WBC編② 騒動
茂木は、アマチュア時代にもそういう傾向があったが、去年、とりわけガタイのいいメジャーリーガーたちとプレーするにあたって、体の小ささをネックとみられたために、打つほうでは大活躍したものの、試合に出場した三分の二は本来のキャッチャーではなく指名打者だったのだ。
しかし、本人には「自分は捕手だ」というこだわりがある。ゆえに今回のWBCで、体の大きな外国人選手たちを相手にキャッチャーをしっかりやれるんだと見せることで、所属している球団でもマスクを被らせてもらえるようにと意気込んでいたのが、味方の阿久津監督に足をすくわれる格好となったのである。
そして、一部のマスコミが、実際はそんなことは全然ないのに、「阿久津VS茂木」と、二人が深刻な対立状態にあるというふうに報じやがったのだが、日本の優勝を望んでいる世間の人々が彼らに対して「代表メンバーの足を引っ張るな!」と怒ったために、不協和音の火の粉を振り払おうと動いていた桜井さんに目をつけ、「ゼネラルマネージャーとして、一丸となるチームをつくる役割を果たせていない」と責任を転嫁した。
これは本当にひどいと思う。言いがかりもいいところだ。なにせ、監督を阿久津さんに決めたのは日本のプロ野球機構であって桜井さんではなく、日本のプレイヤーで最も力量がある茂木を選ばないなんて考えられないことであり、他の誰がGMをやったって避けられなかった事態なのだから。
それでも桜井さんは、反論したところで丸く収まるわけではないしということだろう、口を開けば「すみません」と、マスコミ、そしてさらに奥にいる日本全国の人たちに、申し訳ないという態度をとり続けている。
とにかく、その後しばらくして始まった、大会に備えて調整する目的の対外試合で、コメント通りに阿久津監督は、キャッチャーは西園寺さんに任せ、茂木はDHで起用しているのだ。
茂木はプロ、それも一流のなかの一流だから、きちんとした振る舞いをしてはいる。しかし、やはりどことなく気持ちが沈んでいると感じられ、こんな状態ではあいつのみならず日本のチームも大丈夫かと不安になってしまう。
加えて、あの人も——。
俺たちに帯同している桜井GMの、その顔の表情ときたら、画に描いたように、チームの心配とバッシングされてのダメージが表れて、ゆがみきっているのである。
試合前に練習していた俺だが、見ていられなくて、思わずそばに近づこうとしたところ、「いいです、いいです」というリアクションをしたので、またトレーニングに取りかかった。
でも、ほんと、日本のチーム以上にあなたの心配をしちゃいますよ、桜井さん!




