日本シリーズ開幕
神戸スピアーズには、矢代投手と内村投手いう、左投げと右投げの先発の柱のピッチャーがいる。その二枚看板の矢代投手のほうを、第一戦に持ってきた。
対する我らがロケッツのマウンドに、僕はウォッシュバーン投手を送り込んだ。
初戦はうちの球場でのゲームである。つまり、二、六、七戦もこちらがホームで、三、四、五戦目が相手の神戸での試合だ。
迎えた第一戦は、破壊力抜群のスピアーズ打線に、ウォッシュバーン投手が三イニング目に捕まって、三点を献上。五回にも二点を奪われた。彼の五回で五失点という良くない成績は、シーズン中はあったか思いだせないくらいである。
かたや、今年十四勝の矢代投手は見事な投球を初めから続けて、交代する七回終了までのすべてのイニングを零点に抑えた。
結果、〇対六と、向こうの完勝に終わったのだった。
翌日の第二戦、向こうの先発は予想通り、右のエースの内村投手。そして、こちらは中原投手を指名した。
この試合も、四回までは〇対〇で進行したものの、五回にスピアーズ打線に火がついて、大量四点を先取された。
ロケッツは、六回に森崎選手のタイムリーでようやく今シリーズ初となる得点を挙げたが、スピアーズに八回に三点を加えられて、万事休す。一対七という、またしても点差の開いたスコアで、ほとんど良いところなくホームでの連敗となってしまったのであった。
くそー。
各メディアや野球関係者たち、それに両チームのファンといった世間一般の人々も、本拠地の神戸でスピアーズが四勝に到達して胴上げとなるだろうというムードに包まれた。
本当にあっちは強い。僕だって外部の立場であれば、スピアーズが日本一になるのはもう時間の問題で、ロケッツがひっくり返せるはずはないと考えたに違いない。
「監督」
第二戦が終了してまもなく、町田投手が僕のもとにやってきた。
「第三戦、いけます。先発で投げさせてください」
「う……」
僕は返事に詰まった。
「僕は今年、二十八歳になりました。そこまで若くはないですし、現役生活はいつ終わるとも限りません。せっかくの日本シリーズで投げられるチャンスを棒に振りたくありません。どうか、お願いします!」
クールな印象の彼が、そう声を大にして訴えたのは、エースの責任感よりも、言葉通り、一人のピッチャーとして日本シリーズの大舞台で投げたいからではないだろうか。
……。
「お気持ちはわかりました。検討しますので、準備はしておいてください」
「はい」
直後に相談した、投手出身の高岡さんや相川さんは、登板させて構わないとのことだった。
うーん……。
でもな……。
そうして散々悩んで、僕は腹を決め、神戸での第三戦の日がやってきたのだった。




