表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【第一部完結】推しヒロインは俺が救う  作者: 白永央はひな
《第7章》エルフの里・救済編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

54/59

第53話 アゼルの決断

《アゼル視点》

 時間は深夜――

 あたしは明日の朝、公開処刑されることが決まった。そのため、里の外れにある牢に、入れられていた。目を閉じてはいるが、眠れそうにはなかった。


(……足音?)


 誰かが、こちらに近づいてくる――

 あたしは、その人物を見て驚いた。


「何で、あんたが――」



◇ ◇ ◇

《アイン視点》

 世界樹祭で起こった襲撃は、ケガ人は出たものの、死人を出すことなく鎮圧できた。

襲撃者の剣聖アゼルを含めた二十七名は、全員拘束されている。全員が黒エルフ族だった。


「みんな、大丈夫だったかい?」


 舞台の下へ降り、戦っていたみんなに声を掛ける。


「問題なし」「大丈夫だよ!」

「はい」「うむ」「……うん」


 みんな、ケガも無さそうだった。

(こういう突発的なことがあると、力は必要だなって思うよな……)


 恐らく今回の戦いは、世界樹迷宮でのレベルアップが無ければ苦戦していただろう。


「みなさんもぉ、ご無事で~」


 セラフも降りてきた。


「セラフも。……大丈夫?」


 ラフィがセラフの表情が曇っていることに気づく。

 その視線の先には――


「……あっ」


 意識を失ったアゼルを、エルフの衛兵が運んでいく姿だった。


「彼女たちは、どうなるんだろうね?」


 僕がそんなことを口にすると、セラフは悲痛な表情になって――


「それは……」



 事件はすぐに、エルフ領の各村へ伝達された。各村の族長はすぐに森エルフの里へ招集を掛けられた。そして数日後、全ての族長が集まり臨時族長会が開催される。


「勇者様たちも、参加して下さい。直接狙われた、被害者ですからね……」


 セーラ族長から提案されて、僕たちは参加することになった。


「臨時族長会を始める――」


 セーラ族長から、各族長へ事件の説明が行われた。

 そして――


「ミラ・レヴァイア族長、何か申し開きはあるか?」


 黒エルフ族長へ、話を振った。


「……ありません。全ては私の娘、アゼルが仕出かしたことです」


 ミラ族長は、抑揚のない声で話す。


「なぜ……、なぜ私の娘を狙った?」


 セーラ族長は、怒気を込めて言う。


「少し前から……、村の若い娘たちが、何か集まって話してしたのは知っていたのですが……、理由までは……」


 ミラ族長の目は、仄暗く見えた。


「理由も分からず、若い娘たちが襲撃事件を起こす? あなたは何をしていたんです?」


 セーラ族長は、ミラ族長に責任を問いたいようだった。


「面目なく。しかし、悪いのは娘のアゼルです。剣聖というカリスマを持って、村の娘たちを誑かしたのです」

(頭を下げ、表情は見えないが、実の娘を売る気なのか? この人は!?)


 ミラ族長は、頭を下げたまま更に続ける。


「娘のアゼルは極刑でも構いません。……その他の者には、慈悲を……」

「アゼルだけっ!? アゼルだけを犠牲にする気なのですかぁ!?」


 黙って聞いていたセラフが、我慢ならないと叫ぶ。

 ゆっくりと顔を上げたミラ族長は、心底分からないという顔をして――


「あなたは、狙われた側でしょ?」


 そう言って、首を傾けた。


「っ!!」


 セラフは泣きそうな顔で、唇を噛みしめる。僕はセラフの手を握った。セラフは僕の腕に顔を埋めて涙を隠し、手を強く握り返した。


「……極刑? エルフの法では火炙りだよ?」


 セーラ族長は確認する。


「わかっております。今回の事件は、全エルフ族にとって大事な”世界樹の巫女”を狙った悪質なもの。本来は、一族郎党で断罪されるべき案件……。それを、娘一人で許してもらおうと言うのです……、極刑も当然かと……」


 当たり前のことだと、ミラ族長は言った。

(何なんだ……、この人は?)


 僕は、理解できなかった。一族全体の話なのは分かった。でも、自分の娘をそんな簡単に諦められるのか?

 セラフが、ミラ族長を睨み。


「アゼルは、一族のために戦ったのではないのですか!?」


 ミラ族長は失笑する。


「まさか? ただの私怨ではないのですかね? 私たち一族に、あなたを害する理由なんてありませんよ……」


 僕もセラフも、呆然となってしまった。

 セーラ族長は、ため息をついてから他の族長に問う。


「加害者側からの願いだ。他の族長はどうか?」


 他の族長たちも反対意見はなく、アゼルの処刑を受け入れていた。

 セーラ族長は渋い顔になるが、諦めて裁決を出す。


「では、この度の襲撃事件は、剣聖アゼルの極刑を持って、これ以上の罪を問わないものとする――」

「ありがとうございます……」

「っ!?」


 セラフは、泣き崩れてしまった。

(くそっ! 何でっ!?)


 僕は彼女が泣き止むまで、抱きしめて続けていた――



◇ ◇ ◇

《アゼル視点》

 牢の外はすっかり暗くなった深夜、月明かりだけがあたしを照らしていた――

 族長会の結果、あたしは極刑になったと衛兵が教えてくれた。

 明日、執行されるそうだ……。

(そっか、みんな助かったんだな……、良かった)

 同志や村のみんなが助かったことには、安堵した。

 でも――

(母様は、あたしに会いもせずに帰ったのか……)

 許されないことをしたのは、分かっている。


「でも、娘の心配くらいはして欲しかったな……」


 寂しさで、胸がいっぱいになった。

(まるで子供だな、あたし……)


 母様たちは、黒エルフ族のみんなが開放されるとすぐに、全員で村へ帰っていったそうだ。あたしの執行を、見届けずに……。


「いつから……、あたしは一人になったんだろな……」


 そんな呟きをしていると、人の気配が近づいてきた。

(この気配は――)


「こんばんは、アゼルさん。襲撃、失敗したんですね?」


 嫌な笑顔をしたティラがいた。


「なんの用? あんたの顔を、見たくないと思ってたところなんだけど?」

「フフフ、あなたは洗脳に掛かっていない。気づいているんでしょ?」


 やっぱり……、そういうことか――


「……魔族」

「ご明察」

「あたしも途中までは、洗脳されていた?……いや、誘導されただけか?」

「途中までは負の感情を刺激・増幅させていたんですよ~。洗脳には至りませんでしたが、その通り! 誘導はしてましたね~」

「くっ!」


 あたしは、悔しそうな顔をしてしまう。


「ハハッ! 良い顔です。……そんなあなたにラストチャンスです。……私たちの仲間に――」

「断る」


 ティラの笑顔が引きつる。

(フフ、良い顔だ)


「理由を伺っても?」

「お前が嫌いだから」


 ティラは手を顔に当て、天を仰ぐ。


「明日、処刑されるんですよ?」

「それ以上に嫌ってことよ」


 ティラはため息をついた。


「そうですか、残念です。……さようなら、剣聖アゼル――」


 そう言い残し、闇に消えていった――



◇ ◇ ◇

 そして冒頭へ戻る――


「何で、あんたが――」

(今日のあたしは、人気者かい?)


「――勇者様」


 そこに現れたのは、勇者アインだった。


「アゼルさん、こっそり逃げないか?」

(こいつは、何を言っているんだ?)


「ハア、なんで?」


 アインは必死な形相で、声を殺して叫ぶ。


「なんでって! 君が明日、処刑されていまうからだろっ!!」

(なんでこいつが、こんな必死なんだ?)


「知ってるよ」

「知ってるならっ!」

「もう、いいんだよ。みんな助かった。セラフも無事だっただろ? いいじゃないか」


 アインの顔が歪む。


「君は助かってないっ! それにセラフは泣いてるんだ!」

(あたしはついでかな? セラフの涙を止めてあげたいとか? いや、みんな助けたいって感じかな?)


「そう……、ありがとう」


 あたしが笑顔で感謝を言うと、アインは安心した顔になった。


「よかった、じゃあ――」

「あたしは、ここに残るよ」

「……え?」


 てっきり、一緒に逃げる意味での感謝と思ったみたいでアインは固まる。

(ごめんね……)


「あたしは残る――もしも、あたしが逃げたらどうなるか分かる?」

「それは……」

「今度は、一族の誰かが処刑される。いいえ、逃げた罪を重ねて何人も処刑されるかもしれない。あなたは、それも全てどうにかできるの?」


 アインは悲痛な表情になる。

(ごめんね、意地悪なことを言って……)


「それが現実よ勇者様。あなたにも救えないものがあるのよ。……それよりもさ、あたしの代わりにセラフを、あたしの”姫”を支えてあげてね……」


 アインは俯き、拳を握りしめていた……、拳から血が滴り落ちるくらいに――

 静かに去った勇者様に、あたしは感謝して目を閉じた。


(ありがとう勇者様……、セラフをお願いね……)


「…………」


 静寂の中、あたしは再び目を閉じた――



「諦めてもらう訳には、いかないな――」


 闇夜から急に声がして、あたしは慌てて目を開く。

 鎖で繋がれており身動きは取れないが、咄嗟に距離を取ろうとしてしまう。


(全然気配を感じなかった!!)


 そこには、

 漆黒を纏った者が、あたしを見下ろしていた――


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ