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【第一部完結】推しヒロインは俺が救う  作者: 白永央はひな
《第9章》エルドラド南国諸島編

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第75話 血まみれと嫉妬

《ジュリエッタ視点》

 だんだんと日が傾く時間、わたくしは船着場で旦那様を待っていました。


「綺麗な金髪……」「お嬢様?…メイド?」

「白いフリルが可愛い」「顔も可愛いよ」


 一人待っているわたくしを見て、通り過ぎる人々が何やら言っていました。


(お嬢様と思うのは、わたくしの縦ロールの髪型のせいでしょうか?)


「ジュリっ! 悪い、待たせた!」

「とんでもございません、旦那様――」


 旦那様であるケイ様が到着されたので、わたくしは失礼の無いように大きい白いフリルを摘んでカーテシーをする。


「ハハ、黒いビキニなのに、大きい白のフリルとヘッドドレスで完全にメイドさんだな」


 旦那様は苦笑いされる。


(あら? 不評でしょうか? 首のフリル付きチョーカーも可愛いと思うのですが?)


 わたくしが首をコテンと傾けると、旦那様は慌てて――


「変だとか、そういうのじゃないぞ? …改めて、ワンポイントのチョーカーも含めて可愛いよ……、ジュリ」

「……ありがとうございます」

(褒められるとムズムズしますね。でも、素直に嬉しいですね)


「あ~、ジュリは水着とか平気なのか? 無理してないか?」

「??」


 旦那様は頭を掻きながら、何やらわたくしを気づかうような、もの言いですが……。


(わたくしは別に水着が不得意ではないのですが……、見苦しい? でも可愛いと言われましたし……、はて?)


 わたくしが考えていると、「気にならないなら良いさ」と旦那様が頭を撫でてくれます。


「じゃあ行こうっ」

「はい、旦那様」


 

◇ ◇ ◇

 ガキイシ島――

 ここは離島の中でも人気の島で、独特な文化を感じることのできる島との売り込みでした。


(たしかに、観光スポットがたくさんですわ……)


 案内図を二人で見て、どこに行こうかと考えていた。


「もう日が沈むしな~、行けて一か所かな? ジュリは行きたいところあるか?」

「わたくしは旦那様となら、どこでも構いませんわ」


 そう言いつつも、一か所気になるところがあった。

 わたくしの視線を読んだのか旦那様は――


「よし、ここに行こう――」


 わたくしが気になっていた場所を、選んでくれました。



「歴史を感じるなぁ……」

「本当ですわね……」


 わたくし達は、旧王朝時代の貴族屋敷群へ来ました。


(かつては栄えていたのでしょうね……)

 

 貴族屋敷は旧王朝の建物様式で、珍しく大きな邸宅がたくさんあって見どころがありました。


「滅びた貴族の成れの果て……、ですわね……」

「…………」


 旦那様は、わたくしを心配そうに見ていました。


(単純に元貴族として、別王朝の文化を見たかっただけでしたが……、なぜか心配されてる?)


 その時、水着の心配の意味も分かりました――


(ああ、だからわたくしを心配してくれたんですわね?)


「旦那様?」


 わたくしは歩みを止め、旦那様を真っ直ぐ見た。


「なんだい?ジュリ」


 旦那様も歩みを止めて、わたくしの方へ振り返りました。


「わたくしは……、あの極悪人にされそうになったことを、怖がったりはしていませんわ」

「っ!!……そうか」


(旦那様は、わたくしを救ってくれた状況――服を破かれ肌も露わになり、わたくしが酷い目に遭わされる寸前で助けてくれた状況。それで、わたくしが肌を出すのが苦手だと思ったんですわね?)


「だって、わたくしは旦那様に救われましたもの。だから、わたくしは旦那様が近くにいれば怖いものなんてありませんよ?」

「っ!!……わかったよ。ジュリが安心していられるなら、俺が君を守るさ」


「「…………」」


「旦那様?」

「……ん?」

「わたくし……、そこまで依存するつもりありませんわ?」

「……そうか」


 旦那様は何とも言えない顔になっていました。


「でも、とても嬉しいですわ」


 本心で嬉しかったわたくしは、心からの笑顔と感謝を伝えた。



◇ ◇ ◇

 すっかり日の落ちた帰り道――


「遅くなっちゃったな」

「まだ船の時間は大丈夫だと思うのですが……」


 前からガラの悪い集団がやって来ました――


(ゴンザレスっぽいのが、たくさん……)


「オイオイ!薄暗い中よぉ!水着で歩いているなんてよぉ!俺ら誘ってるんじゃねーか?」

「マジっすよねぇ!おっ!?兄貴ぃ!めっちゃ可愛いっすよ!」

「ゲラゲラ!胸は小せぇけどなぁ!!」

「そういうことだから!!男のお前は先に帰んなぁ!!」


 ゴンザレス以下のウジ虫でしたわね……。

 わたくしは旦那様の前に立って笑顔で振り返る。


「ここはわたくしが――」

「ハァ、任せる」

「承知いたしました」


 わたくしはウジ虫どもへ向き直り――


「わたくしの可愛い”両拳ちゃん”の糧になりなさいっ」


 手首の白フリルの付いた黒アームカバーへ魔力を流すと、わたくしの相棒である両拳ちゃんへ変形した。


「何言ってんだよぉ!このアマがぁ!!」


 ウジ虫Aがわたくしの肩に触れようとする――


 グショッ!!


 右拳ちゃんが、裏拳でウジ虫Aの腕を潰す。


「ギャアアアア!!」――バキュッ!!

「うるさいですよ」


 ウジ虫Aがうるさいので、左拳ちゃんで顔面を潰す。


「「「…………」」」


 残りのウジ虫共が黙る――ドサッ……。

 ウジ虫Aが地面に倒れた音を切っ掛けに――


「「「うわああああ~~!!」」」


 散り散りに逃げだすウジ虫共……。


「逃がすわけがないでしょう?」


 ウジ虫共を撲殺するわたくしは、両拳ちゃんの高揚感がフィードバックしてきてるみたいで――


(あぁ、生きているって素晴らしいぃ!!)


 口角が自然に持ち上がり、笑いながら叩き潰していましたわ……。


「…………はっ!?」


 気持ちが治まった頃、ハッとして後ろを振り向きました。

 そこには呆れた顔をした、旦那様が立っていて……。


(まずいですわ!! 高揚感に駆られてやり過ぎましたわ!? 旦那様に嫌われるのだけは!?)

 

 わたくしは全力で言い訳を考えていましたが――


 スッと手が、わたくしに差し出されました。


「行こうジュリ。船に間に合わなくなるぞ?」

「……はい」


 旦那様は何も言わず、わたくしの血みどろ手を受け入れてくれました――



◇ ◇ ◇

《アゼル視点》

 あたしは今日もホテルのバーで彼を待っていた。

 今日からのデートラッシュにあたり、一つだけ約束をしたのだ。


「アゼル、ただいま」

「おかえり、ケイ君」


 その約束とは――

 夜は必ず、あたしとの時間を作ること。


「待たせたかい?」

「ううん。まだ一杯目よ」


 二人で同じカクテルで乾杯をする。


「で、どうだったの? 零番隊の子たちと、ちゃんと向き合えたの?」

「心配してたよりみんな好意的でさ、辞めたいって言われるかと警戒して行ったけど大丈夫だったよ」

「……は?」

「いやさ、一対一だからきっと、俺へどうしても言いたい不満とかが、あるのかと思ったんだよね〜」

「…………」

(ケイ君って、自分自身への評価が、おかしい時があるのよね……)

 

 あたしはため息を吐き、突っ込んでもしょうがないかと続きを促す。


「それで?」

「そうだね。みんな少しずつ元気に……、過去を乗り越え出して、強くなってきてる。……完全ではないけどね」


 ケイ君は零番隊の子たちを救った経緯と、今日の様子を教えてくれた。


(やっぱりいろいろと、重い過去を抱えている子が多いのね……)


 あたしも救われた身として、とても共感してしまった。

 でも――


「手繋ぎ……、抱擁……、水着デート……」

「ん?」


 分かってはいたけど、楽しそうに話すデートの様子に、あたしの嫉妬心は刺激されてしまった。


「ねぇ、ケイ君。手を出してくれる?」

「え? はいどうぞ?」


 あたしの方へ身体を向け、両手を差し出すケイ君。  


「ありがとっ」

「っ!?」


 あたしはケイ君の両手に自分の手を笑顔で絡めた。恋人繋ぎをしてみたのだ。


「ア、ア、アゼルさん!?」

「話を聞いていたら、あたしも繋ぎたくなっちゃった」


 顔を赤くして照れるケイ君がとても可愛くて、あたしは身体も彼に寄せてみた。

 そして、慌てるケイ君から本心を聞こうと思い、質問をしてみる。


「ねぇケイ君、零番隊の子たちは可愛かった?」

「…………普通?」


 ケイ君は顔を背けて答えた。目も明らかに泳いでいる。


(……絶対に嘘ね)


 更に身体を寄せ、上目遣いで問う。


「絶対に怒らないから、本当のこと言って?」

「っ!!〜〜〜〜、みんな、可愛かったです……」

「ふむ、正直でよろしい」

(まあね。元々可愛いって知ってたしね。その子たちが気合い入れてくるんだもん、可愛いわよね)


 正直に言われたら言われたで複雑な気分になったあたしは、ケイ君成分がとても欲しくなってしまった。


「正直に言えたご褒美に、抱きしめさせてあげるね?」


 そう言ってケイ君の胸に飛び込んだ。彼は震えながらあたしを抱きしめてくれる。


(ご褒美とか言って、あたしのご褒美になってるけどね?)


 しばらくそのままでいたが、ケイ君の震えが止まり慣れたのかな?と思った頃、彼に回していた腕に何かドロッとしたものが付いた。


(何?……液体?)


 確認すると、それは血液だった――

 あたしは慌ててケイ君の顔を見ると、一生懸命に顔を逸らした鼻から大量の鼻血が溢れていて、彼は意識を失っていた。


「ケイく〜〜ん!!!!」


 すぐに医務室へ運び、何とか一命を取り留めることができた――


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