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推しヒロインは俺が救う  作者: 白永央はひな
《第1章》 少年~入学前編

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第7話

 洗礼式から一年後、俺は十六歳になった。

 家の居間には、いつもより少しだけ緊張した空気が流れていた。

 俺は正座し、向かいには父と母。


「修行の旅に出たいと、思っています……」


 言葉にすると、覚悟が形になる気がした。


「……そうか」


 父は短く頷き、母は少し驚いた顔をした後、すぐに柔らかく微笑んだ。


「エイユウ学園を目指すのよね?」

「うん。一般入試で」


 詳しい理由は話さない。

 話しても信じてもらえないことは、自分が一番わかっている。


「危ないことは、しないでね」

「無理は、するな」


 二人とも反対はしなかった。

 昔から、俺の”決めたこと”は止めない人たちだ。


「行ってきます」

「「行ってらっしゃい」」


 そうして俺は、生まれ育った村を後にした。



◇ ◇ ◇

 村を離れしばらくして――

 俺は森の中を歩きながらステータスを開いた。


 名前 :ケイ・ツクヨミ

 レベル:1

 年齢 :16歳

 ジョブ:創作者

 適性属性:なし

 魔法・技能:

  ・創作魔法:U   ・魔力操作:U  

  ・魔素吸収:U  

  ・魔武術:U(New!) ・身体強化:U

  ・アイテムボックス:U(New!)


(剣術と体術が創作魔法を使った戦闘していたら消えて、魔武術に統合された……。これ、絶対上位互換技能だよなあ……)


 もうそろそろ良いか……。


「よし。今日からレベル上げ解禁だ!!」


 俺は軽い足取りで森を進んでいった――



◇ ◇ ◇

 森の奥深く――

 実は俺、生物を殺すことができるのか?と自分自身を少し不安に思っていたけど……。


「問題なかったな」


 転生して思考も変わったのか?殺すことに忌避感は覚えなかった。

 モンスターは当然平気だし、盗賊・山賊・海賊とかはマジでクズばかりだから平気だった。

 俺はイセ村周辺から討伐を開始して、ジパン辺境伯領からエルドラド王国外縁を西から東へと旅をして行っていた。


 森を歩きながら魔力を耳に集中する。


「……こっちか?」


 魔力による部分強化で、遠くの音を拾う。 

 そして、眼に魔力を集中――


「見つけた……、2㎞先くらいか?」


 眼の魔力集中で遠くの物が見えるのだ。ただし、服が透けたりはしない。相手の魔力内包量なんかも見えて、大体の強さも分かったりする。


「オーク……。やたらとデカいのがいるしオークキングとかか? 数も五百体以上……、何かのお祭りかな?」


 たくさんの経験値を見つけて自然と口が綻んだ。


「集団戦なら頭からってのが、セオリーだよね?」


 俺は右手の人差し指の先を、オークキング?の頭部に狙いを定める。

 魔力を指先に集め、圧縮、圧縮、圧縮……、更に回転、回転、回転……。

 そして――

(バンッ!)

 ――次の瞬間、オークキング?の頭部が爆ぜた。

 急なことで、上位のオークたちを含め混乱しているようだ。


「そら、そうなるよね」


 小声で呟きながら魔力で脚を強化した。身体の背面から衝撃波も出して高速移動を開始、魔力で瞬時に作った直剣で上位種の横を通り抜けながら首を刎ねてゆく。

 オークキング?の周囲にいた側近っぽい上位種の首が一斉に空に舞い、口をポカンと開けているオークどもの、ほぼ中心に俺が現れる――

 状況を理解した残りのオークの怨嗟の瞳が俺に集中する。

 一拍おいて動こうとするオークたちだが……。


「だが、もう遅い……」


 俺は開いていた手をギュッと手を握る。

 周辺へ張り巡らせた魔力硬糸が俺を握った手を中心に収束――それにより、身体をバラバラに切り裂かれていくオークたち。


「……ん?何体か仕留め損ねたか」

(まだまだだな、俺も……)


 残党の首を刎ねて回り、一瞬にしてオークキングの集団を殲滅した。

(ドロップの肉や魔石や武器類がいっぱいだな~)


 俺は収納しながら、”アイテムボックス”があって良かったなと思った。

(山賊のアジトとかを殲滅した時も、あいつら結構たくさんの財をため込んでいたから、マジでアイテムボックスがなかったら諦めてたもんな)


「ホクホクだな。本当にあの時、試してみてよかったよ」



 村を出発する前夜――

 荷物持っていくのが大変だなと考えた俺は、創作者で何でも作れるなら魔力で亜空間に干渉して、転生あるあるの”アイテムボックス”が作れないかと試した。

 結果として、できてしまった。 

 やはり俺は、チートなのかもしれない。


 その後も俺は、魔物や悪党をサーチ&デストロイしながら旅を続けていった――



◇ ◇ ◇

《ステラ視点》

 ケイとアインが洗礼式の後、アインが入学する前の話――

 辺境伯領学園の訓練場は、朝からざわついていた。


「今日の模擬戦、ステラ・ツクヨミが出るらしいぞ」

「また? 昨日も一人で全員倒したって……」


 辺境伯領学園の最高学年になった私の評価は割れていた。

 噂だけを知る者は半信半疑で、噂を信じない。

 しかし、実際に見た者は全員口を揃えて“異常”と言った。


「それでは、模擬戦を開始する」


 教官の合図と同時に、五人の生徒が散開する。

 対するのは、私一人だけ。

(五対一ね――)


 五人の生徒が魔法詠唱や陣形を整えていく。

 詠唱が終わり、攻撃の狼煙があがる――そう思った瞬間だった。


「――少ないし、遅いわ」


 私の動きを視線で追えている者がいなかった。

 私は最初の盾使いの横を通り抜け手刀を見舞い――

 次に剣士のみぞおちへ拳を叩き込み――

 二人目の剣士には剣の柄で顎を弾く――

 放たれた魔法は剣で切り裂き、そのまま手刀を見舞い――

 最後に呆けている神官に拳を打ち込んだ……。


「……お終いね」


 五人が同時に倒れ、その場は騒然とした。


 呼吸を整え周りを見ると、畏怖の視線が私をに絡みついてきて不快だった。


(……やりすぎたかしら?)


 剣を収めながら、私は小さくため息を吐く。

 相手の実力を正確に見切り、最短で無力化する。


「確実に強くなっているわね、私は……」


 ケイにしつこく言われた通り、”レベルの前に熟練度”を実践してきた。

 任意の迷宮探索や魔物討伐をずっと我慢して、ひたすらに”熟練度”を上げてきた。

 

 『魔法や技能の熟練度がレベルアップ時の能力値を底上げする』


 弟の言葉が、今ははっきりと正解であったと理解できた。


(あの子は本当に、何でこんなこと知ってるのかしら?……)


 私のジョブ、『剣聖』は確かに強力。ただ授かっただけで、能力値上昇や剣技への理解、身体の使い方などはジョブの恩恵が大きい。 

 でも、この能力値に関してはケイに言われたことを実践したからよね――


 名前:ステラ・ツクヨミ

 レベル:17

 年齢:17歳

 ジョブ:剣聖

 適性属性:風

 魔法・技能

 ・風魔法:C  ・剣術:S  ・体術:A  ・危険察知:D

 ・無属性魔法:A  ・魔力操作:A  ・身体強化:D


 ちょっと学生の能力値じゃない気がするわ。

 国のエリート戦力級じゃないかしら?


(しかも……、”身体強化”は獣人の固有スキルだったと思うのだけど? 

たしか、”魔力操作”の熟練度が”A”に上がった頃に覚えた気がするわ……)


「秘匿事項かしらね……」


(弟の知識が国家を揺るがす気がしてきたわ……)


「もうすぐアインも入学だし、私はもっと強くならなくてはね?」


 危険な知識を持った弟や、勇者になったもう一人の弟。

 

 そんな弟たちを守っていけるように、私は更なる強さを求めていく――


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