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僕はゼネラルマネージャーになって、プロ野球の世界で夢を叶える  作者: 柿井優嬉


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革命前夜

 チームのメンバーが集まって練習に励むキャンプは、秋にも行われるが、それに参加するのは主に若手の選手であり、全員ではない。

 春季キャンプ初日の二月一日から、各球団、もちろん我らが北信越ロケッツも、始動した。

「どうですか? 選手皆さんの様子は」

 うちのキャンプ地は他球団の大半と一緒の沖縄で、僕も現地に行ってずっと目にしてはいるものの、大野さん、いや、もう大野監督と呼ぼう、彼女には違って見えたり、僕に対してとは異なった態度をされているかもしれないので、少し経ってから尋ねてみた。

「すっごく、よそよそしい。私は、まったく知られていなかったか、何年かに一度くらいしか会わない、親戚のおばさんって感じ」

 そう笑顔で答えてくれた。

「なるほど。わかりやすい回答、ありがとうございます」

 選手たちは戸惑っているのだろう。プレーを始めてから今日まで、野球に精通した男性監督のもとでしかやったことがなかったのに、それとは正反対の、野球未経験で女性の大野監督である。どのように振る舞えばいいのか、と。

 加えて、なんでそんな人が、ましてプロである、自分たちの指導者なんだ! と怒っている可能性も高い。不満を口にしたところでどうにかなるわけではないから黙っているだけで。

 僕はそのように解釈したのだけれども、混乱しているとか、憤っているなんてレベルではなかったのだ。前回述べたように、彼らは、球団が補強しなかったりと勝とうとする意欲がまったく感じられず不快な反面、おかげでクビにならないなど恩恵を受けているという、ジレンマの環境に何年間も置かれていたことで、屈折していると言っていい不安定な心の状態は相当深刻だったのである。

 とにかく驚くほど覇気のない練習の姿勢に、取材でやってきたメディアや元選手の人たちから「ロケッツは開幕前にチームが崩壊するんじゃないか?」といった言葉が出たくらいだったのだ。僕も、チームに元気がないのはわかっていたが、ここまでとはと思い、キャンプの前半はハラハラドキドキしっぱなしだった。

 しかし、終わる頃には、笑みがこぼれて、思わずこうつぶやいた。

「勝った」

 賭けに勝利した、そんな心境だったのである。

 選手たちの雰囲気が変わったことは、きちんと見ていればわかるはずだけれども、それを指摘するメディアや評論家は僕の知る限り一人もいなかった。おそらく、ロケッツは弱いのに今年もろくに補強をしていないから、「あそこが勝つようになるわけがない」という先入観が働いたためだろう。

 キャンプが終了に至ると、その日に藤野オーナーから電話がかかってきた。

「よお、どうだ? マスコミはどこもロケッツのことをボロクソ言ったり書いたりしてたけど、おもしれえチームになりそうか?」

「いえ、それは……」

 僕は言葉に詰まった。

「何だ。やっぱりそんなにすぐは、さすがに無理か」

「そうではなくて、オーナー、以前におっしゃいましたよね? 私自身は一生懸命優勝を目指してやってくれればいいのだと」

「……ああ、言ったな」

「面白いチームかどうかはわかりません。ですが、優勝も決して無理ではないようにはなったと思います」

「え? マジかよ?」

「はい」

 むろん虚勢を張ったのではない。

「さすがに『必ず優勝できます』とまでは口にできませんけれども、ペナントレースが始まるのを楽しみにしていてください」

「ほお~」

 オーナーが笑ったのがわかった。

「んじゃ、その言葉の通り、期待してるぞ」

「はい」

 僕もワクワクする。何年もの間、他のチームに散々辛酸をなめさせられてきたロケッツの、革命的な逆襲劇がこれから始まる——。


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