ロケッツの反撃
第三戦、僕は町田投手を先発で起用した。迷いに迷ったけれども、彼の投げたいという気持ちを尊重した格好だ。
その町田投手は、ルーキーの年のメンタルに不安があったのはいつのことだったのかと思わせるほど、頼もしい投球を披露した。強力かつ前の二戦で乗っていたスピアーズ打線にまったく仕事をさせず、九十球程度を目安にしていて任せることになった六イニングで、打たれたヒットはわずかに一本、四球は与えず、当然失点もなく、ランナーを二塁にすら進めさせなかったのである。
日本シリーズの大舞台、しかも王者相手に〇勝二敗という逆境で、ひじに不安を抱えながら、ここまでやるなんて、なんとすごい男か。まさにエースだ。
一方、元気のなかったロケッツの打撃陣は、五回にコード選手が特大のソロホームランを放ってチームを活気づけると、八回にはとりわけ打ってほしい主役の存在の茂木選手がツーランをかっ飛ばし、三対〇で勝利を収めることができた。
悩み苦しんで、町田投手に投げさせた甲斐があった。もちろん、僕が偉いわけでもなんでもなく、彼の力がすべてだけれども。
町田投手のピッチングで完全に息を吹き返した我がチームは、次の第四戦、二回に飛びだした四番ジール、五番の馬場、両選手による連続ホームランを皮切りに、五回には打者一巡で四点を奪い、その後さらに三点を加えて、全部で九得点。
投げては、こちらも町田投手に魂を注入されたというくらいエネルギッシュな素晴らしい投球をした最上投手が、七回を一失点にまとめ、圧勝と言える結果で終わった。
これで、二勝二敗のタイになるとともに、ホームに戻れることが確定となったのだった。
続く第五戦、僕はタフなウォッシュバーン投手に、短い中四日で、マウンドを託した。
その期待に、初戦は五回を五失点と本来の力からすると物足りない出来だった彼は、見事に応えてくれた。六回と三分の二を二失点に抑え、点を取られた回以外はほとんどランナーを許さず、こちらの攻撃にリズムを作りだしてくれたのだ。
それで、二回に山神選手のタイムリーで先制すると、この試合はホームランは出ない代わりにヒットで効果的に得点を積み上げて、六対二で勝ち、なんと誰もが想像しなかったロケッツの敵地での三連勝で、日本一に王手をかけることができたのである。
しかし、これまでとは反対に、勢いに乗ったロケッツが六戦目で優勝に到達するとの人々の予想を覆し、底力のあるスピアーズは猛打が復活した。
うちの先発の中原投手を早々に打ち崩すと、先発全員の十六安打で十一点を奪い、投げるほうでは矢代投手が初戦に続き抜群のピッチングをして、ロケッツはゴロアウトの間にランナーが還る一点しか取れず、大敗を喫する結果となったのだ。
三勝三敗で、次に勝ったほうが日本一だ。スピアーズの先発は内村投手で間違いない。
「お願いします、監督。第七戦の先発、僕にいかせてください!」
またも町田投手が僕に直訴してきた。
確かに、彼なら、というより、彼でなければ勝機は低い。
しかし、ひじの痛みは消えていない。彼はもう「痛い」とは一切言わないが、「治った」とも口にしていないので、状態に変化がないのは明らかだ。
「町田に任せましょう」
あと一試合ということもあってだろう、高岡さんと相川さんは口を揃えた。
……。
どうするか考えた僕は、再び悩み抜いたすえに決断を下して、第七戦を迎えたのだった。




