気持ちの整理
時は現在に戻ります。
〜東海林 司目線〜
優が写真を捨てずにまだ持っていたなんて。
思わず泣いてしまった。嬉しさもあったし、罪悪感も感じたから。
優はもう家族のことなんてどうでもいいのだと思っていた。
優も何故か泣いていた。それはまるで昔の優のようだった。
その時、優は死んでいなかったのだと感じた。
私は少し救われた。
私が優を殺してしまったと思っていたから。
記憶が戻ったわけじゃない。
それでも、今の優が全くの別人じゃないことがわかった。
私が謝るべき相手はちゃんと存在している。
今の優は血が繋がっていないことを知らないままだから、すぐに打ち明けて謝罪することはできないけど、前に進めそうな気がする。
良かった。本当に良かった。
優が生きている。目の前にいて、家族として歩み寄ってくれている。
今日まで本当に苦しかった。
優にあの言葉を放った日からうまく笑えなくなっていた。
優から無視されるたび胸が酷く傷んでいた。
満足に眠れる日もなかった。
学校も楽しくないし、家でも休まらない。
1日1日が本当に長かった。
その苦しい日々から解放された気がする。
優がまた私を司と呼んでくれた。
優から名前を呼ばれただけなのに、こんなにも心が満たされるなんて。
あの日から封じ込めていた感情が溢れ出すのを感じる。
わかってはいたけど、私はまだ優が好きなんだ。
やっぱり、私には優しかいなかった。
それにしても、全く私はひどい女だ。
優を傷つけたくせに好きだなんて。許されたいなんて。
でも、もう嘘はつけない。私にはどうしようもないの。
優だって悪いのよ。私の特別を奪ってしまったんだから。
姉弟でも諦められないくらい好きにさせたのだから。
今日お姉ちゃんと話せて良かった。
私たちが家族であることを実感した。
支えられていることがわかった。
心の中のモヤモヤがすごく軽くなった。
今日はぐっすり眠れる気がする。
私もママやお姉ちゃんみたいに家族を支えられるように前を向こう。
翌朝。いつもよりすっきりとした寝覚だ。
こんなに晴れやかな朝はかなり久しい。
「司おはよ〜。」
「お姉ちゃんおはよう。」
「なんか顔色いいわね?優と何かあった?」
「まあね。夜に優と話して、気持ちがだいぶ楽になった。優は優なんだなって。」
「そっか。本当に良かった。」
「あとね・・・。私やっぱり優のことは好きみたい。今は記憶がなくって血が繋がっていないことは伝えられないから謝ることもできないけど、いつか謝罪と一緒にこの気持ちもちゃんと打ち明けることにする。」
「まだ好きなのは知ってる笑 じゃなきゃあんなに苦しんだりしないでしょ。何はともあれ、前向きになってくれて良かった。」
「昨日はありがとうお姉ちゃん。」
自然とお姉ちゃんには今の自分の気持ちを隠したくないと思った。
整理がついたよって伝えたかった。
「まあ、司が諦めるなら、私がもらっちゃうとこだったわ。」
「ちょっと!お姉ちゃん!揶揄わないでよ!」
「あははっ!揶揄ってないわよ?笑」
「お姉ちゃんが本気なら別にいいけどさあ。あ、独り占めはダメだよ?」
「司もいうようになったねえ笑」
この世界で男が1人とだけ結ばれるなんてことはない。
私が感じていたジェラシーは姉弟という関係が原因だった。
でも今は、ちゃんと順序を踏んで、いい関係を築きたいと思っている。
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転生3日目の朝。
今日見た夢のおかげで記憶の手がかりを得る事ができた。
決して全貌が見えたわけではないが、司は事情を知っているような感じ。
相当デリケートな問題なので、時間をかけて話をしていこうと思う。
また、夢を見るかもしれないしね。気を急いてもしょうがない。
俺が今日やるべきことは決まっている。
それは学校について知ること。受験があるならもう遅いっしょ。
母さんが学校を決めるとかなんとか言ってたけど、入れない可能性を考えているのだろうか。
俺は頭が良いとは言えない。前世の成績は中の中。
すなわちスーパー平凡。まあ、部活ばかりで勉強をしてこなかったから当たり前だけどさ。
「おはよ〜う。」
「優おはよ〜。ご飯できてるよ〜」
みー姉は相変わらず朝が早い。
そして、司は先に食事をとっているところのようだ。
司との関係はかなりマシになったけど、昨日の一件もあるので気まずい。
「優おはよ。」
「お、おはよう。」
なんと司から挨拶をしてくれた。すごいことだぞ。
昨日の朝は挨拶してくれなかったからね。
この歩み寄りを無駄にしてはならない。自然にコミュニケーションをとろう。
「気になってる事があるんだけど・・・。聞いてもいい?」
「何?」
「前の俺って頭良かった?」
「・・・っぷ!あはは!」
笑われたんですけど。俺変なこと言いました?
ウケを狙ったわけじゃない。
けど、笑っている司はものすごく可愛い。なんかムカつくけど。
「普通にバカだったけど?」
「・・・・酷くない?」
「いや年30日しか学校行ってないんだから、頭良いわけないじゃん。」
「た、確かに・・・。」
どうやら俺はバカだったらしい。
司からの藤川⚪︎児ばりの火の玉ストレートには驚いたが、悪くない。
これは距離が縮まっている証拠だろう。ムカつくけど可愛いから許す。
味覚とかが前世と違っていたから、勉強しなくても頭が良い可能性に期待してしまった。
つまり俺の学力は中の中のままということだ。
異世界は甘くない。世知辛いものだ。
いや、待てよ・・・。
中の中とはいえ、俺には前世の記憶もあるし知識もある。
この世界の男は俺以外も同じように学校に碌に通っていない。
おおっとこれは?男の中では相当マシな部類なのでは?
記憶喪失になって学力が上がるという奇妙な人類になっているということか?
「バカでも入れる高校ってあるの?」
「やっぱり高校通うんだ・・・。まあ、男子はどこでも選び放題だよ。」
「え!?まじ!?なんで?」
「どこの高校も男子を欲しがっているからね。男子が在籍しているだけで女子生徒も集まりやすくなるし。」
なるほどね。まるで餌だな。
いやあ、それにしても安心した。そもそも二月末で、受験できるのかすら不安だったし。
高校に通えるなら女子の餌にくらいなってやろうじゃないか。
さながら工業高校の女子。もしくはオタサーの姫。
ビバ!青春!モテモテ高校ライフ!
しばらくすると母さんと明が起きてきた。
マイエンジェルは相変わらず可愛い。好きだ。
母さんの寝起きはなんかセクシーなんだよな。
昨日と違ってパジャマは着ているけど、隙だらけな感じがたまらん。
家族に対する感情としては不適切なのは分かっているよ。でもしょうがないじゃんか。
エロかわいいママなんだから。
エロは一旦置いといて。
朝食をとっている母さんに高校のことを聞いてみる。
「俺の通う学校ってもう決まってるの?」
「ああ。決まっているわよ。司ちゃんと一緒の学校よ。」
「へえ。どんな学校なの?」
「国立の付属校で小学校からのエスカレーター式よ。男の子が通うなら安全なところじゃないと。」
「他の高校は安全じゃないの?」
「ん〜。一概には言えないけど・・・。男の子は義務教育が国立のところと決まっているから、そのまま進学しちゃった方が安全なのよ。管理はちゃんとしているし、男の子に慣れている女の子も多いわ。他の男の子も少ないけどいるだろうし。それに手続きも中学校に進学を希望すれば終わりだし。」
なるほど。理にかなっているな。
なーんだ。色々と取り越し苦労だったのか。
母さんは非常識な俺が突拍子もない選択しそうだったから心配してたのか。
おそらく母さんも俺のことバカだと思っているな。
「普通に平日は毎日通っていいんだよね?」
「「「毎日!?!?!?」」」
母さんだけでなく、みー姉と司も驚いている。
まあ予想通りです。だから確認したんだけどさ。
小、中学校の登校が年に30日と聞いていたから、高校も男子は毎日行く必要はなさそうだなとは思っていた。
でも、俺としては女の子ばかりの高校で青春を謳歌できるというのに、たまにしか登校しないなんてありえないのだ。
「ゆ、優君?ま、毎日通う必要はないんじゃない?高校も年30日で十分なのよ?」
「やっぱり30日だけなんだ。でも、俺は勉強をしにいくんだからね。30日じゃ足りないでしょ?司にもバカって言われたし。」
「い、いや、優が頭は良かったかって聞いてきたんじゃない!男子はそういうものなんだから、毎日通う必要なんてないじゃない!」
母さんは予想していたけど、意外にも司からも反対された。
「え?勉強ができるようになるに越したことなくない?」
「「・・・。」」
はい。論破。
この世界において、男が勉強できるようになって役に立つのかは不明だけどね。
こう言ってしまえば返す言葉はないでしょ。
「それに少ないけど男子もいるんでしょ?わざわざ高校に通うくらいだから、それなりに登校するんじゃない?」
「うちの学校の男子でも流石に毎日は来ない。毎日なんて・・明らかに異常な人だよ・・・。」
「俺にはずっと家にいるより健全な気がするけど。」
「健全な男子は家にいるの。だって、女子がたくさんいるんだよ?」
「え?問題ある?そもそも、どこ行っても女の子しかいないじゃん。」
「・・・。」
司が黙り込んでしまった。
しかし、司がこんなに反対するとは思わなかった。
一緒に通うのは嫌なのだろうか。
「ゆ、優じゃうちの授業はついてこれないわよ!」
「ひどいな!それはそうかもしれないけど!だ、大丈夫だよ!・・多分。」
「無理無理!絶対無理!」
「そこまでいうか!じゃあ他の男子はなにしてるのさ!」
「知らないわよ!なんで学校に来るのかこっちが聞きたいくらいよ!」
「ちょ、ちょっと、司ちゃん?優くん?落ち着いて?」
おっと。少しヒートアップしてしまったか。
でもまあ、姉弟らしくなってきたということだろう。
「ママも優になんとか言ってよ。」
「ん〜。優くんが通いたいっていうなら、しょうがないんじゃないかしら・・・。」
母さんありがとう。俺としても折れるつもりはない。
なんせこの世界に友達すらいないしね。
今世は後悔のないように生きると決めているし。
「司は優が女の子と仲良くなるのを心配してるんでしょ?笑」
「お、お姉ちゃん!そ、そんなことない!もういい!好きにすれば!」
みー姉がニヤついている。
俺と司がちょっとした口論ができるくらいには仲良くなったからだろうか。
それにしても今のはなんだったんだ?
司が逃げるようにリビングから出て行った。
女の子と仲良くなるのはそんなに危ないことなのだろうか?
俺が出会った人はみんないい人だったけどな。たまに下心えぐい人もいるけど。
「みなちゃん意地悪ね〜笑」
「だって、司が可愛かったんだもん笑」
?????
また仲間はずれだ。
しかし、いいだろう。
学校のことは解決したし、毎日通っても問題なさそうだ。
しかも、好きな時に休めるというおまけ付き。
花の男子高校生は目の前だ!
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