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貞操逆転世界でも俺には関係ない!〜自分らしく生きてたら、どこに行っても愛される〜  作者: ビーム


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14/23

距離

今回は少し短めです。


「お、おかえりなさい。」


「司ちゃんただいま〜♪」


「た、ただいま」


母さんとのデートの間に何があったのだろう。司の目は腫れている。

どしたん?話聞こか?明らかに泣いた後だ。凄く気になる。

でも、聞かない。

え?聞けないだけだろって?

ち、ちげーし!俺は、女の涙の理由を聞くほど野暮じゃないのだよ!


リビングに入るとみー姉はキッチンに、明はテレビの前のソファで寝ている。

彼女達の定位置と言ってもいいな。

司も自室には戻らず、リビングにいる。やっぱり、少し空気が違う。


「おかえりなさ〜い。ママ楽しかった?」


「楽しかったわ〜♪ でも、優くんがジロジロ見られて気が気でなかったわ笑。」


「そっか〜。私でも優みたいな男の子が歩いていたら見ちゃうと思うもん笑。」


「そうよね〜。学校は大丈夫かしら。」


「え!?優って高校に行くの!?」


司が俺に興味を示してくれた。そうだよ。高校に通うのだよ。

そのために今日はスマホを買いに行ったのだよ。

もちろん俺が司に話かける事はできない。だって、今朝のことがあるんだもん。


「優。ご飯の前にお風呂に入っておいで。」


「え?あ、うん。分かった。」


若干、みー姉から追い出された感が否めないんだけど。やっぱなんかあったのか?

母さんも何か察している。

まあ、俺ですら司の様子がおかしいと思うのだから当然と言えば当然か。

こういうのは黙って従うのが男なのだ。井戸端会議に男は必要ないのは分かっている。


風呂から上がり、昨日同様、家族全員で夕食を取る。

空気は別に重たくはない。強いていうなら、司がチラチラこっちを見てくるのが気になるところだ。

まあ、俺にもいつかわかるだろう。詮索はよそう。


今日の夕食にはプリンが出てきた。

家族にプリンを食べる姿をやけに見られている気がする。


え!?あんま!ていうか、まずぅぅ!プリンまずぅ!

もったりして甘ったるいし、カラメルも気持ち悪い。甘いだけの塊に感じた。

これは決してプリンが悪いわけではない。

なぜだ。前世では好きだったのに。絶対に食べきれない。

味覚が変わってる。絵を描いた時もそうだったけど、自分が自分じゃないみたい。

みー姉と母さんが爆笑してやがる。こいつら知ってやがったな。俺がプリン嫌いだったことを。

野菜とかなら嫌いなものでも無理に食べさせようとするのは百歩譲って理解できる。

しかし、これはプリンぞ?全く食べさせる必要ないじゃん!

今は、プリンを人間の食べるものじゃないと感じる。

みー姉のやってること悪魔やん。絶対やり返してやる。覚悟しておけよ。畜生が。

この一幕のおかげで、食卓はより賑やかなものになったのは認めよう。


夕食後、マイエンジェルとテレビをみて談笑して、夜を過ごす。

明からお兄ちゃんと呼ばれるのも様になってきたところだ。

その後、明が寝る時間になり、自室に戻った。

俺も今日は酒飲みに捕まりたくなかったので、自室に戻ることにした。


自室でPCを開いてみる。そこには絵がいくつも保存されているファイルがあった。

おそらく前世の俺の趣味は絵を描くことだったのだろう。今朝の違和感の正体が分かった。

PC周りには俺が触ったこともないような機材があったが、それは絵を描く道具だったようだ。

少し安心した。記憶を失う前の俺にも趣味があったのか。

生きていて楽しみがないなんて辛いもんな。


ちなみに、エッチなビデオはない。でも、今の俺ならわかる。

この世界において、需要がそもそもない。だって男が全然いないんだもんね。

困るのは俺くらいなもんだ。これからは想像力を鍛えなければ。

え?18未満だからビデオなんて見れないはず?そこのお前少し黙れ。

あの確認画面は年齢を確認するものではない。男の覚悟に対する問いなのだ。


今日感じた自分が自分じゃない感覚。絵が描けたり、プリンが食べられなかったり。

俺は自殺を試みた自分が許せなかったし、怒りもあったが、今は少しだけ違う。

俺とは違う世界を生きて、好きなものも、嫌いなものも違う。

文字通り生きている世界が違ったのだ。

きっと今の俺には分かり得ない何かが彼を自殺に追いやったのだろう。


あ。そうだ。写真を直しておこう。きっと彼もそれを望んでいるはずだ。

彼だって今の俺のように、家族からの愛に気づけていたなら、きっとそうするはずだ。

だって、確かにこの写真は彼の机の中にしまってあったのだから。


写真を取り出し、テープを探す。

すると、ドアがノックされる音がした。


「優。司だけど。入ってもいい?」


「・・・。はい。どうぞ・・・。」


!?!?!?

ちなみに心の準備はできていない。なんだろう。

帰ってきてから司は変だったけど、これは予想外だ。司から俺の部屋に来るなんて。


司が部屋に入ってきた。俺はデスクの椅子に座ったまま司を迎える。

部屋の入り口に立っている司とは絶妙に距離がある。その距離のまま司が口を開いた。


「・・・今朝は・・その・・ごめん。」


「・・ああ。いや。・・・えっと・・大丈夫だよ。」


気まずい。でも、決して悪い空気ではない。無言の時間がしばらく続いた。


「・・・つかさ。優は私のことを司と呼んでいたの。また、そう呼んで」


「わ、わかったよ。・・・つ、つかさ。」


正直に言えば、今の俺には少しハードルが高く感じる。

でも、なんだかしっくり来る感じもする。

そうか。司が今朝、不機嫌になったのは、俺が敬称をつけてしまったからか。

俺に悪気はなかったが、確かに、きつい部分があるのは理解できる。

俺だって一緒に過ごしていた家族にさん付けで呼ばれたら、遠くなってしまったように感じるだろう。

申し訳ないことをしたな。彼女の気持ちを配慮できてなかった。


「何かしていたの?邪魔だった?」


「ん?ああ、写真を直そうと思ってさ。テープ探してたんだよね。全然暇だったよ。」


「・・・写真?」


司に聞かれたので、くしゃくしゃになっていた家族写真を見せる。

すると、司の目から涙が溢れていた。


「・・・それは、どこに、あったの?」


「机にしまってあったよ。覚えてはいないけど、きっと捨てられなかったんだね。破るのも中途半端だし。」


「・・・・・・・・。」


司は言葉を発さない。いや、言葉が出てこないといった感じ。

目に涙を溜めた司は本当に綺麗だった。俺は妙に胸がざわついた。

キュウッと心臓が縮むような感覚。

あれ、なんか俺も涙が出てきたんだけど。なんだこれ。

まただ。俺が俺じゃない感覚。この体が司の涙に反応しているような感じ。

今の俺には何もわからない。

でも、彼(・)と彼女には分かっているのだと思う。

言葉は交わさないまま時間が過ぎる。


「・・・・ごめん。私戻るね。おやすみ。」


「・・・お、おやすみ。」


誤魔化すように涙を拭った司は部屋から出ていった。

今のはなんだったのだろうか。考えてもわからない。

俺だけ取り残されてる気がする。転生するとは孤独なものだな。


その日の夜、眠りについた俺は長い夢を見た。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

〜東海林 直目線〜


優がお風呂に向かった後、みなちゃんから話があると言われた。

司が泣いていたことは帰った瞬間に分かった。出かけてる間に何かあっただろう。

ダイニングテーブルに司ちゃんとみなちゃんが座った。

明ちゃんは寝ていてくれて助かった。


私がいない間の一部始終を2人から聞いた。

みなちゃんには頭があがらない。

優くんのことがあってから私がどれだけ周りが見えなくなっていたのか痛感した。


本来、司ちゃんのことをケアしなくてはいけないのは私だ。

昔から仲の良かった司ちゃんと優くんが会話をしなくなったのは、優くんが男の子らしくなってしまったからだと思っていた。でも、それが原因ではないと分かった。


私は司ちゃんとみなちゃんに謝罪した。

私がしっかりしていれば司ちゃんのことには気づけたはずだった。

仕事ばかりでみなちゃんに家のことを任せていたツケが回ってきた。


それでもみなちゃんも司ちゃんも私を責めなかった。

母さんは外で家族を守っているんだと言ってくれた。

愚かにも、私は娘たちの言葉に救われた。

仕事だって彼女たちに支えられてこそ今があるというのに。

仕事が、家庭を顧みない理由にはならないというのに。

私たち家族はそこで誓い合った。これからは全員で過去と向き合っていこうと。



「私は優が記憶喪失で全てが変わったとは思えないのよね〜。司もそう思ってるみたいなんだけどママはどう思う?」


「ん〜。・・ごめんなさい。恥ずかしい話だけど、優くんが戻ってきてから嬉しくなっちゃって、酔っ払って寝て、起きたらデートすることになって、気にする余裕がなかったわ・・。」


「あはは!確かにみたことないくらい浮かれてたもんね〜笑 確かにあのあざとさ全開の優を前にしたら無理もないと思う笑 だって、優もママが浮かれるの分かってて揶揄ってたと思うよ笑」


「か、揶揄ってたの!?」


「いや、揶揄ってたっていうか、外に出たかったんでしょ?笑 多分。」


「も〜うっ!!」


みなちゃんのおかげで空気はすごく軽くなった。本当にみなちゃんには頭があがらない。

揶揄われていたのは不服だけど、楽しかったから文句は言わない。


「今日の晩御飯にプリン出してみようよ笑 優嫌いだったでしょ?笑」


「え!?ひどいじゃない!」


「プリンがもったいない。」


「司はプリン好きだもんね〜笑 でも、優が変わってないことがわかるかもよ〜笑」


みなちゃんは悪戯っぽく笑いながら、晩ごはんにプリンを出す提案をしてきた。

私の娘は鬼畜だと思ったけど、良い提案だとも思ってしまった。

だって、私も前の優くんの面影を見たいと思ったから。


優くんはプリンを食べようとした時、私たちがジロジロ見ているのを不思議そうにしていた。

そして、優くんがプリンを口に入れた瞬間の表情を見て私は思わず笑ってしまった。

みなちゃんは爆笑している。司ちゃんもなんだか嬉しそう。明ちゃんはプリンに夢中。

優くんはみなちゃんを睨んでいる。


記憶を失う前の優くんも確かにこの食卓にいるんだと感じた。

今日は家族の距離がグッと縮んだ気がした一日だった。

最後まで読んでくださりありがとうございます。

リアクションやブックマーク、評価が大変励みになっています。

今後ともよろしくお願いします!

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