやしないだろうか。
ありえないが、仮に、もし仮に、高校卒業後、俺が3つ目の選択肢を取ろうとした場合、母さんは認めるだろうか?
いや、絶対に認められないと思う。想像できない。
じゃあ、就職したいと言った場合は?これも渋られるのは目に見えている。
母さんのことだから、うちの会社で働くなら認めるとか言いそう。
つまり、俺の想像の域を出ないが、俺が家族に提示されていた人生は1つ目のオナ⚪︎ーマシーンのみということになる。
いや、今の俺としては、別に嫌な気持ちではないよ?
勿論彼女を作れないのはいただけない点ではあるけど。
綺麗な人たちと家族として過ごせるのは素敵だよ?ストライクだし。
俺としてはこんなに愛されているのは幸せだと思うよ?
ぶっちゃけ、この家族と一生過ごしてくださいと言われれば、喜んで受け入れます。
ど真ん中ストライクだし。
囲っていることが問題なのでは無い。
とても愛してくれているということだから。
そのために不自由のない生活環境も整えられているわけだし。
ただね、俺が気になっているのは、家族写真のことなのだよ。
捨てられていないとはいえ、破られていた。
おかしいよね?
仮に家族が俺を囲っていたとしたら、以前の俺にとって家族って一生一緒にいる存在なわけですよ。
引きこもる前の家族仲は良さそうだったし。
俺は囲われるくらい愛されていたのに、それを拒んだってことは、孤独になったということだよね?
それが正しいとすれば、俺が自殺をしたのは孤独になったことが原因では無いだろうか?
どうして拒んだのだろう。
俺に原因があるのか、はたまた、家族に原因があるのか。
何かがあったのは確実だ。
この答えがわかる日が来るのだろうか。
最後まで読んでくださりありがとうございます。
ブックマークやリアクション、評価が励みになっています。
最近はより多くの方に反応を頂けて嬉しいです。
今後ともよろしくお願いいたします。
割とエグい世界にしてしまったなと自覚しております。
キャラクター紹介
●霧島 友佳 39歳。黒髪のショートカット。メガネをかけている。Cカップ。しっかり者で仕事ができる。直がやりたいことを実現させるために支えている。直のことが大好きで一生ついていくと決めている。部下からの信頼も厚い。でも細かい性格なので恐れられてもいる。
●橘 あかり 16歳。金髪のボブ。明るく素直で元気。Dカップ。司の友達。友達は多いが、司とは特に仲が良いと思っている。また優と遊びたいとも思っている。天然。男の子と仲良くしたいので積極的に話しかけては玉砕している。




