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【第一部完結】推しヒロインは俺が救う  作者: 白永央はひな
《第7章》エルフの里・救済編

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第52話 剣聖アゼル・レヴァイア

《セラフ視点》

(アゼル……、どうして?)

 わたしは、最近覚えた魔武術で風を纏った。

(世界樹様の加護が付いている今なら、十全に使えるはず!!)

 風によって巫女装束や、わたしの髪が揺れ動く――

 風に包まれることで防御力が上がり、風によって足元も少し浮いた。

(身体が軽い。これが本来の魔武術――)


「操られてないのなら、何か彼女にも理由があるはずだ! セラフ、二人でアゼルを止めよう!」

(アインさん……。ありがとうございます!)

「はい! 必ず!!」


 だってアゼルは、わたしの”騎士様だった”のだから――



 わたしたちエルフ族は、エルフ内でもさまざまな種族がいる。

 その一つが、ダークエルフ。黒エルフとも略される。因みに、わたしは森エルフだ。

 エルフは長命種。だからか幼年期も長い。50歳を越えると、急激に成長して今のような成人した姿、青年体になる。

 アゼルとは種族が違っていても同年代ということもあって、幼年期を一緒に過ごすことが多かった。

(勇者様の話だって……、一緒に楽しく話したじゃない……)

 わたしのジョブが『魔聖』、アゼルのジョブが『剣聖』。

 種族は違っても仲が良かったから、大人たちは将来の『姫』と『騎士』だと、わたしたちをもてはやしたっけ……。

 幼年期は本当に仲が良かったし、一緒によく遊んだ。ジョブを得てからも、姫や騎士なんて関係ないと言って仲良くしていたんだけど――


 転機は、幼年期を越えた時だった……。


 急激に大人の身体に成長した時から――周りが、わたしだけを囲いだした。 


『巫女修行が必要だ――』

『魔聖として魔術を覚えるんだ――』

『森エルフは、エルフ族の代表だ――』

『族長の娘としての態度を――』


 急激に変わる身体の変化だけでなく、わたしへの期待も急激に変化していった――


 最初の内は、こっそりと遊びに来ては「修行が大変でさ」などと、近況や楽しかったことなんかを言いに来てくれていたアゼル。

 わたしの身体の変化が進むにつれて、だんだんと来なくなってしまった。


 いっぱい修行して、いっぱい魔術を学んで、いっぱい頑張っていれば……。いつか、また会えるなんて思っているうちに、お勤めとして学園都市へ入学してしまった。



 そして、現在――


(やっと会えたと思ったら……、お前を殺すって! 何でなの!? アゼルっ!!)


 わたしは風を纏って、アゼルまでの距離を一瞬で駆け抜けます――


「はあっ!!」


 まさか、わたしが突っ込んでくるとは思わなかったようで、アゼルの反応が遅れました。

 風を纏った扇で横一線――鋭い風の刃がアゼルを襲う。


「くっ!」


 風を纏ったレイピアの袈裟切りで、相殺する。


 わたしは縦横無尽に飛び回り、扇の風刃を繰り出しながら叫ぶ。


「わたしが知ってるアゼルは、理由もなくぅ! こんなことを、しない!」

 

 アゼルがわたしを睨むが、わたしは怯まない――


「だって……、わたしの騎士様なんだからぁ!!」


 アゼルは驚いた顔になり、その後、悲痛な表情になった――



◇ ◇ ◇

《アイン視点》


「わたしが隙を作ります――」


 セラフは僕にそう囁き、風を纏ってアゼルへ突撃していった。

(いつもよりも、魔武術を使えている……)

 世界樹の加護のおかげか、風や魔力の流れが力強かった。


「セラフ……、僕は君を信じるっ!」


 自分も飛び出したい気持ちを抑え、剣を構え重心を下げる。次の一撃のため、集中する。

 セラフの猛攻の中でも、こちらに意識を向けているのが分かった。

(警戒されている……、隙ができない……)


「だって……、わたしの騎士様なんだからぁ!!」


 セラフの叫びの瞬間――隙ができた。

(っ!! 今だ――)


 僕は、溜めていた力を開放する。

 今までで最速の移動。

 一瞬でアゼルの目の前へ――その勢いで剣を振り切る――


「っ!!」


 僕は咄嗟に首を捻り躱したが、頬にアゼルのレイピアが掠った……。


「フフ、よく避けたね? さすが勇者かな?」


 アゼルは微笑んで、そう言った。

(危なかった。あのまま突っ込んでたら、僕は顔を貫かれていた……)


 僕の最速の一撃だったが、その直線上にレイピアが待っていたのだ。

(たしかに隙ができたはずなのに……。どうして反応できた?)


「不思議そうね? あたしはこれでも剣聖だよ? そんな直線的な攻撃を対処できないとでも?」

「……たしかに、だね」


 僕は悔しいけど、納得してしまった。これが『剣聖』、剣士の最高峰――


「アインさんっ! 平気ですか?」


 僕の隣へ、セラフが戻ってきた。


「大丈夫さ。本当に強いね、アゼルさん」

「ええ、でも止めますぅっ!」


 セラフの風が、更に強くなる。


「よしっ!」


 僕も光を、最大限に纏う。


「今度は僕が前へ出る! セラフは援護を!」

「わかりましたぁ!」


 アゼルも更に強く風を纏った。


「さあっ! 来いっ!」


 直線的では、カウンターを合わせられるのが分かった。だから、僕は直線で突撃しつつも途中で軌道を変化させ、回り込むような形で攻め込む。僕に意識が向いた様子を見て、セラフも切断力と連射力を上げた風刃で攻撃をしてくれた。

 アゼルは僕に視線を向けつつ、セラフの風刃を自身が纏った風で上手に往なしていた。僕が、遠心力を付けて放つ一撃も往なす。その勢いのまま、角度を変えて高速の連撃を打ち込むが、全て往なされてしまった。


(くそっ! なんて技量なんだっ!?)


 自身が光になったように高速で動く僕の攻撃を自在に往なし、僕が少しでも体勢崩すとレイピアで反撃してくる――援護してくれるセラフの攻撃も当たらない――


(ならばっ!)


 僕は一度距離を取って、腰を落として力を溜める。


「閃光っ!!連っ!!」


 光を纏った刺突が、流星の如くアゼルを襲う――


「ハハッ!!」


 アゼルは、風を纏ったレイピアで刺突を連続で放つ――


 ガガガガガガガ…………ッ!!!!


「ハァ、ハァ。信じられない……」


 お互い刺突の姿勢で止まっていて――お互い無傷。

(相殺されたのか!?)


「今のは良かったよ。勇者さん」


 そう言ってアゼルは、腰を低くする。

(まずいっ!?)


 僕は技の硬直で、あと数瞬は動けない……。

 アゼルが飛び出し、僕の心臓を貫こうとするが――


「させませんっ!!」


 アゼルの横から、突風が吹き荒れる。


「ちぃっ!」


 体勢が崩れたアゼルは、そのまま距離を取った。


「助かったよ! ありがとうセラフ」

「いいえ、アインさん」


 僕たちを見て、苦々しい表情をしたアゼル。


「やっぱり、二対一は辛いね……、狙う方を変えるか?」


 そう呟いたかと思った瞬間――


(っ! 危ないっ!) ギインッ!


 セラフを狙った横薙ぎを、僕が防ぐ。


「まだまだっ!!」


 ギインッ! キインッ! ギャイン!


 アゼルは僕ではなく、セラフを徹底して狙ってくる。

 セラフはアゼルの高速剣技についていけず、反応できていないため僕が防ぐしかない!!

(くそっ!! 反撃できないっ!!)


 セラフは反応できず、ただ守られている状況に涙ぐんでしまうが――


 その時、強い瞳になった。


「アインさんっ!! ごめんなさいっ!!」


 瞬間――

 セラフを爆心地として暴風が吹き荒れた――


 ドガアアアア!!!!


「なっ!?」


 虚を突かれたアゼルは、吹き飛ばされた。


「アインさんっ!!」

(ああ。分かっていたよ――君のやりそうな、力技な作戦だね)


 何となく察した僕は、謝られた瞬間に全力で伏せて、地面に張り付いていた。

 そして立ち上がった僕は、吹き飛ばされて無防備なアゼルを見上げている。

 背中に衝撃――セラフの風魔法で、僕はアゼルに向かって飛ばされた――


「アゼルーーー!!!!」



◇ ◇ ◇

《アゼル視点》

(まさか、あの状況で自爆技なんてね……)


 セラフの発生させた爆風に吹き上げられたあたしは、空を舞っていた。


「アゼルーーー!!!!」


 勇者が、あたし目掛けて突っ込んでくる。

(この体勢じゃ風を使っても避けきれないか――)


 チラッと、下から見上げているセラフを見る。

(……セラフ――)



 あたしは、幼年期の頃からセラフと仲が良かった。

 エルフ領のみんなから将来の『姫』と『騎士』だと。悪い気はしなかったし、実際あたしはセラフを守る剣になろうと思っていた。

 成長期に入ると、お互いみるみる成長していった。最初は気にならなかったが、だんだんと胸の大きさに差が出てくると、小さな嫉妬心が芽生えたのは本当だった。

 ちょうどその頃、貧乳を理由に結婚や交際を断られることが、黒エルフ族の中で増えてきた頃だった。始めはあたしも大きな問題だと思っていなかったが、それが数年続き、よく調べたら百年近く続いている事象だと知り、組織を作ったのだ。

 危機感を抱いてしまってからは、セラフの胸を見てイラ立ってしまう自分が嫌で、彼女に会いに行く回数が減ってしまった……。



(今はセラフの大きな胸を見ても、そこまでの嫌悪感を感じない――)


 あの時の、耐えがたい憎悪は……、

 なんだったのだろうか?


(あたしも少なからず、精神汚染されていたということか……)


 勇者が、すぐそこまで迫っていた。

(これで同志も、セラフも、みんな助けられたよね――)


 あたしは目を閉じた。


 勇者の一撃を受け止め、意識が暗転した――


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