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【第一部完結】推しヒロインは俺が救う  作者: 白永央はひな
《第10章》エルドラド王国王位継承編

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第93話 君を逃がさない――

《バビロン帝国工作員視点》

 大規模模擬戦の前夜遅く――

 私たち第七工作隊は、長期の潜入任務を終えて深夜に撤退行動へ移っている。

 近くの森に隠してあった馬車に乗って、急ぎバビロン帝国国境を目指していた。


「上手く行きますかね?」


 メイド役だった部下が話しかけてくる。因みに文官役の部下は御者をしていた。


「さあね?出来ることはしたわ。あとはあの男の頑張り次第ね……」


 サマル・イスカ公爵は良い領主だった。自分たちの国に居てくれたら良かったと思えるような領主だった。


(……敵国の領主でなければ良かったのにね)


 メイド役の部下の顔色も良くなかった。長期潜入の弊害か、またはあの男の人徳か……。


「とにかく、私たちの任務は以上よ。……あとは別部隊に任せましょう」

「……はい……」


 しばらく走っていると――


 ガタガタガタッ!!!!


 急に馬車が傾き、そのままの勢いで馬車ごと横転してしまう。


「何ごとだっ!?」


 私たちは、咄嗟に受け身を取ったので問題なかったが、御者の反応は無い。


「大丈夫ですか?」

「平気だ、貴様は?」

「大丈夫です」

「よし、気を抜くなよ?」

「ハッ!」


 警戒しつつ外へ出た私たちが見たものは――

 首の無い、御者と馬の死体だった。


(なんだ、これは……)


「ヒイッ!?」


 部下の悲鳴に振り向くと、そこには静かに立つ全身真っ黒な銀髪の少女が居た。


「なんだ貴様は!? 私たちが帝国の大使だと知っての狼藉か!?」


 緊急時に使用する肩書きで、相手の反応を見てみると――


「大使?……工作員の間違いでしょ?」


 銀髪の少女は首を傾けて答える。


(っ!? 絶対に生きて帰すわけには行かないわね!!)


 私は部下と目配せをして、戦闘態勢を執る。


「あっ! ちゃんと私以外の子たちも、警戒して下さいね?」


 そう言った少女の瞳が赤く輝く――


 それに呼応したかのように、少女の周り、いや、私たちを囲うように、たくさんの赤い瞳が輝いていた。


「なっ………」


 あんな優しい男を騙した応報なのか――


 もう私たちには、絶望しかなかったようだ……。



◇ ◇ ◇

《リリス視点》

 大規模模擬戦の夜――


 トントン! トントン!


「…………」


 わたしは窓を叩くカラスを、黙って窓を開けて招き入れた。

 カラスは机に止まり話し出す。


「プランAは失敗よ。今回は待機、次のプランBに備えなさい」


(っ!……良かった。……本当に良かった)


「なに安心したような顔してんのよ? 裏切りでも考えているの?」

「っ!? ち、違います……、単純に、戦うのは怖いですから……」


 カラスなのに器用に舌打ちをした。


「チッ! 本当に陰気臭い子よね? 本当にあたしの妹なの? また下ばっかり向いて! ちゃんとこちらを向いて話せないのかしらね?」


 その後もいろいろとパメラ姉様に言われたけど、正直わたしの気持ちは安心で満たされていて聞いていなかった。


(……時間ができた。……でも、ずっとじゃない。……あと数か月で――)


「ハァ!! もういいわ! プランBまで気取られないように過ごしなさいな。……最後の自由時間かもしれないからね……」


 それだけ言って、姉様のカラスは飛んでいった。


(わたしに残された時間は少ない。それまでにあの人を――死神様を探しだす)


 わたしは改めて、自身を奮い立たせた――



◇ ◇ ◇

《ミカエラ視点》

 今日は、ミシェル兄さんの王太子の儀が行われる日だ。

 城下街にはたくさんの国民が集まっており、ミシェル兄さんが現れるのを今か今かと待っている状態だ。

 そして――


「えええええ!? ミシェルさんは王子様!? これから王太子!? いつか王様!!!?」


 近衛兵に連れて来られたパニスさんは、とても良いリアクションをしてくれていた。


「え!? 僕がミシェルさんの婚約者!? 未来の王妃様!!!? 僕、パン屋の娘だよおおお!!!!」


 目をグルグルとさせながら、「頑張る!頑張れる!?」とコロコロと変わる表情が楽しそうな人だなと感じた。

 実にテンプレな反応に、私も未来の姉さんが好きになってしまった。


「ミシェル兄さん、面白い人を見つけましたね?」

「だろう? パニスは本当に元気で、笑顔が素敵で、元気なんだよっ!」

(元気を二回言う位にそこがラブポイントだったのですね? ミシェル兄さんも幸せそうで、何よりです!)


「それよりミカエラ、本当にやるのかい? あの話のやつを……」

「もちろんです! 私だって恋に燃えてるんですよ?」


 私の返答に、ミシェル兄さんは苦笑で返す。


「父様やマイケルは放心状態だけど、大丈夫かな?」

「きっと大丈夫ですよ!」


 私の発案に父さんは「ミカエラちゃんが、ミカエラちゃんが……」と、私の名前を連呼して遠くを見ている。マイケル兄さんは「あの小さな天使が……」と、呆然としたまま固まっていた。


「まったくこの人たちはっ! ミカエラ、存分にやりなさい! 女はね、行く時は行かなくてはダメなんだから!」

「はいっ! ありがとうございます、母様!」


 体調の良くなった母様に相談したら、父さんたちの説得にも強力してくれた。


(やっぱり母様が、我が家では最強だな!)


 さあ、舞台は整った。

 待っていてっ! アイン――



◇ ◇ ◇

 王城のバルコニーから城下を見下ろし、国王である父さんが魔導拡声器で国民に語りかける――


「皆のもの、よく集まってくれた! 今日は告知してあった通り、王太子の儀を執り行う!」


 ワアアアアアア!!!! 城下街が沸き立つ。


 父さんの姿は魔導映像機で城下町中に映されていた。


(最近できたというこの魔導具……、すごいな……)


「今回、大規模模擬戦で華々しい勝利を手にした第一王子、ミシェルを王太子とすることに決定した!! 皆のもの! 次代の王である王太子、ミシェルを称えてくれ!!」


 大歓声の中、ミシェル兄さんは父さんの横に並び立つ。兄さんは手を挙げて国民の大歓声へ答えていた。


「みんなっ! 知った顔であると思うが改めて、ミシェル・エルドラドだ。本日をもって正式に王太子となった!! 賢王である父にはまだ及ばぬ若輩者ではあるが、全力でこの国を、国の民を守っていきたいと思っている!! どうか、私のことを支えて欲しい!!」


 ワアアアアアア!!!! 大歓声が響きわたる。


 ミシェル兄さんは、そのまま大きく手を広げ宣言した。


「聞いて欲しい!! 私の王太子発表の他に、みんなに報告したいことがある!!」


 恥ずかしがりつつも、おずおずとメイド部隊にメイクアップされたパニスさんが、ミシェル兄さんの隣に立った。


「紹介しようっ!! 私の婚約者っ!! パニスだ!! 未来の王妃だ、みんなよろしく頼む!!」


 ウオオオオ!!!! キャアアア!!!! 


 大歓声と、悲鳴が混ざったような声が響いた。


(うむ、兄さん女性には人気あったからな……)


 二人は仲睦まじく国民へ手を振って歓声に応えていた。


 そして、私の番が来た――


 私はズンズンとバルコニーの中心まで行き、ミシェル兄さんから拡声器マイクを受け渡される。


「頑張りなさい」

「ありがとう、兄さん」


 バルコニーの下の広場にいるアインを見つける。


「第一王女、聖騎士にして勇者パーティーの盾役を任されている、ミカエラ・エルドラドだ!!」


 ワアアアアアア!!!! 再び大歓声が響きわたる。


「今日は私からも発表がある! いいや、あります!!」


 私はアインを指さす――


 私のサインが見えたようで、彼は自身を指さして首を傾けた。


「私は、勇者、アイン・アマテと、正式に婚約することになりました!!」


「「「「っ!!!?」」」」


「私は勇者アインと幸せになります!! 国民のみなさん! 私たちを祝福して下さいね?」


 そう言って私はアインへ投げキッスと爆弾発言を投下した――


「「「「おめでとおおおお!!!!」」」」


 ワアアアアアア!!!! と大歓声の中で困惑してそうなアインを想像して私は――


「アインが口説いてこないから――こうなったんだよ?」


 ――そんな呟きと小悪魔的な笑みで、私はアインを見下ろしていた。


《第10章》エルドラド王国王位継承編完となります。

ここまで『推しヒロインは俺が救う』を読んでいただき、本当にありがとうございます!

 この章はミカエラをメインヒロインに展開しましたが、いかがだったでしょうか? 作者的には、ミカエラさん実は頭の中ではこんなこと考えていたんかい!?って思って頂けたら嬉しいなと書いていました。そう思って頂けたら作者の勝ちということで(^▽^)/

これからも『推ヒロ』を応援よろしくお願いします!

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