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貞操逆転世界でも俺には関係ない!〜自分らしく生きてたら、どこに行っても愛される〜  作者: ビーム


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15/23

あの言葉

過去回想です。


俺は司が部屋を出てから、机にあった写真をテープで直した。

この写真はかつての俺が唯一残したもの。

それはくしゃくしゃに丸められていて、途中まで破られていた。

でも、捨てられなかったし破り切ることもできなかった。

つまり、彼の中で家族は最後まで心の中に残っていたのだろう。


その日の夜は長い夢を見た。

夢というにはあまりに鮮明なもの。

でも、音は聞こえない。映像が流れていたような感覚だった。

その夢の中ではかつての仲の良い家族があった。

でも、夢が覚める直前の光景が一番印象に残っている。

俺が小学校から帰ってきたら、司と喧嘩になっている様子だった。

部屋に逃げて、写真を破ろうとしている手元。

途中で諦めて、ぐしゃぐしゃと丸めて机の中に投げ入れた。

その写真が夢で見た最後の家族の姿。

目覚めた後も頭から離れることはなかった。


目を覚ました俺はすぐに理解した。

これはかつての俺の記憶だったのだろう。あまり良い終わりの夢ではなかったと思う。

でも、気分は悪くなかった。むしろ、安心した。

俺の中に彼の記憶が残っているのが分かったから。彼は死んだわけでないと思えたから。

いや、少し違うか。

確かに俺の記憶だと思えたと言った方が正しいかもしれない。

病院で目を覚まして、母さんが抱きついてきた時のことを思い出す。

その時に感じた母さんからの愛。それと俺の中に芽生えた罪の意識。

あれは確かにかつての俺のものだった気がする。

どこか他人のように感じていた家族が、今はそう思えない。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

〜東海林 司目線〜


私が物心がつく頃にはすでに優は生まれていた。

いつも笑顔のママのことが大好きだった。いつも優しいお姉ちゃんは私の憧れだった。

そんな2人を見ていたから、年下の優の前ではカッコつけてたと思う。


私が幼稚園に通い始めてちょうど1年後、優も同じ幼稚園に通い始めた。

その幼稚園は国営のところで、珍しいことに男の子もちらほら通っていた。

男の子が通える幼稚園は国営のところ以外ない。

男の子の優が入園する予定だから私もその幼稚園に通っていたのだと今ならわかる。


優は小さな頃から素直で可愛い弟だった。

かなりの甘えん坊で、家族のみんなメロメロだったと思う。

もちろん私も「つかさ!」といつも後ろについて回る優が可愛くて仕方なかった。

姉として慕ってくれている気がして誇らしかった。


幼稚園に通い始めて、男の子は嫌な人が多いなと思った。

遊んでいた遊具もおもちゃも男の子に奪われた。でも、幼稚園の先生も特に注意する様子はなかった。

それが普通なのだと子供ながらに理解した。男の子は少ないからあらゆることが許されていた。


優は違った。

優は幼稚園でもいつも私の後ろについてきて、「つかさ!これやろう!」なんて一緒に遊んでくれる子だった。

その時、やっぱり優は他の男の子と違って可愛くて素敵な子だなと思った。

お友達は男の子と仲良くなろうと必死だったけど、私には優がいたからそんな必要はなかった。

あんな男の子達よりずっとカッコよくて可愛い弟がいることは私の自慢でもあった。


私が卒業して、優が1人で幼稚園に通うことになった時、優は泣いてくれた。


「なんでつかさが一緒じゃないの!一緒じゃなきゃ行かない!」


家を出る前にママにわがままを言っていたのを覚えている。

それを見て私はものすごく愛おしく感じたし、嬉しかった。


小学校も幼稚園同様で男の子も通う特殊な環境の学校だった。

やっぱり、どの男の子も嫌な人ばっかりだった。

たまにしか来ないくせに我が物顔で騒いでいる様子にうんざりしていた。

意地悪だし、不真面目だし、うるさい。

しまいには、私の体を触ってきたりして、「仲良くしてやるよ」なんて言ってきたりした。

本当に気持ちが悪かった。

そのあたりから私は完全に男の子が嫌いになった。

そのせいだろうか。優は私の特別になっていた。


私が弟に対する恋心を自覚したのは小学校3年生あたり。

お友達が好きな人の話を私に振ってきた。

私は心の中で、『なんであれを好きになれるのだろう』と呆れた。

私には優がいるしな。なんて考えた時、優に恋人ができたらどうなるのかを想像した。

私には受け入れられなかった。

いつも後ろについてまわっている優が、私から離れて、どこかに行ってしまうなんて。

そこで、『ああ、私って優が好きなんだ』と気がついた。


優の姉であることが私の誇りだったのに、いつしか姉であることが恨めしく思えた。

男性が少ないこの世界では一夫多妻制で男の子は20人までは妻を持てる。

でも、家族である私だけは優との結婚が認められない。

なんて、ひどい話だろう。私が世界で唯一大好きな男の子。

なのに、その男の子とだけは一緒になれないなんて。


優は大きくなればなるほどカッコよくなっていった。

相も変わらず、私を慕ってくれている優。

私の想いを知らないいつも通りの優に、いつしか、もどかしさを感じていた。


私は4年生の時、お姉ちゃんに私の気持ちを打ち明けた。

すると、お姉ちゃんから衝撃の事実を知らされた。


「優と司は血が繋がっていないの」


聞かされた瞬間頭が真っ白になった。

弟ですらなかったなんて。

お姉ちゃんの意図は理解できた。本気なら結婚できるよと伝えているとわかった。

でも、すぐに受け入れられるような話ではなかったのは確かだった。


いつも通りの優に苛立ちを覚え始めたのはその日から。

優は何も悪くないのは分かっていた。だから、態度には出さなかった。


私が中学校に入学して、優が小学6年生の時。

優は私と別の学校に通うことになっても幼稚園の時のように泣いてはくれなかった。

当たり前の話。もう優は11歳なのだから。

でも、すごく寂しくなった。


そのあたりから少しずつ苛立ちが態度に出始めてしまったと思う。

優は少し不思議そうにしていたのを覚えている。

でも、それが余計に私の心をかき乱した。私の気も知らないでと。


そして、優と私との関係に決定的な亀裂が入った日。

あの日のことは一生忘れないと断言できる。


私もいつも通り学校に行き、下校している時に優を見つけた。

優も小学校からの下校中だった。男の子は安全面を考慮して先生の送り迎えがついている。

でも、そこには学校の先生と優の2人だけではなく、1人の女の子が一緒だった。

優の隣で楽しそうに笑っている女の子。優に好意を抱いているのは一目瞭然だった。

そこは私の場所だったのに。

優が素敵な男の子なのは私が一番知っている。だからこそ焦りを覚えた。

1人で抱え込むことはできないほどの感情が溢れ出した。


私はひと足先に家に着いて、優を待った。

優が帰ってきて、2人だけのリビング。


「おかえり。」


「ただいま〜。・・・え?なんか機嫌悪い?」


いつも通りの優が余計に私の癇に障る。


「別に。」


「ん?あ、そ、そう?ならいいんだけどさ。」


そんなわけがない。

優は私が不機嫌なのを分かった上で、気に障らないようにしているのだろう。

それが余計に腹がたった。もっと興味を示せよと思った。


自分の感情に抑えが効かない。

少し口調が強くなってしまう。


「友達できたの?」


「友達できたのって笑 そんなの前からいるわ笑」


私の強い口調に呼応して、優も少し喧嘩腰になってきた。

そんなことを聞きたいんじゃない。あの子はなんなのかを教えて欲しい。


「何その言い方。」


「いやいや、司が機嫌悪いだけじゃん。俺に当たんなよ。」


「は?」


「いや、マジで何なの?わけわかんねえんだけど。」


苛立ちがピークに達する。

優も不機嫌になり始めた。この喧嘩は私が原因なのは分かっている。

いきなり苛立ちを態度に出して、強い口調で咎め始めたのは私だ。

でも、もう止まらない。止まることができない。


「一緒に帰ってた子は友達なの?」


「別に司に関係なくね?」


「は?なんなの?普通に答えればいいじゃん。」


「なんか今日の司めんどいよ。」


そう言われた瞬間、私の中で何かが一気に溢れ出した。

私の心にはすでにたくさんのヒビが入っていたのだと思う。

そのヒビが、優からめんどいと言われて完全に壊れた。


苛立ちと焦り、それと優の一言が私の本当に伝えたいことを歪めた。

喧嘩の流れで出てしまった一言だった。

愚かにも、私の心を壊した優を傷つけてしまおうと思ってしまった。

最悪なタイミングで最悪な言葉で、それを伝えてしまった。


「うっざ。血も繋がってないくせに。」


口にしてすぐに自分の過ちに気づいた。

やってしまった。これだけはだめだ。こんなはずじゃなかったのに。

もっとタイミングを見て、慎重に伝えなくてはいけなかったのに。

これは、ただの姉弟喧嘩では済まされない。


本当は私と優が結婚できることを示したかった。

あの子じゃなくて私でいいじゃない。姉弟じゃなく恋人になれるの。

ずっと一緒にいれるの。私はあなたが好きなのよ。

私にはあなたしかいないの。それを分かって欲しかったの。


しかし、私の想いとは裏腹に溢れた言葉はナイフとなって優を刺したのだ。

優は何も言わずにリビングから逃げるように自室に行った。


この一幕で家族に大きな亀裂が入ってしまった。

優の家族を私が奪ってしまった。

一番近くにいた私だけはこれを言ってはいけなかった。


許されないことをしてしまったのは理解していたけど、何度も優に謝ろうと試みた。

でも、優はその日以来目も合わせてくれなくなった。

家族に対しても冷たくなって、ママやお姉ちゃん、明にすら当たるようになった。

私は無視され続けた。謝ろうとしていたけど、私は心が折れてしまった。


ママとお姉ちゃんは寂しそうな顔をしていた。明は怯えているようだった。

でも、家族には優との出来事を打ち明けられなかった。

自分がしでかしてしまった事がどれだけの事かわかっていたからこそ言えなかった。


しばらくすると優はほとんど自室から出てこなくなってしまった。

食事もお姉ちゃんが優の部屋に持っていっていた。

優と顔を合わせる瞬間があったとすれば、優が学校に行く日だけ。

もちろん言葉は交わさない。

私も優の顔を見たくないと思うようになった。


私は現実から逃げてしまった。忘れようとしてしまった。


でも現実は私を逃してはくれなかった。

優が自殺を図った。

ママは見たこともないほど取り乱していた。

私は罪悪感で押しつぶされそうになった。これは自殺なんかじゃないとわかっていたから。

優にナイフを突き立てたのは私。


私が優を殺したのだ。

最後まで読んでくださりありがとうございます。

ブックマークやリアクション、評価が励みになっています。

今度ともよろしくお願いします。


司の過去回想でした。今回のエピソードが一番重たいところでした。


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