表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【第一部完結】推しヒロインは俺が救う  作者: 白永央はひな
《第8章》獣王国編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

58/65

第57話 困惑と昏倒 

 リリスの登場で俺の思考は吹っ飛んでしまい、いつの間にか入学式は終わっていた。

 入学式場にはもう誰も居なかった……。


(あああっ!? もっとじっくりと生リリスを見れば良かったっ!! エイユウ学園制服姿のリリスなんて、超レアじゃんっ!!!!)


 俺、一生の不覚――

 俺はその場で崩れ落ちた。


「…………」


(いやいやいやいや、そうじゃない。それは確かにそうだったけど、そこじゃないぞ俺!!)


 俺は立ち上がり、式場を後にする。まずは、情報収集が必要だと考え、学生会室へ向かった。


(理由は分からないがリリスが入学してきた。彼女が何かを知っているとは思えないが、イレギュラーな以上は繋がりがありそうな所から――)


「失礼しますっ!」


 俺は学生会室のドアを、勢いよく開けた。


「やあ、弟君。やっぱり学生会に入りたくて来たのかい?」


 俺はリリスの姉――アイナ会長を訪ねた。


 確認すると、室内にはアイナ会長しか居なかった。


「いいえ、別件で来ました」

「なんだい!じゃあ、用はないから帰りたまえ!」

「そんなっ!?」

「あたしは暇じゃないんでね!今は学生会に入る子以外の相手はできないのさっ!」


(くそっ! 朝の仕返しか!?)


「そんなこと言わずに、聞いてくれませんか?」

「聞いてくれませんっ!」


 アイナ会長は、ニヤニヤしながらそっぽを向いてしまう。


(どうする!? 何か手は――)


 その時、俺は閃いた。


「最近、姉さんが……」


 アイナ会長がピクっと反応する。


「すごいお気に入りにしている、スイーツって知ってます?」


「…………え?」


 アイナ会長はこちらを振り向いた。


「ああ、俺としたことが、意味のない言葉を放ってしまいましたね。それでは失礼いたします」


 そう言って出口へ向かおうとすると。


「待ちたまえっ!!」


 ――掛かった。

 俺はニヤリとした後に、表情を戻して振り返る。


「……なんでしょう?」

「くっ! 分かっているだろうに!!」


 アイナ会長は悔しそうな顔で、俺を睨む。


「君の話を聞こう。代わりにそのスイーツを教えてくれ……」

「ありがとうございます。アイナ会長を信用して情報を先に提供させて頂きますね。姉さんのお気に入りスイーツは、学園都市の中央区にある“和菓子店あんこ屋“の、“あんクリームどら焼き“です」

「あんこ屋の、あんクリームどら焼きか。ありがとう、君の情報に感謝するよ」


 アイナ会長は情報をメモした後に、俺に向き合ってくれる。


「ハァ、それで? 何が聞きたいんだい?」


(あれ?……勢いで来たものの、なんて理由つけて情報を聞こうかな?)


 考えた結果、正直に聞いてみた。


「……新入生代表の子の、ことなんですが」

「お!? もしかして気になったのかい?」

「……はい」

「いいね、いいね!! そういうのなら、早く言いなよ!」

「いやだって……。まあ、いいです。それで彼女、リリスさんのことを聞きたくて。バビロンってことは、アイナ会長の妹さんですよね?皇家の……」

「すぐに分かるよね〜。あたしが第一皇女で、あの子が第三皇女ね。実はあたしも、あの子の存在知らなくてさ、入学前に来た本国からの手紙で初めて知ったわけ」


(やはり、リリス自体は皇族内でも一部の者以外には、秘匿されていたのか……。この点については差異は無しか……)


「だからね……。あの子の好みとか分からないの! ゴメンね?」


 ゴメンポーズでウインクするアイナ会長に、ちょっとイラっとしたが堪える。


「でも~、学園に来た理由は知ってるよ?」


「本当ですかっ!? それを早く!!」


 俺は身体を乗り出す。


「おおぅ、すごい食いつき。リリスが学園に入学した理由はね――」



◇ ◇ ◇

 俺は学園寮の自室のベッドに座った。アイナ会長の答えを聞いてショックを受けた俺は、どうやってここに帰ってきたのかも記憶が曖昧だった。


 リリスが入学した理由――


「――好きな人に会いに来たらしいよ」


 “好きな人“


 アイナ会長の放ったその言葉で、俺は――


「…………切り替えよう。彼女が幸せになれるなら、それで良いじゃないか」


 俺は自身を納得させるために呟く。


「彼女が幸せになるなら……、違う男とだっ!!」


(あれ?……おかしいな。室内なのに、雨で前が見えないや……)


 俺の目から降る雨は、

 しばらく止むことはなかった――



◇ ◇ ◇

 止まない雨はないと言う――

 時間は掛かったけど、俺の雨も止んでくれた。

 遅くなってしまったが、俺は今日も黒の死神本部へきていた。帰還してからの日課で、アゼルと毎日修行を行っているのだ。


「ケイ君っ!? どうしたのその目!?」

「ああ、大丈夫だよ。あとで話すけど、遅くなっちゃったし、先に修行しよう」

「……わかった。あとで教えてね?」

「ああ、約束するよ」


 そう言ってお互いに武器を構える。

 アゼルと行う修行は、基本的に実戦形式だ。

 ”剣聖”であるアゼルは、先日”暴風魔法”も取得しているので、暴風魔法×魔武術の修行中なのだ。

 ”黒の死神”の地下闘技場は、硬度や防音に力を入れており、幹部クラスが暴れても大丈夫なように作られていた。


「いくっ!」

「来いっ!」


 アゼルは風魔法の上位互換である暴風魔法を纏うことで、以前以上の速度や威力で戦闘できるようになっているが――


「まだまだ制御が甘いよ! もっと収束させてっ! 魔力の流れが雑だよ!」

「くうううっ!!」


 アゼルは魔武術を使えるのに、身体強化は未習得なアンバランスな天才だった。だから、魔力制御がみんなは十分って言うけどまだ甘く、上位魔法の暴風を制御出来てないのだ。


(これからの成長に、期待しかないな!!)


 しばらく打ち合いながら、アドバイスをする修行を行った。アゼルの体力が限界にきたところで、今日の修行は終了となった。


「ハア、ハア……。ケイ君さ……、強すぎない?」

「アゼルならすぐに、このくらいになるよ! 才能あるし、言えばすぐ修正するしね。直近は、身体強化の会得が目標かな?」

「ぶ~。了解ですよ~」


 疲れて座り込んでいるアゼルが、拗ねたようにジト目な上目遣いで見てくる。

 そんなアゼルを見た俺は――


「ブフッ! ご、ごめん……」


 あまりの可愛さで鼻から出血してしまい、慌てて手で抑えた……。


「え~~。……ねえねえ、これから一緒に生活するのに、支障が出るレベルじゃない? それ?」

「一緒に生活っ!!!? ブホっ!」


 想像したら、更に出血して、俺は崩れ落ちた。


「えぇ~~…………」


 そんな俺を見て、ドン引いている様子のアゼルだった。しかし、横を向いて頬を染めながら、俺を殺しにくる――


「まあ、それだけ、あたしのことを好きってことは……、嬉しいかも……」


 それを聞いた俺は、自分の血だまりに倒れるしかなかった。


「っ!? ケイく~~ん!!」



◇ ◇ ◇

 意識が戻ると、知っている天井だった。


(最近は年中、ここのお世話になるな……)


 黒の死神の医務室、俺はそのベッドにいた。そして、アゼルが看てくれていたようだ。


「あっ! 意識が戻った。ケイ君、平気?」

「すまないな、アゼル……。君の可愛いところを見ると、止められなくてね……」

「っ!!~~~」

 

 なぜかアゼルは真っ赤になってしまった。

 そして、ジト目で。


「さっきの仕返しかな?」

「??」

「まあ、いいよ。ケイ君はそんな感じだもんね…。ハァ、あたしが慣れていくよっ!」


 アゼルは思いのほか、ご機嫌なようで良かった。普段は凛としている彼女だが、俺に対してはフランクというか、甘えた感じというかの表情を見せてくれるのだ。


(本当にご褒美以外の何ものでもない! やばい、また鼻血が出そう……)


「そうそう、さっきの修行のあとに、話すってやつは?」

「ああ……、実は――」


 俺が知っている未来ではあり得ない、リリスが学園に入学してきたことをアゼルに話した。


「そう……」


 アゼルは考える仕草をした。


 実はアゼルとは、幹部と同じく情報共有を行っていたのだ。エルフの里から帰還した時に、アゼルには俺が知っている可能性の未来、ゲーム知識を教えた。彼女自身が迎えたかもしれない未来も……。

 その上でこれから起こるイベントや、魔王や敵勢力との戦い、そして救済したいヒロインたちの話も共有したのだ。

 俺なりの、アゼルへの誠意のつもりだったのだが……。その時の反応は――


「ふ~ん。他にもお嫁さん、迎える予定なんだ…」


 正直、そっちっ!?と思ったが、それはそうかも知れないと、今は思っている。こんなに転生して生きているのに、”推しヒロイン”である”アゼルたち”はどこか別に考えていたのかもしれない……。

 ――俺にとって、”特別過ぎる”ために……。


 アゼルは考え終えて一言。


「とりあえず、ケイ君はリリスのことで、直接動かない方がいいよ」

「その心は?」

「あたしにもだけど……。たぶんケイ君は、リリスに関わるとポンコツになるから」

「…………」


 心当たりしかなかった……。


「だから、リリスの調査はエンジュちゃん達に任せた方が良いよ。確かにケイ君の知る未来と乖離しすぎるのが気になるから、調査は必須だよね」

「そうだよな……。ありがとう、アゼル」

「どういたしましてっ! あたしはケイ君の絶対の味方なんだから、いつでも頼ってよねっ!」


 可愛い笑顔でウインクをするアゼルを見て、俺は再び意識を失うのだった。


「ケイく~~~ん!!!!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ