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【第一部完結】推しヒロインは俺が救う  作者: 白永央はひな
《第8章》獣王国編

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第56話 いないはずの少女

第二部開幕です!


よろしくお願いします!

 俺たちは、黒の死神の本部へ無事帰還した。


 帰還した俺たちを見て、本部のみんなも驚くことが多かったみたいだった。まず、アゼルは思った以上に有名だった。”エルフの剣聖”として剣士界隈では、結構な有名人だったようだ。

 凛とした雰囲気を放ちながらも、少し照れているアゼルを見て悶え死にそうになったのは秘密だ。

 アゼルといえば、ディーを見て「うそ、ディーさん死んだって聞いてたのに……」と驚いていたりしていた。やはりディーは、エルフの里でもう亡くなった人扱いだったようだ。

 オルトとの約束も果たした。多忙な彼に、”秘書を用意する”という約束――

 俺の計画通りに連れ帰った若い黒エルフの娘たち……、総勢百名。

 俺は彼女たちをオルトに紹介しながら告げた。


「この子たち全員が、オルトの秘書だから」


「え?……」


 百名もの秘書を前に、嬉しかったのか声にならないくらい驚き固まるオルト……。


「じゃあ、よろしくな!」


 そう言って俺は歩き出す。


「ちょっ!? マジですか!? マジですかオーナー!!!!」


 叫ぶくらい嬉しかったのかな?……


 それぞれが簡単な顔合わせを済ませ、結果報告も済ませた俺は、自分のオーナールームへ入った。ソファーに深く座り、体重を預けて沈み込んだ。そして、目を閉じて息をゆっくりと吐き出す。

 

(今回、俺はアゼルを救うことができた……)


 しかし、よく分かったことがある。ここはゲームの世界だが、全てがゲームのままでは無いということ。

 

(救済アイテムを使用したのに、アゼルが拒否した時は、本当にどうしようかと思ったぜ……)


 最後は、感情でゴリ押した感じだったけど――


「本当に……、本当に救うことができて良かったよ……」


(ギリギリだった……。今後も、ゲームと同じ条件ではない状況が発生する可能性は、あるよな……)


 俺は天井をボーっと見つめながら思考する――

 これからのストーリーイベントやその対策を。どのようなイレギュラーにでも、対応・攻略できるようにと、考えを巡らせるのだった。



◇ ◇ ◇

 そして新年度――

 二年生になった俺たちの取りまく環境は、入学時に比べると完全に変わっていた。

 ”三者三様”と俺は、入学試験のワースト4。あの頃の俺たちは誰に期待されるわけでもなく、まるで空気みたいな存在だったのだが――


『三者三様だ――』

『ナミエ様、今日も麗しい――』

『モニカ様、神々しいです――』

『ルウ様に、これを食べて頂けるかしら――』


 闘技大会で活躍した彼女たちは、一躍有名人になった。

 最下位からの下剋上ストーリーも相まって、彼女たちの人気は先輩から新入生まで、幅広く受け入れられていた。

 しかし――


『あの一緒にいる奴はなんだ?』

『師匠気どりらしいぞ?』

『前学生会長の弟らしいぞ』

『ただの”紐”か――』


 俺の評価は最低のままだった……。まあ、目立ちたくないし、いいけどね。


「むぅ、あいつら勝手なこと言って。ケイ君がいたから、あーしたちは強くなったのにっ!」


 そう言って、俺の陰口が聞こえた方をナミエが睨むと――


「「「「「キャ~~! ナミエ様、カッコイイ!!」」」」」


 逆に喜ぶ始末だった。俺はナミエの肩に手を置き、大丈夫だよと伝える。


 すると、俺にだけ怨嗟の視線が刺さってくるのは気のせいにしておこう……。


「おはよっ! 弟君と仲間たちっ!」

「おはようございますですです」


(これ以上、ヘイトを集めたくないのに……)


「おはようございます学生会長、副会長――」

「「「おはようございます」」」


 俺たちに話しかけてきたのは、新学生会長になったアイナ先輩と、新副会長のメルル先輩だった。


「この前の件っ! 考えてくれたかい!?」


 ウインクしながら片手でピース、片手で俺を指さしてくるアイナ先輩に、少しイラっとした俺は即答する。


「お断りさせて頂きます」

「なぜ!?」

「忙しいので」

「それだけ!? 学生会入りなんて、すごい名誉なんだよ!?」

「興味ないので」

「マジで!? 何のためにこの学校入ったの!?」

「取り付く島もないですですね~」


 メルル先輩は、薄々無理だと思っていたみたいだった。アイナ先輩は納得いかない表情だったが、気を取り直して三者三様に指を向ける。


「君たちだけでも、どうだい?」

「「「ごめんなさい」」」

「おおぉ…………」

「ですよね~」


 ショックで崩れ落ちるアイナ先輩を、メルル先輩がなだめながら俺たちに「行っていいよ」と手振りをしてくれた。俺も「すいません」と手を合わせて行かせてもらった。


 俺は姉さんが卒業した学生会には興味もないし、時間のリソースを割くメリットも感じなかったので断ったんだけど……。

 予想通りに、アインたち”勇者パーティー”は全員学生会入りしたようだった。


(この前のエルフの里イベントで、アインはきっと自身の発言力の足りなさに気づいたはず……)


 そう、アイン側から見たらアゼルは処刑されたことになっている。

 ゲームでもエルフの里イベントの悔しさをバネに、”さまざまな力”に目が向くようになるのだ。


(そのための、学生会入りだろうな……)


 さっきアイナ先輩が言っていた通り、エイユウ学園学生会のネームバリューはこの世界においては凄まじいの一言なのだ。

 現状では、”勇者”の肩書きよりも強いと思われる。


「アインも次のステップへ進んだんだ。俺も負けてはいられないな」


 俺自身の決意も新たに、新年度を迎えたのだった――



◇ ◇ ◇

 基本的にギャルゲー世界なのだから、妹キャラがいそうな気もするのだが、このゲームの年下キャラは”リリス・バビロン”ただ一人だった。


(姉キャラは三人もいるのに……)


 どうやら制作陣は、年上・巨乳派が多数を占めていたと思われる。俺個人としては、妹・ちっぱい派が少人数であったとしても、踏ん張って生み出してくれたことに感謝したいと思っていた。

 話が逸れたが、リリスは”隠しヒロイン”なだけあって、学園都市に現れるのは救済イベントの戦争時が初めてだ。

 そのため――

 後輩である新一年生に関わるイベントは、ゲームには存在しなかった。


 それなのに――


「新入生代表、リリス・バビロンさん――」


「はいっ」


 静かに立った彼女は、新一年生の間を通って壇上へ向かった。

 歩くたびに揺れる薄水色の髪は、スポットライトを反射して輝いて見えた――


「わたしは――」


 壇上で挨拶をする彼女の澄んだ綺麗な声、それを紡ぐ少し薄いけど小さくて可愛い唇、白く透明感のある肌、バビロン王家の特徴である黄金に輝く瞳、守りたくなるような儚い雰囲気――


 彼女は間違いなく、リリス・バビロンだった。


「……………………」


(リ…………、リリスだーーーーー!!!!)


 新年度早々にして、理解できない展開に俺は、かつてない程に混乱するのだった――


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