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【第一部完結】推しヒロインは俺が救う  作者: 白永央はひな
《第10章》エルドラド王国王位継承編

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第87話 初めての拒絶

 今日は今期限定の救済アイテムを入手するため、エルドラド王国の首都ドラドにある店に向かっていた。


「ケイ君とデートさね〜」


 ナミエも一緒に……。


(昨日アゼルと二人で図書館に出かけたから、拗ねたんだよなぁ……)


「っ!? なんか言ったさ!?」

「い、言ってないし!!」


 ナミエが疑わしそうに俺を見てくる。


(……俺の周りの女子は、心を読める子ばかりなのか?)


「まったくケイ君は、そんな事ばっかり考えてるから、みんなに言われるんだよ?」


 口を尖らせつつ、俺の腕を取ってくっ付いてくるナミエ。


(腕が幸せで温かいな〜。まだ暑いのに、全然不快じゃないぜ……。これが、勝ち組の熱かな?)


「ハァ、またしょーもないことを、考えてるっしょ?」

「えっ!?」

(何で分かるの!?)

「アハハ〜、それは秘密さね〜」


 笑顔で口もとに指を当て、ウインクをするナミエが可愛くて――


(まあ、いっか!)


 深く考えないことにした。



◇ ◇ ◇

 目的地である【拝み屋本舗】に到着した。


「……なんか、イメージと違ったさ〜」

「……俺も、予想外」


 拝み屋本舗は魔導電球をふんだん使った看板を掲げていて、入口は閉まっているのに中の軽快な音楽が外に漏れていた。


(前世の、ゲームセンターみたいじゃん)


「とりあえず、入ろうか?」

「えっ!? マジ? うぅ、怖いから側に居てね?」

「っ!! もちろんさ!!」

「アハハ……、ケイ君、本当に恋人になってからの対応が前と違いすぎて、ウケる!」

「ウケるって!? 失礼な! 俺はただ、ナミエが可愛くて、輝いて仕方がないから、こんな反応しちゃうだけだから!!」

「っ〜〜〜!! うみゅ〜、マジで褒めすぎるのやめてっ! めっちゃ恥ずいからっ!!」


 真っ赤になって恥ずかしがる彼女が可愛くて、また褒めそうになってしまうが堪えた。


「よし、行こう」

「うみゅ……」


 予想通り店内はうるさかった。カウンターに行き、大声で目当ての人物が居るかを確認する。


「すいませ〜ん!! イタコさんは、居ますかっ!?」

『いらっしゃいませぇ〜!! イタコさんっ! 入りますっ!!』


 店員さんが魔導拡声器で返答すると――


「「「「喜んでっ!!!!」」」」


「なに、なにっ!?」


 店中の店員さんが反応して、その重なった声に驚くナミエ。


「こちらで、ございます」


 そして、目の前に居た店員さんが俺たちをイタコさんの部屋まで案内してくれた。

 一つの個室へ入ると、そこは静かで先ほどまでの喧騒が嘘だったような空間だった。


「ヒェッ、ヒェッ、ヒェッ。久しぶりの客さね。で? 誰を呪い殺したいんだい?」


 部屋の奥に座っていた、フードを深く被った呪術師風の老婆が話しかけてくる。


(っぽい! めっちゃ、っぽい!!)


 俺たちは、イタコ婆さんの居る机の正面にある椅子へ座り返答した。


「呪い返し人形が欲しい」

「チッ! そっち側かい、つまらないね!!」

「えぇ〜、舌打ちしたさぁ〜」

「黙りな小娘がっ!? このギャルっぽい小娘に誑かされて狂った男が、自分の今カノを呪い殺しに来たと思ったのにさ!!」


「「ひどっ!?」」


 ナミエは「あーし、そんなにギャルっぽくないもん」と拗ねていたが、正直そこ!?と思った。


「で? ランクは?」


 イタコ婆さんは、心底面倒くさそうに、しかし瞳は俺たちを試すように聞いてくる。


「……魔王級を、頼む」


 イタコ婆さんは目を見開いた。


「……本気かい?」


「ああ。俺は奴の呪法を解呪したいんだ」

「……アタシの人形だけじゃ、無理だよ?」


「知ってる。だから御守りと古書、それに玉も集める予定だ」

「っ!?……あんた、何者だい?」


(また……、このセリフを言えるとは、僥倖!!)


 俺は自分の片手で顔を覆い、瞳を老婆に覗かせる――


「俺はっ! 陰から魔王を追いつめる者っ!!」

「なっ!?」


 驚くイタコ婆さん。しかし、隣のナミエは冷やかな目で俺を見ていた……。


(ナミエさん、そんな目で見ないで、お願い……)


 イタコ婆さんは「全てが揃ったら、また来な」とだけ言った。

 俺たちは再来を約束して、店を後にしたのだった。ナミエは俺の腕を引っ張り、上目遣いで言う。


「ケイ君、あーし、ここにはもう来たくないよ?」


(ですよね〜〜)


 デートスポットとしては最低だったので、帰る前に二人でランチをしてから帰還した。



◇ ◇ ◇

 二学期が始まって一週間が経つ頃、俺はオーナー部屋でエンジュから報告を受けていた。


「ダーク様、リリス様関連の情報が分析し終えましたので報告を……」

「頼む……」

(ん? 今日のエンジュは、どこか元気がない? いつもみたいに忍者ムーブしないし……)


「はっ! ダーク様の読み通り、彼女の探し人はダーク様、漆黒の死神のようです」

(……やはりか)


「探しながら時々“時間がない“と呟くそうで、焦った様子が伺えました」

(……時間が、ないか)


 俺の中で最悪なパターン。それは救済アイテムが揃う前に彼女が行動を起こしてしまうこと。


「リリス様の部屋に時折、カラスが入る様子がありました。直近だと、昨夜です。……リリス様以外の女の声が聞こえたそうですが、申し訳ありません、内容までは……」

「そうか……」

(第二皇女の陰湿パメラか。ユニークジョブの『鳥使い』だもんな……)


「ただ……、カラスが出て行った後に『いいえ、まだ、分からない』と呟いていたようです」

「っ!……本当か?」

「……はい」


 俺は思わずガッツポーズをしてしまった。


(それならば、最悪の事態は避けられそうだ……)


 恐らく彼女への指令は、内戦が始まったら武力介入せよって感じだろう。


「ダーク様?」

「ああ、ありがとう。それならば、暫くは現状維持で、監視継続で良さそうだ」

「了解です……」

「並行して、イスカ公爵領に居るバビロン帝国工作員の洗い出しと、抹消準備も頼む。先走るなよ?」

「はっ!」


 リリスは取り敢えずは大丈夫そうだ。

 今はそれより――


「エンジュ、なんか元気がないんじゃないか?」


「……え?」


 急に振られて驚くエンジュ。


 俺は特に考えることなく、彼女が元気になればと思って頭を撫でようとするが――


「っ〜〜〜!!!!」


 エンジュが高速で後退りしてしまい、俺の伸ばした手だけが寂しく残っていた。


「し、し、し、失礼します!!!!」


 そのままエンジュはシュッと消えてしまった。


「えぇぇぇ…………」


 出会ってから初めてエンジュに拒絶された俺は、最近で一番の衝撃を受けていた……。



◇ ◇ ◇

《ハンブラス視点》

 俺はバビロン帝国城の執務室で、協力者と話していた。


「この薬、効きが良いようだ。俺もお前からの提案が、一考の価値があると思えたぞ?」

「ありがとうございます」


 協力者から提供された薬、感情増幅剤を使用して今回のエルドラド王国の王位継承問題を勃発させることに成功した。


(イスカ公爵が、傷持ちで良かったぜ)


「では、あの件も……」

「ああ。このまま内戦になった場合には、俺たちバビロン帝国がエルドラド王国を落とすぜ?」

「おお……、さすが武王と名高いハンブラス様」

「世辞はいい、人族の覇権を取りたいだけだぜ? 俺はよっ!」


 その野望のために、俺はこんな奴と組んでいるんだからよ……、魔族とよ――


「では約束通りに、北や西側が我々。南や東は帝国ということで?」

「ああ、問題ねーよ」

「ホホホ、ありがとうございます」

「お前らこそ、忘れんなよ? エルドラドを潰したら、お互い不可侵だぜ?」

「もちろんですよ……、ハンブラス様」


(魔族にとっても、エルドラド王国は脅威なのかね? 若しくは、今世の魔王が慎重なんだか……)


「では、後日改めて調印を……」

「ああ、良いぜ」


 奴は席を立ち、去ろうとして途中で思い出したように戻ってくる。


「どうした?」

「良かったら、これを……」


 そう言って魔族は小瓶を机に置く。


「これはなんだ?」

「身体強化薬で、ございます。まだ改良中の最新版なのですが、試しに使用して頂けたらと……」

(怪しい――)


「因みに、副作用は死です。タイミングを間違えて使わないようにお願いしますね?」

「はあ? んなもん使えねーじゃねーか!?」


「試供品ですので、死刑囚にでも一度使ってみてください。……もしも、ご入用になりましたら用意されて頂きますから」


 そう告げて帰った魔族。


 次に奴が来た時、俺は身体強化薬を大量に発注した――


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