就任一年目の結果
「ああ……」
僕は、肩を落として、ため息をついた。
名古屋エレファンツに勝って単独三位となった八月上旬から、ロケッツは敗戦が増えて、順位も下がっていった。
僕は甘かった。選手たちは頑張ったが、地力の差が出たというのか、優勝やプレーオフ進出を目指していたり、万年最下位だったロケッツを下回ったままシーズンを終えられないとおそらく思っていたりで、それまでより一層のエネルギーで襲いかかってくる相手チームに対して、うちは体力はつけてもペナントレース序盤から遮二無二プレーしてきた疲れが出てきたのもあったのだろう、ことごとく接戦を落としたのだ。
そして最後は五連敗で締めくくることになり、確定した順位は、三年連続の最下位こそ免れたものの、その一番下位の六位となった北九州ドルフィンズとわずか二ゲーム差の、五位という結果だった。
何よりも痛かったのは、主力となったサードの森崎選手が八月の半ばにケガで離脱し、それが大きく響いたのだけれども、かたや静岡ジェッツの牛込選手は、フリーエージェントで加入して当初はレギュラーだったプレイヤーが不振に陥り、代わって出場機会を得ると打ちまくって、ほぼ後半戦だけでの二十五本塁打を記録したのだ。もしトレードで彼を獲得していたら、思惑通りにロケッツはプレーオフに進出し、日本一にだってなれたかもしれなかったのである。
というわけで、今季の悪い成績の原因は、トレードに反対した大野監督と、その彼女以上に、判断を下した僕にあるのは誰もが認めるところなのだ。
「責任は完全に私にあります。辞めろと言われれば、素直に従います」
シーズン終盤、五位となるのが決まった時点で、藤野オーナーにそう伝えた。かっこつけたのではなく、僕は本気で優勝を狙っていたし、できると考えていた。それで五位では話にならない。なので、本気で辞任する意思はあった。
「賛成ですね。彼はほとんど補強をしなかった。ゼネラルマネージャーなのにそれをやらないのであれば、任務を放棄したも同然ですよ」
同席している三浦社長がオーナーに言った。やはり彼は僕に良い感情を抱いていなかったようである。
「そうだな。俺にしても、マスコミの前であんな大風呂敷を広げた発言をしておいて、五位に終わっておきながらお前を続投させたら、信用をなくして会社の経営にも影響するかもしれないからな」
「はい」
僕は、「確かに」と納得して、うなずいた。
迎えた今シーズンの最終試合の、ホームでの一戦。五連敗で終了したと述べたようにこのゲームも負けて、辞任するつもりの僕は、今年もまた下位に沈んで落胆したであろうファンの皆さんに「責任は自分にある」と謝罪して頭を下げたい気持ちだったし、大野監督が僕の代わりに野次を浴びてしまうのではととても心配だった。
ところが——。
「純子! 純子! 純子!」
なんと、ロケッツの応援席からそのように大きなコールが起こったのだ。
「素人だったのに、よくやったぞ!」
「補強に頼らないで、今いる選手たちで頑張って、あんたは立派だ!」
そういった声が耳に届いてきた。
やっぱり。他から優秀な選手を獲ってくるよりも、愛着がある生え抜きのプレイヤーを育てたうえで強くなってほしいと、ファンは思うものなのだ。五位とはいえ、今年はそれがずいぶん実現できたから、喜んでもらえたに違いない。
その最終戦の翌日に、オーナーから連絡を受けた。
「聞いたぞ、昨日のファンからの声援のこと」
「ああ、はい」
「だから、決まりだろ。ってか、初めからお前をクビにする気なんかなかったんだ。とはいえ、優勝を狙えるって言ってたのに五位だったのはやっぱりちょっと不満だったからよ。脅かしたってわけだ」
「え。それじゃあ……」
「もちろん、続投だ。大野監督もな。面白かったぞ、今年の戦いぶりは。ただ、来年は優勝だからな」
……。
「はい!」
よーし。ファンの人たちも、藤野オーナーも、来季こそは喜ばせてみせるぞ!




