表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【第一部完結】推しヒロインは俺が救う  作者: 白永央はひな
《第8章》獣王国編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

65/77

第64話 黒猫族の悲劇

《キララ視点》

 あいつとの事があって、あたしはモヤモヤした気持ちのままで、おとんの帰りを待っていた。

 そんな時――


「おう、帰ったぜぇ」

「おとん! おせーよ!」

「おう? どうした?」

「どうしたじゃねーし! 約束したろ?」


 おとんは苦笑して「食べながら話すか」と、食堂で待っているように言われた。

 しばらく食堂で待ち、おとんも席に着き話し始める。


「キララは“黒猫族の悲劇“って知ってるか?」

「知らない。黒猫族が絶滅したのは知ってたから、あいつを見て驚いたよ」

「そうか、俺も驚いた。しかもあの子は、俺のライバルだったやつの娘だ、たぶんな……」

「ああ、前に話していた、前回の獣王決定戦で争う予定だったってやつか?」

「そうだ。そして今回、あの娘は獣王決定戦に出る決心をしてくれたよ」

「え? あんな啖呵を切って出るのかよ!?」

「まあ、そう言うな。仲間と一緒に謝りに来て、参加を表明していったよ。良い仲間に恵まれたんだろうなぁ、雰囲気が変わっていたよ」


 獣王に対してあんな失礼な態度をとっておいて、謝罪だけで良いのかとも思ったけど……。おとんが納得したならと、あたしも納得することにする。


「それで、“黒猫族の悲劇“だったな」

「ああ」

「あれは、前回の獣王決定戦の直前だった――」


 おとんは悲しそうな顔で話始めた。


「俺が報告を受けたのは事件の翌日だった。ライバルのニゲルが殺されたと、しかも黒猫族全員が惨殺されたって話だった。唯一、ニゲルの双子の娘だけが消息不明で、あとは一族全員の遺体を確認できちまったってことだった……」


 さらに表情を歪めるおとん。


「俺はすぐに現地に行ったが、あれは酷かった。遺体には執拗に刺し斬られた跡があってよ。間違いなく仕留めるって心情が、滲み出ていたよ」


 怒りを思い出したのか、おとんは拳を強く握りしめる。


「特にニゲルの遺体は酷かった……。消そうとしたみたいだが、返り討ちになった敵の痕跡もあったけどな……」


(そのニゲルって人は、おとんにとって大事な戦友だったのかもなぁ)


「俺は独自に事件のことを調べたんだが、結果分かったのは“魔族が絡んでいそう“と、“獣人族内に裏切り者がいる“だけだった」


(魔族…、裏切り者……)


「これが俺の知る、あらましだな」

「じゃあ、行方不明だったあいつが一人ってことは……」

「片割れは、死んだんだろうな……」

「…………」

(あいつは、今まで一人で復讐しようと牙を研いできたって事か、おとんを犯人と思って?)


「なあ、なんでおとんが犯人だと思われてんだ?」

「それは、黒猫族の村が隠れ里だからだ。隠れ里の場所を知ってるのは、獣王国の上層部だけだったんだよ」

「なるほど、それで裏切り者か……」

「そして獣王決定戦直前、今の獣王は俺。つまり、そういうロジックだろうなぁ」

「な!? そんな単純な決めつけかよ!?」

「そう言うなよキララ。まだ小さかった娘が、天涯孤独になって生きていくには、必要だったんだろうさ」


 おとんは、何とも言えない表情で苦笑いする。

 確かに戦友の娘に恨まれるのは嫌だろうけど、そのおかげで娘が生きてこれたと考えると、何ともいえないよなぁ。


「だかよ。これは好機だ」


 おとんは好戦的な表情になった。


「俺のライバルを殺ったやつを、ずっと探していたんだ。怪しいやつの目星もつけている。俺は今回の獣王決定戦で、そいつを暴いてやるつもりだぜ」

「おとん……」

「これはよ、黒猫族だけの話じゃねぇ。きっと獣人全体の問題なんだよ」


 おとんは覚悟を決めた顔になって――


「俺は今回の獣王決定戦で、獣王国の“うみ“を出し切ってやるぜぇ」


 その言葉、その表情は、娘びいき無しで、獣王だった。



◇ ◇ ◇

《アイン視点》

 獣王決定戦出場を決めたアーキに、僕たちがしてあげられること――


「そういうわけで! 頼むよケイ!!」

「いや、どういうわけ!?」

「何も説明してないじゃない……」


 ラフィに呆れられてしまう。


「もしかして…。アーキが獣王決定戦に出るから、レベル上げを手伝えみたいな?」

「そうそう、流石だねケイ!」

「ちょっと待って!? 何で分かるの!?」


 ラフィの突っ込みに僕らは見合って。


「まあ、ケイだし?」

「アインが言いそうなことだし?」

「おかしい!! 絶対おかしいよ!?」


 ラフィは納得してくれないけど、僕たちには時間が無かった。かなり強引にお願いをして――


 今回の遠征中限定で、勇者パーティー×三者三様×ケイの二学年生最強チームを結成した。



 そして突撃した恐竜迷宮――


「違うそいつの皮膚は特に硬い、斬るよりも打つを意識! 体制を崩すんだ!」

「魔法は範囲よりも集中! 魔法が効くと言っても耐性あるんだから、弱点を狙う!」

「こいつら動きは単調なんだから、挙動で動きが読めるだろ!? カウンターが一番火力出るんだから狙って!」


「クッ! 的確で言い返せない」

「あはは、さすがアインの親友?」

「あわわわぁ〜」

「こうか?こう?」

「魔法の維持が……、大変です」

「……フッ!!」


 ケイの厳しい指示に、なんだかんだで着いていけるんだから流石だねみんな。

 そんな事を考えていると、素早い小さな魔物が通り過ぎる。小さいといっても、猪くらいの大きさはあるけど……。


「ああーー!! そいつ!! 今回のターゲットのモモンガサウルス!! 絶対に逃がすな!!」


(あれが、僕たちの最高効率ターゲットか!!)


「あたしがっ!!」


 アーキが魔力を纏い追いかける――


「ハアッ!!」


 そして、一撃でモモンガサウルスを倒した。

 こっちを振り返り、笑顔で手を振るアーキが可愛いと思ってしまう僕は、ダメかもしれない……。


 三者三様も流石の実力だった。三人なのに、僕たちのパーティーと同じくらい倒していた。やっぱりケイは積極的には戦闘に参加しないけど、その知識は惜しみなく披露してくれていた。


「アイン、どうだ?」

「大丈夫、まだまだいけるよ!」

「流石勇者だね〜」

「アハハ、でもやっぱり常時発動はきついね」

「でも、最高効率の熟練度上昇だぜ?」


 今後の強化でキモになるであろう“魔武術“。その熟練度上昇のために、常時発動してるけど……。


「みんなは……、限界だね……」


 勇者パーティーも三者三様も、セーフゾーンの床に倒れ込んでいた。そっとみんなに布を掛けておく。


「俺たちも休むか」

「そうだね」


 獣王決定戦まで泊まり込みで修行するつもりで来たので、僕たちは用意してあったテントなどを手際よく設置していった。


「なあアイン。なんかアーキとの距離が近くなった? アーキの雰囲気も、柔らかくなった気がするし」

「え? そうかな? アハハ……」

「ハァ、流石のアインだよ。早すぎ〜」

「何が!?」


 そんな雑談をしつつ、みんなが起きるまで休憩をするのだった。


 それからはケイの指導の下、僕たちは確実にレベルアップが出来たと思う。とても充実した時間になった。

 だけど、なぜか三者三様に僕は恨まれたようで。


「せっかくのケイ君との時間を……」

「勇者殿に神の裁きを……」

「いつか齧る……」


 僕は、何かしたのだろうか?



◇ ◇ ◇

《???視点》

 獣王国某所――


「例の方々が来られました……」

「通せ」


 フードを深く被った三人が部屋に入ってくる。手紙でのやり取りはしていたが、会うのは“十年“ぶりか……。


「お久しぶりです、お元気で?」

「そう見えるかね?」

「そうでも、なさそうですね?」

「そんな事はどうでも良い。リスクを承知でお前たちを招いたのは、手紙の内容についてだ」


 私は件の手紙を机に置く。


「これは本当か?」


 手紙には、“弱い者でも強くなれる薬ができた“と書いてあった。


「ええ。我々の研究がやっと形になりましてね。多少の代償あるのですが、強くなる点については間違いなく」

「代償?」

「はい、多少身体の形が変わります。元には戻りませんし」

「なんだそれは? 使えんではないか!」

「しかし、効果は間違いないです」

「一矢報いる場合と言うのか?」

「私からは何とも……」


 コイツは以前から信用はできないが、その実行力は確か……。十年前も、やり遂げた実績がある。コイツがそうと言うのだから、効果だけはあるのだろうな。


「今回は何が狙いだ?」

「狙いですか?」

「十年前は、お互いの思惑が一致したから協力した。私が黒猫族の情報を、お前が実行部隊を出した」

「そうですね。あなたは自分の理想とする国舵のため、私は試験部隊の実戦訓練と実験体の確保」


 本当に嫌な顔で笑うやつだ。私はこんなやつに頼らなければならない自分自身に、腹が立ってくる。


「今回は、この薬の売り込みですよ。弱者がこの薬を使って強者を倒す姿を見たい。それだけですよ」

「……それで? 何が望みなんだ?」

「定期的な実験た――」

「それは出来ない。前回が特別だっただけだ。そんな簡単に、同族を売れるわけがあるか!」

「……そうですか、残念です」

「交渉は決裂だな」

「私共がこの新薬を売り込み中なのは事実ですので、この1ダースは宣伝用としてお譲りしますね」


 新薬を置いて、三人は帰って行った。


「……何としても、やり遂げる必要があるのだ」


 私は一人、静かに呟いた――


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ