表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【第一部完結】推しヒロインは俺が救う  作者: 白永央はひな
《第10章》エルドラド王国王位継承編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

84/88

第83話 ジパン最高!

《アイン視点》

 夏休みに入り、僕とラフィ、そしてアーキの三人で新都ジパンへ帰省していた。

 ウリエやセラフが一緒に来たいと言っていたが、各々へ帰省依頼が来ていて難しく、今回は三人だけの旅となった。


 出発前の一幕で――


「あー!! あたいも一緒に行きたかった!! 二人は、抜けがけとかしないでよ!?」

「ひどっ!? 私たちは普通に帰省するだけなんだから、何もないわよ!……ちょっと、二人の時間とかを作るだけよ……」

「そういう所ですよぉ〜!! ラフィさんは絶対に、隙あらばな人じゃないですかぁ〜!!」

「……大丈夫。あたしがアインのお世話をしておくから、任せて欲しい」

「それって、絶対に大丈夫じゃないじゃん!? また隙を見てチューする気でしょ!?」

「……隙を見せる方が悪い……」

「あ、あ、アウトですうぅ〜〜!!」


 僕は見守ることしか出来なかった。


(……きっと、何を言っても、僕が責められる気がする)


 そして、神が現れた――


「ほらほら、アインが困ってしまうじゃないか? そんな言い争いする君たちを見て、アインはどう思うかな?」


 ミカエラの一言でハッとなる四人。

 ゆっくりと僕の方を見て、彼女たちは笑顔になった。


「まあね! あたいはアインを信じているからね? アイン! あたいのことを忘れないでよ?」


 上目遣いで僕の手を握るウリエ。


「も、もちろんだよ! ウリエを忘れるわけがないじゃないか!」

「フフフ、知ってた!」


 そう言ってウリエは、笑顔で僕の手を離す。


「次はわたしですぅ~。アインさん、少しの間ですが離ればなれになってしまいます。アインさんは、寂しくないですか?」


 僕の胸に飛び込み、寂しいと言うセラフ。


「寂しいよ。でもね、離れている時間もセラフのことを絶対に想っているからね?」


 胸の中にいる彼女の耳は赤くなっていて、照れているのがすぐに分かった。


「アインさんは、ずるいですぅ~!!」


 そう言って、僕を突き飛ばすセラフ。


(アハハ、ちょっとキザっぽかったな?)


 僕は真剣な眼差しで、みんなの顔を見る――


「みんな、それぞれの場所で役目を果たしてきて欲しい。僕たちは、いろいろな意味でも強くなる必要があるからね?」


 アゼルの処刑を止められなかった後悔が、僕の頭をよぎっていた。

 みんなも真剣な表情になって、理解して頷いてくれた。


「じゃあみんな、二学期にまた会おう!――」


 こうして僕たち三人は、新都ジパンへ旅立ったのだった。



◇ ◇ ◇


「これは……」

「思ってた以上に、復興が進んでるわね~」

「……すごい」


 新都ジパンは、まだ未完成ながらもすごく賑わっていて、復興中だとは思えないくらいに活気に満ちていた。


「えっと、これによると……」


 ジパン辺境伯様からラフィへ届いた手紙を確認する。


「あれね。あの一番大きな屋敷が、辺境伯邸みたいね?」

「おぉ……、前のより大きいね?」

「アーキは正直だなぁ。僕も思った!」

「ハァ、父さんは自分ではあんな浪費しないと思うけど……、まあ復興の旗印的な意味かもしれないわね?」

「おぉ……、なるほど」

「ぼ、僕もそっちだと、思ったよ!?」


「…………」

「………アイン、嘘ついてる気配」

「……ごめん、なさい……」


 ラフィとアーキに呆れられつつ、僕たちは辺境伯邸に到着した。


「おおっ! ラフィ! また綺麗になったんじゃないか!? 父さん、もう直視が出来ないレベルになってるぞっ!!」

「じゃあ見ないで」

「ゴフッ!」


 血を吐いて崩れ落ちるジパン様。


「アーキ、行きましょ?」

「うん。おじゃまします……」


 二人で先に行ってしまった。

 僕は側にしゃがみ込み、ジパン様に回復魔法を掛ける。


「大丈夫ですか? ジパン様……」

「あぁ、君はいつも優しいねアイン君……、さすが勇者だ……」


 回復魔法に感動の表情をするジパン様。


 だけど――

 急にジパン様の表情が消えた。


「――そういえば、噂で聞いたんだけど、ラフィちゃんに彼氏ができたとか?」


 ジパン様は仄暗くなった瞳で、僕をジーっと見つめる。


「君……、何か、知ってるかなぁ…………」


(ひいいいいい!! 本当に怖い!?)


 瞬間――


 バシンッ!!


「父さん、本当にやめてよ!! 手紙でも書いたでしょ!! 私はアインと結婚するって!!」


 戻ってきたラフィが、ジパン様の頭をスリッパで叩き、僕との結婚宣言をした――


「「えええええ!?」」


「なんでアインまで驚くのよ!? もうっ!知らない!!」


 そう言ってラフィは、走って行ってしまった。

 アーキはジト目で……。


「今のはアインが悪い。……早く追いかけるべき」


「っ!……ごめん、行くっ!!」

「行かせるかぁ!!!!」


 ジパン様が、立ち塞がろうとするが――


「ここは、あたしに任せてっ! 早く!!」


 アーキがジパン様を止めてくれる。


「ごめんっ! ありがとうっ! アーキ!!」


 僕はラフィを追いかけるべく、走り出した――



「何をしているの? あなた達……」


 ステラ姉さんが、泣いているラフィの頭を優しく撫でながら、一緒に戻ってきたのだった。



◇ ◇ ◇

 新ジパン辺境伯邸の会議室にて――


「まったく、何をしてるんですか?」


 腕を組んで立つステラ姉さんの前で、床に座った僕とジパン様は俯きながら話を聞いていた。


「アイン?」

「はいっ!」

「状況は知らないけどラフィを泣かせるなんて……。私はあなたを、そんな風に育てたつもりはないのだけれど?」

「違うんです、ステラ姉さん――」

「あ゛?」

「……ごめんなさい」


 ステラ姉さんに睨まれた僕は、何も言えなくなってしまった。


「そうだぞ!アイン君!! 泣かせる奴なんかに、ラフィちゃんはやれないぞ!」

「黙ってください」

「……はい」


 ステラ姉さんの言葉に乗ろうとしたジパン様だが、そのステラ姉さんに止められた。


「ジパン様もです。……私、言いましたよね? 直ぐに対処願いたい書類がたくさんあるので、ラフィたちの出迎えは私がしますって。……言いましたよね?」

「だって――」

「ん゛?」

「……すいませんでした」


 ステラ姉さんの圧が、ジパン様を黙らせる。


「そんなんだからラフィに嫌われるんですよ? もっと普段通りにしていれば、好かれるでしょうに……、ね、ラフィ?」

「仕事しない父さんは格好悪いわね」

「ゴフッ!」


 再び血を吐き崩れ落ちるジパン様。

 しかし、バッと起き上がり――


「ちくしょおおおおお!!」


 叫びながら部屋を出て行ってしまった。


「「「「……………」」」」


「ハァ……。ラフィ、後で執務室へ飲み物の差し入れを持って行ってちょうだい」

「え!? 姉さま、嫌ですよ……」

「お願いよ。あんな感じで出て行ったけど、きっと執務室へ戻って仕事をしているわ」

「……でも……」

「街の復興具合を見たでしょ? 本当にあの方は、頑張っているのよ。だから、ね?」

「はぃ……、でも、調子に乗って抱きついてきたら?」

「水牢で拘束して痛めつけて良いわ。でも、意識を飛ばしてはダメよ。本当に忙しいからね」

「それなら……、分かりました!」


 二人で微笑んでいるが、内容が物騒だったので微笑ましく思えなかった……。


「あの二人、恐ろしい……」


 アーキが身震いしていた。僕も全くもって同意見だった。口には出さないけど。


「あら? アインはそういうこと考えるんだ?」


(言ってないのにいいいいい!!!!)


 僕はその後、ステラ姉さんに折檻された……。



◇ ◇ ◇

 屋敷の屋上に、僕たちは来ていた。


「ここなら街全体が見えるからね?」


(さすがステラ姉さん、思考がぶっ飛んでいるね! だからって普通は、説明のために屋上へ来ないよね?)


「あら? 折檻が足りなかったのね? アイン?」

「ごめんなさーーい!!」

「……しょうがない子ね……」


 僕は速攻で謝罪した。心を込めてだ。不純な気持ちは、きっとすぐに伝わってしまうからね。


「まったく。現状を説明するわ――」


 ステラ姉さんの説明だと、生き残った領民の全てが新都に集まり復興を進めていること、衣食住は問題なくて余るくらいの勢いらしい。


「それでも建物を次々に増やしてるのは、外からの流入が多いからね。本当、王国はちゃんと対応してくれたわ。人、物、支援は十分と言えるわね」


 アーキが手を挙げ質問する。


「……最近、北の辺境にもスタンピードがあったらしい。……ジパンだって。なんで、そんな辺境に人が来る?」


 ステラ姉さんは笑顔で「良い質問ね」と。そして、この屋敷の一部かと思っていたドーム状の建物を指差した。


「あれが迷宮がある施設。以前の倍の硬度で作り、更に三重に壁で覆っているの。そしてここは?」

「……辺境伯邸」

「そうか、ここには常に騎士団が常駐してる」

「そう、それにね?」


 ステラ姉さんは自身を指差した。


「私が、ここに居るわ」


「「「っ!!」」」


(そうだった!! ステラ姉さんは、“七大聖王“になったんだった!!)


 堅牢な施設に騎士団、そして七大聖王――


「納得しました」

「……あたしも、ここが良いと思った」

「さすがのネームバリューよね……」


「フフフ、ありがと。私もまだまだだけどね? でも、復興のために使えるものは全部使うわ!」


 さすがステラ姉さんと感動していたが、明らかに姉さんの目が、獲物を狙うそれだった――


「あなたたち、だいぶ有名になってきたようね?」


 僕はもう分かってしまった、この先の言葉を――


「この街のために、働きたいわよね?」



 こうして僕らの帰省は、客寄せと労働で終わったのだった……。



◇ ◇ ◇

 二学期が始まった。

 始めは帰省から戻ってきたメンバーに、何かあったんだろと詰め寄られたけど……。


「フフフ、ジパンは最高な場所さっ! 今度は、みんなで行こう!」

「そうよ! 最高な場所! 安全、安心で、とても住みやすいのよ!?」

「ジパン最高! ジパン最高! ジパン最高!」


 死んだ魚のような目で話す僕たちを見て、みんなは「お疲れ様でした」とだけ言って、辛そうな表情をしていた。



 だんだんと普段の学園生活に戻り、僕たちの意識も通常に戻ってきた気がしていた。


(最初は学生会のみんなも、僕たちにドン引きしてたもんな……)


 それにしても――


 もう二学期が始まって一週間経つのに、ミカエラだけは学園に戻っていなかった。


「た、た、大変ですぅ!!」


 珍しく慌てているセラフが、講堂に飛び込んできた。


「み、み、み!!」


「「「「み?」」」」


「ミカエラさんがっ!! お城で拘束されましたぁ!!――」


「「「「えええええ!?」」」」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ