テコ入れ
ピンチを見事に切り抜けたあの試合から、町田投手は力のある投球で無失点を続けて、中継ぎのエースと言える存在になった。
「先発に戻しましょうか?」
コーチからそう提案があったが、大野監督は首を横に振った。
「このままで、もっと自信をつけさせてあげたい。もちろん将来的には先発で投げてもらうことになるんでしょうけれど、今年に関しては最後までこのポジションでいきましょう」
結果、必要に感じていた中継ぎの柱が手に入った格好だ。
その代わりに、こちらも欲しかった計算できる先発投手は、ウォッシュバーンという外国人選手が埋めてくれた。右投げで、上背のある、パワーピッチャーだ。外国人のピッチャーでいうと他に、メンデスというサウスポーの投手も、速いストレートと多彩な変化球を駆使し、中継ぎでいい働きをしてくれている。
僕は外国人選手も選ぶ際に人間性を重視しているゆえに、人柄の良い彼らはチームメイトや日本のことなどをとても大切に思ってくれているのだが、こちらも彼らが活躍できるよう非常に丁寧に扱っている。
よく日本からメジャーリーグに移籍したピッチャーが、日本ほど質の良くないあっちのボールに苦労すると言われるけれども、向こうから日本のプロ野球にやってくる投手たちだって、品質は向上しても感覚が変わるので、投げにくさはあるというし、マウンドの硬さや傾斜なども日米で異なっていて、適応するのは大変なのだ。
だから、来日一年目の外国人のピッチャーたちには、通常の開幕戦という期日を設けずに、あらゆる面で慣れて「いける」となったタイミングで一軍で投げてもらうようにしたのである。そうした経過により、開幕からある程度の試合をこなした今の時期に出てきたのがウォッシュバーンやメンデス投手らであるというわけだ。
このようにピッチャー陣はコマが揃いつつある一方で、打撃陣はうまくいっていない。
去年は、とりわけ序盤戦は打つほうがすごく良かったのに比べ、今年はそこまでではなかったのだが、最近はさっぱりといった具合で低調なのだ。「打線は水物」という言葉があるように、良かったり悪かったりがあって仕方がないとはいえ、ちょっと深刻なレベルなのである。
前の年に頭角を現した選手が多いだけに、二年目のジンクス的なものもあれば、他球団に研究されたのも大きいに違いない。
それでチームは勝ったり負けたりで、なかなか乗っていけないでいる。せっかく投手は皆状態が上がっているのだし、もたもたしていると優勝を目指す雰囲気がしぼんできてしまいかねない。
「うーん」
僕は考えて、ある行動を起こすことにした。
それは——
打撃コーチの長谷さんから、その身分を剥奪するのである。




