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【第一部完結】推しヒロインは俺が救う  作者: 白永央はひな
《第8章》獣王国編

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第69話 帰る場所、好きな人

《アイン視点》


「……懐かしいな」


 丘の上から見下ろした景色――

 かつて、黒猫族の隠れ里と言われた廃村を見てアーキが呟いた。

 悲しみの表情ではあるものの、この景色を見た彼女が憎悪の表情や言葉を出さなかったことに、僕は安堵した。


「じゃあ行こうか」

「……うん、ありがとうアイン。ありがとう、みんな」


 僕たちは廃村へ歩き出す。

 アーキの家族と、黒猫族を弔うため、僕たちはやって来たのだった。


 僕たちがここに来た経緯は、昨日の獣王決定戦の終わりまで遡る――



◇ ◇ ◇

 ムース宰相の反逆は失敗に終わったが、その波紋は大きく拡がり、獣王国存亡の危機になり得る出来事だった。

 しかし、ティグリス王がムース宰相が逝ったあの時、あの場所で放った言葉によって、別の意味で波紋を拡げることになった。


「みんな聞いてくれ!! 二度目だがっ!俺が獣王になって初めての演説だ!!」


 ムース宰相たちの乱入により会場は混乱していたが、鎮圧によって場は落ちつきつつも困惑した雰囲気だった。

 そんな中での獣王からの呼びかけ……、そこに居る誰もが、獣王の言葉を待っていた。


「俺は!! この国の強さ至上主義をやめる!!」


「「「「っ!!!!」」」」


 獣人たちは皆、驚き固まる。僕もビックリした、だって強さ至上主義って獣人のアイデンティティなのでは!?と思った。


「別に、最強を目指さないわけじゃねー……」


 みんな、じゃあ何故?と思っただろう。


「俺は、獣人みんなが笑える国を創りたいんだ!! それは、弱いやつも含め全員だ!!」


 そして、ティグリス王は頭を下げる――


「だからっ! みんなの力を貸してくれ!!」


 そう言い、ゆっくりと顔を上げる。


「文句のあるやつは、言ってくれっ! 俺が相手になるからよ!!」


 結局腕力か〜い!?とみんな心で突っ込んだと思った――でも。


「大丈夫だ。殴りかかってこいって事じゃねー! 言葉でかかってきても良いってことだ!!」

 

 ティグリス王は、牙を剥き出して笑った。



 そんな感じでティグリス王がまとめ、その場を収めることができた。

 そんな新しい獣王国の始めの仕事は過去への贖罪、黒猫族の悲劇への贖罪だった。

 王が今までに集めた遺品を持って、隠れ里に埋葬しようというものだった。

 ティグリス王は――


「アーキ、行くか?」


 そう聞いてくれた。

 アーキは迷わず――


「行く。……行かせて欲しい」


 こうして僕たちは、黒猫族の隠れ里を訪れることになったんだ。

 しかし――

 一つ問題があった。僕たち勇者パーティーは、学生会として二学年生の引率業務があったのだ。


(……どうすれば!?)


 そんな時に――

 いつも助けてくれる彼が、颯爽と現れる。


「俺に任せて行ってこいよ、アイン!」


 ケイがそう言ってくれた。

 僕は、ケイなら任せられると安心したが――


「何言ってんだよお前!」「誰だよ!?」

「お前じゃ安心できねーよ!」「ヒモ野郎が!」


 さっきの事件で不安が強くなった同級生たちが、僕たち勇者パーティーに引率して欲しいと抗議する。


(どうしよう……、ケイはすごい強いって説明すれば、納得してくれるか?)


 そんなことを考えていると――


「あーしたちが引率するさ!! それならみんな安心さ〜!?」 


 ナミエさんがフォローしてくれた。


「三者三様さんたちなら」「安心です!」

「お願いしたい!!」「ナミエちゃん可愛い!!」


 みんな、手のひらを返したように受け入れていた。


「「…………」」


 僕とケイで、微妙な空気が流れた。

 ケイは少し悲しそうな笑顔で――


「“俺たち“に任せて行ってこいよ、アイン!」


 そう言って、送り出してくれた。



◇ ◇ ◇

 僕たちは廃村の中を、ゆっくりと歩く。

 焼け落ちてしまった物も多く、ほとんどの建物が、原型を留めておらず朽ちていた。何故か最近壊れた様子の廃屋もあったけど、ほとんどがそうだった。


(アーキはどんな気持ちで、見てるんだろう……)


 彼女は崩れ落ちた物を時々触ったり、止まってジッと見つめたりしながら歩き進めていた。


 僕たちの目的地は里の奥、少し開けた丘に立つ、大きな木の根元だ。どこに墓を作るかの話になった時に、アーキが一番良いと言った場所だった。

 

「ここにしよう……」


 木の根元へ着き、アーキが場所を決める。振り返ると村が見える、良い場所だった。

 遺品を入れる穴を掘りながら、アーキが言う。


「この場所は子供たちの遊び場で…、村の宴会とか祭りも…、楽しいことは、みんなここでやったんだ……」


 だから―― みんなが楽しく逝けるようにと。


 簡易的なお墓が完成した。みんな、花を手向けて手を合わせる。

 最後にアーキが墓の前に立ち、僕たちは後ろで見守ろうとした。


「……アイン、となり、お願いできる?」


「分かった」


 僕はアーキの隣に並んだ。

 彼女は目を閉じ、手を合わせて語り出す。

 僕も同じように手を合わせた。


「みんな…、あたし達の復讐は終わったよ。獣王が、みんなが終わらせてくれたよ……」


 アーキは目を開き一歩前へ出て、優しく石碑を撫でる。


「みんなが生かしてくれたから、あたしは戻ってこれたよ……、ありがとう……」

 

 しばらく撫でた後、アーキは僕の隣に戻る。


「父さん…、母さん…、エンジュ…、みんなっ……」


 アーキの頬に、涙が溢れた――

 それでも、彼女は一生懸命に笑う。


「あれ?…、おかしいな…、泣かないって、笑ってって、思っていたのにな……」


 そんなアーキを見て僕は彼女の手を握る。ピクッとした後、彼女は強く手を握り返してくれ、「ありがと…アイン」と呟いた。少し表情も柔らかくなった。


「あたしは元気…だよ。あたしにも、帰る場所ができたんだよ……、だから、大丈夫だよ」


 自分は平気だから心配しないでと、家族に報告する。


「それにね……」


 アーキは横から僕を覗き込んで見つめる。

 その頬の涙は止まり、微かに赤くなっていた。

 それから、石碑へ向き直して言った――


「それに……、好きな人ができました――」


(え……、それって?)


 その言葉で僕はアーキを見る――


 僕の視線を彼女は、はにかんだ笑顔で迎えてくれて。


「大好きだよ……アイン」


 アーキは僕の頬にチュッと口づけをして離れる。


「えへへ、これからもよろしくね!」


 そう言ってみんなのところへ駆けていく彼女を、僕は頬を触れながらボーっと見守ることしかできなかった――


《第8章》獣王国編完となります。

ここまで『推しヒロインは俺が救う』を読んでいただき、本当にありがとうございます!

少しでも面白い、推しキャラができたという方は、評価やブクマ、感想などをもらえたら作者めっちゃ嬉しいです(^▽^)/

これからも『推ヒ救』を応援よろしくお願いします!

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