ファイナルステージの戦い
プレーオフのファイナルステージの第一戦、僕は予定通り先発ピッチャーに町田投手を指名した。
前回述べたように、アローズはエースではなく有利な条件ゆえ、逆にその初戦で負けたら痛いので、別のピッチャーに託すことも十分あり得たわけであり、勝負に出たという見方もできるだろう。
それは、もう大丈夫だと思うが町田投手の精神面を考慮して、へたにいじくらず、本人が任されるに違いないと思い準備しているであろう試合に投げてもらうことにしたのが大きな理由だ。そうすれば必ず素晴らしい投球をしてくれるという信頼ももちろんある。
ただし、シーズン中は基本的に完投をしてもらうスタンスで、簡単に交代は行わなかったけれども、今日は五回まででお役御免とし、プレーオフは試合数が少ないので余ってしまう本来は先発の一角の飯塚投手を六回からマウンドに送った。
短期決戦では良いピッチャーをどんどんつぎ込むべしという鉄則に従ったのもあるし、もしこのファイナルステージがもつれる展開になった場合に、また町田投手に投げてもらうときのため、負担をかけない意図があったのだ。
試合は、二対一と僅差で七回まで進んでハラハラしたが、八回に去年のプレーオフも活躍した馬場選手が、またしても値千金となるスリーランホームランを放って、五対一で勝利することができた。
彼は、大舞台に強く、華のあるスター選手の風格が出てきた。以前あまり好かれていなかったなんて信じられないくらい、今ではファンの人気も上位だ。
今後も期待してますよ!
翌日の第二戦は、通常ならば、中原、最上、ウォッシュバーンの、力のあるいずれかの投手が先発になるところを、僕はサウスポーの佐藤投手を起用した。
ペナントレースで、彼はアローズとの相性が良く、特に西園寺選手はほぼ完璧に抑えたのだ。西園寺選手は一戦目でヒットを打てなかったので、このゲームも無安打にできれば、眠らせたままの状態で最後までいける可能性が高くなると踏んだのである。
その狙いは的中し、佐藤投手は見事なピッチングで強力なアローズ打線からわずか一点しか取られず、西園寺選手も警戒してフォアボールを二回与えたもののヒットは許さなかった。
攻撃陣も要所で得点を奪い、四対一のスコアで勝って、王手をかけることに成功したのだった。
続く第三戦、瀬戸際のアローズは、大黒柱の鷲本投手が先発ピッチャーでマウンドに登った。
対するロケッツは、今年十二勝のウォッシュバーン投手だ。
両者ともに並の能力ではないだけあって、期待にたがわぬ素晴らしいピッチングを披露し、〇対〇で試合は推移した。
こちらのウォッシュバーン投手は途中からリリーフと代わったが、鷲本投手はこの試合のすべてを託されたのか一人で投げ続けて、うちの攻撃である九回裏もベンチから出てきた。
先頭バッターがフォアボールで出塁となり、一番の茂木選手に回った。
「ん?」
僕は茂木選手のすさまじい集中力を感じ取った。ほとんど素人の僕でもわかったほどだから、本当にすごかったのだ。まるで触れたらヤケドしてしまうオーラをまとっているようだった。
これは絶対に打ってくれる——そう思った通りに、直後に茂木選手が放った打球はスタンドの奥深くに突き刺さり、サヨナラホームランという劇的なかたちによる、負けなしのストレートでのプレーオフ勝ち抜けとなったのだった。




