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【第一部完結】推しヒロインは俺が救う  作者: 白永央はひな
《第9章》エルドラド南国諸島編

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第71話 夏が来た

 学園は、夏休み目前の独特の高揚感に包まれていた――

 

(まあ、夏だしな……)


 学園内の空気を感じつつ廊下を歩いていると、アインたち勇者パーティーを遠目に見つける。


(お~、しっかりハーレム化していってるな~)


 アインはウリエ、ラフィ、セラフ、アーキに物理的に絡まれながら、学生会の仕事で動いている様子だった。そんな五人の後を、ミカエラとエルが付いていく姿が見える。


 俺はそんな様子を見て、一人満足していた。


(うんうん。順調に攻略していっているな。さすがアインだ――)


 『光の守護者』――このジョブに選ばれた『勇者』アイン。


 実はこのジョブ、進化できたりするのだ。

 その条件が――


(――正ヒロインを全員攻略して、更にある条件を満たすこと)


「なんにせよ、今のところ順調みたいで良かった良かった」


 アインはきっと、今の状況に困っていると分かっているが……。


(頑張れ、アイン……)


 見て見ぬふりをすることにした……。



◇ ◇ ◇ 

 帰省の準備などがあるせいか、深淵迷宮に挑む人数が少ない時期でもあった。


「フフフ、次のイベントまで狩りまくるかな――」


 一人でレベルアップ祭りをしようと、迷宮に入ろうとしたら――


「ケイ君いたさ~!」

「さすがっす!ナミエの読み通りっす!」

「……私の鼻も褒めてほしい」

「うんうん、ルウの鼻もさすがだね!」


 三者三様に捕まってしまった。

 俺は一人で”HTIMモモンガ”狩り祭りをしようと考えていたが……。しかし、有名税のせいで迷宮攻略も60層止まりだと言うので、今日ぐらいは付き合ってやるかなと思った。


「いやだよ!夏の旅行まで付き合ってほしいさ~!」

「そうっす!たまには弟子を構うっす!」

「……ケイ成分補給したい」

「っ!ちょっと待て!ケイ成分って誰に聞いた?」


「「「…………アゼル」っす」さん」

(言いふらしてるんか~い!!)


 俺はため息を吐いて、ジト目で三人を指さす。


「”ケイ成分”って言うのは禁止な! その代わり、迷宮探索は付き合うよ」

「やったさ~」「了解っす!」「……うん」


 喜ぶ三人を見て、俺は口角を持ち上げる――


(二度と一緒に探索したくなくなるような、ハードモードで行こうかなぁ~)


 その後、

 何かを引き換えに、彼女たちのレベルと攻略速度は、爆発的に上がったのだった――



◇ ◇ ◇ 

 一学期最終日――


(今日で一学期も最期か……)


 終業式を終え、俺は講堂の窓から外を眺めていた……。

 帰省等で急ぎ歩いて行く学生たちの中に、リリスを見つけた。


(リリス……君は……)


 あの時、エンジュが報告したのは――


『――リリス様の探し人は、黒の死神の中にいるかもしれません』


 以前彼女は、夜な夜な暗がりの中を探していた。察するに裏の人間であると考えられた。そして彼女がたどり着いた場所――黒の死神……。


(まあね、そらそうなるわな……)


「だが、組織内でリリスと関わりがありそうなやつがいない」


(もしやとは思っていたが、敢えて考えないようにしていた……)


 黒の死神の内で、リリスと接触した可能性がある人物……


「……探し人は、俺か?」


(入学前に会った時は、確かに気を失っていたはず……っ!!)


「そうだ……。気を失う前に”死神”って言ってた……」


(だとしても何で探す? 好きになる理由が分からない!)


「好きな人という前提が……、違ったら?」


(学園に紛れるためのブラフ?……いや、だったらなぜコッソリと夜に探す?)


「……分からない、だが――」


(――探し人は、俺の可能性が高い気がする……)


 俺は直接接触するべきか悩んだが、ポンコツ化する可能性が高そうだったので、自分で動くのは控えることにした。

 エンジュに俺を探しているかもしれないと伝え、情報は下部組織とも共有して監視を続けるように指示をだしておいた。



◇ ◇ ◇  

 学園も終業した夜、俺たちは本部会議室に集合していた。


「じゃあ始めるぜ。オーナー、よろしくお願いします」

「ああ。……この夏季休業中に、南国諸島の海獣迷宮を攻略する……」


 俺は立ち上がり、全員へ視線を送る。


「ただ行くだけじゃ、なんだからさ――黒の死神の慰安旅行も兼ねて行きます!!」


「「「「おお~~~!!」」」」


 全員から歓声が沸く。俺の言葉をオルトが引き継ぐ。


「大所帯になって、仕事も任せられるようになった! 街の治安も十全だ!」


 オルトは俺に確認の視線を寄越す。

 何度も話して決めたことだ。設立以来ずっと頑張っているみんなに、俺はしてやりたいんだとオルトを説得したのだ。


「オーナーの決定だ! 幹部とその直属メンバーは全員参加だ!!」


「「「「っ!!!!」」」」


 全員の視線が俺に向く。特に黒影あたりは参加できないと思っていたと思う。


「俺はみんなで行きたいんだ。付き合ってくれるか?」


 全員が力強く頷いてくれた。特にエンジュは少し涙ぐんでいた気がする。


 こうして、俺たちは旅立った――


 常夏の島々が連なる、夏の楽園――


 リゾート地、南国諸島へ――


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