打撃の強化策
長谷さんの打撃コーチの職を解くといっても、それは「一軍の」である。
僕は、彼を二軍のコーチにして、代わりに二軍で打撃コーチをやってもらっていた山口寿信さんを一軍へと、配置転換を行ったのだ。
山口さんは、すでに述べたように今シーズンから新たに加わってもらったコーチのうちの一人で、彼の指導によって二軍のバッターたちは力をつけてきており、一軍に昇格して結果を出し始めている選手もちらほらいる。ゆえに、一軍にずっといる野手たちも同様に打撃面のレベルアップが期待できる。
かたや降格となる長谷さんは、「打つほうがいまいちなのは俺だけが悪いんじゃないぞ」と彼の性格的にも怒られてしまいそうだけれども、実は狙いがあってのことで、ちゃんと本人には伝えて納得してくれたので問題はない。
その狙いとは、「馬場選手を飛躍させてほしい」である。ホームランバッターだった長谷さんに、同じく長打力が魅力の彼をつきっきりというくらいに見て、大器に育ててもらいたい。それができれば、ロケッツの打線は一気に破壊力が増す。
プラス、この配置転換は、成績が格別ひどくはないのに「フロントはそこまでするのか」ということで、選手たちに危機感を持たせるだろう。
つまり、新たなコーチによる打撃力の向上、マンツーマンに近い指導での馬場選手の成長、そしてチーム全体の気を引き締めるという、三つの効果を期待したのである。
そして、成功だったと断言できるほどの成果が表れた。
まずはバッターたちに当たりが出てきて得点力が上がり、勝ち試合が増えた。
馬場選手のほうもファームでの成績が良くなって、一軍への昇格を果たし、以前にも一軍でプレーした経験はあったけれどもヒットは打てていなかったので、プロ初安打を記録すると、七番でのスタメン起用となったゲームにおいては、プロ初のホームランも飛びだしたのだ。
その瞬間を目にした僕は、思わずバンザイをした。
こうして投打ともに充実の状態になったロケッツは、およそ一カ月で五連勝以上を三度するなど、さらに勝利を重ねて、首位の東京アローズに次ぐ位置にいた北九州ドルフィンズを追い抜いて、二位まで順位を上げたのだった。
「昨日の試合も、選手たち、素晴らしかったですね! このままいきましょう」
「うん!」
僕は大野監督と微笑み合った。




