第76話 癒しと傲慢
昨日はヤバかった。零番隊の三人もヤバかったが、最後のアゼルもヤバくて……。
(俺、ヤバいしか言ってねーな……)
朝から語彙力がヤバかった。
「今日は三者三様のやつらか。最初はルウからだっけ?」
俺はメモを確認し、用意をしてから待ち合わせの場所へ向かった――
◇ ◇ ◇
船着き場に着くと、三者三様が全員揃って待っていた。
「おい……」
ルウを見ると――
「みんなで行った方が楽しいデスヨネ~」
(何でカタコト?)
モニカを見ると――
「みんなの方が楽しいッスヨネ~」
(だから何でカタコト?)
ナミエを見ると――
「別にあーしは一人でも良かったんだけどね!?」
そう言って、そっぽを向くナミエ。
(こいつか……)
「お前らなあ? ちゃんと説明しろや?」
観念したナミエの説明によると――
三分割だと時間が少なくなってしまうので、俺と一日中いるための時間を作りたくて画策した結果なのだそうだ。
(……あれ? 俺って結構好かれてる?)
「……そうか」
何ともいえない雰囲気になり、俺はそれしか返せなかった。
◇ ◇ ◇
最初の島――マハコ島に到着した。
「ここは私の希望した島!」
珍しくワクワクしているルウ。そんな彼女はふわふわ系のタンキニを着ていた。
(水着が黄色だからか、いつもより元気そう?)
「ここには一面のサトウキビ畑があるって聞いて!」
「あ~、ルウ……。食べ放題とかじゃないからね?」
「え?」
ナミエの指摘に、ルウは聞いてないよ?みたいな顔をする。
「まぁね? ちょっと味見で齧るのはできるかなぁ~?」
「ちょっとかぁ……」
明らかにテンションが落ちてしまったルウ。
「いっぱい食べても目立たないようにキャミソールタイプのタンキニにしたのに……」
(そこまで食べ放題に拘っていたのか……)
「でもでも、このガイドを見るとご当地のソバなんかもあるっすよ?」
「お?マジか? ならソバを好きなだけ食わせてやるよ!」
「さすがケイさん。マジ神……」
その後、食べ過ぎたルウのお腹はポッコリとしていたが、次の島へ行くまでにへこんでいたことに俺は驚愕したのだった。
そうそう、ちゃんとサトウキビも齧りました――
◇ ◇ ◇
次の島――ロク島に着いた。
「フフフ、この島を選んだのはわたすっす!」
ドヤ顔のモニカは、いつものお団子ヘアではなくて綺麗な金髪を下ろしていた。
(いや~、髪を下していると本当に深窓の令嬢っぽいな~モニカ)
「おっと? なんすか? わたすのホワイトビキニにメロメロっすか?」
(話さなければな~……、でも――)
「やっぱりモニカは、そんな感じが良いぞ!」
「ん?……褒められてる気が、しないっすね?」
俺は笑って誤魔化しておく。
「見てください! この島、ハート型なんすよ! すごくないっすか!?」
「おお~」
「……うん」
「メルヘンさね~」
モニカは俺たちの反応にちょっと不満そうだったが、「次っす!」と次の場所へ移動した。
「見てください! こんなにたくさんの牛さんが暮らしてるっす! 可愛くないですか!?」
「おお~」
「食べていいの?」
「いやいや食べちゃダメだよ!」
「………ぐすん」
モニカが少し落ち込んでいたので、俺の奢りで島名物のステーキをランチで食べた。
「食べてるやん!?」
急にナミエが叫んだが、みんなはスルーして美味しくいただいた。
命に感謝――
◇ ◇ ◇
本日最後の島――トミタケ島へ着いた。
「ここはあーしのお勧めさね~」
元気に紹介するナミエは地元民なだけあって、小麦肌が南国トロピカルビキニに抜群にマッチしていた。
「ナミエの水着、めっちゃ似合ってて可愛いな!」
「え!? 今!? なんてっ!?」
(あ……、心の声が間違って……)
「意味わかんない」と言いつつ、頬を赤くするナミエは可愛かった。
「ナミエ、良かったっすね?」
「ナミエ、おめでと……」
「ううぅ……」
余計に顔を真っ赤にしてしまったナミエは、頭から湯気が出そうな勢いだった。
「ああっ、もうっ! みんな付いてきてっ!」
そう言って歩いて行くナミエに案内されたのは――
「これに乗って行くさ~!」
大きな水牛が引く乗り物――水牛車だった。
力強く、だけどゆっくりと独特な文化の街並みを見ながら進むのは面白い体験だった。
(おお~、めっちゃ遅~~~い)
「どう? 基本的に南国諸島はこんな感じの土地柄なんさ~」
(ああ……、なんか時間をゆったりと持つ感じかな――)
「――たまには、良いかもな……」
「うんうん……」
「わたす、このゆっくり感は好きっすね~」
「いいでしょ~。あーしもこの雰囲気は大好きさね~」
静かでゆったりした時間を過ごすことができた――
◇ ◇ ◇
《アゼル視点》
「――って感じでさ。今日はめっちゃゆったりまったりだったわぁ~」
本当にゆっくりリラックスしてきたのだろう。心なしかケイ君の話し方も、緩くなってる気がするしね。
「そう。ケイ君がゆっくりできたなら良かったわ。いつも忙しいもんね?」
「あ……、そうか……」
「ん?」
「あ~、いやな。もしかしたら、あいつらなりに俺に気を使ってくれたのかも知れないと思ってさ……」
(なるほど、十分に考えられるわね――)
「ケイ君がそう思ったなら、きっとそうね……」
「あいつらバカっぽいけど、良いやつらだからな~」
「フフフ、それだけケイ君が慕われているのよ」
「まさか~! だって俺、あいつらは救ってないぜ?」
(無自覚なだけなんでしょうね……)
あたしの見立てだと少なくともナミエは確定。ルウとモニカは親愛だけど――
「時間の問題よね?」
「ん? なんて?」
あたしの呟きに反応するケイ君。
聞く限りでも、ナミエがちょっと不憫だと思ってしまった。
(……あたしって傲慢かしら?……でも――)
「ケイ君?」
「なに? アゼル」
「昨日も思ったのだけど、君はみんなに好かれているわ」
「おおう……。ありがとう……」
「そうではなくてね? 男として好かれてるってことよ?」
「……え?」
あたしは両手でケイ君の頬を挟む。
「っ!!~~~」
照れているけどあたしは手を離さず、真っ直ぐケイ君を見つめる。
「あたしは、ケイ君に愛されて嬉しい――」
「うん……、俺も嬉しい……」
「――でも、あたしの他にも君に愛されたい子がいるの……」
「………え?」
「決めるのは君。だけど、真剣に相手を見てあげて。お願いよ?」
「……分かった……」
あたしは笑顔に戻り、ケイ君の顔を離す。
「大丈夫。君が何人選ぼうが、あたしはあたしでケイ君を離さないからね!」
(これがあたしにできる最大限の援護射撃、あとはそれぞれで頑張ってね!)
やっぱり傲慢だったかなと、悩んでしまう夜だった――




