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【第一部完結】推しヒロインは俺が救う  作者: 白永央はひな
《第7章》エルフの里・救済編

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第49話

《セラフ視点》


「あうあうあ〜〜」


 わたしは、今日のことを思い出して恥ずかしくなり、枕に顔を埋めて足をバタバタさせていた。


「アインさん……、大きい胸が好きなんだ……」


 泉の精に切り掛かった時の叫び声が、頭の中で何度も再生されてしまう。

(アインさんも、そんなことを考えてたんだ…)


 そういえば、このパーティーはみんな胸が大きい気がする。アインさんが選んで、集めたわけじゃないけど……。

 最後はみんなで、アインさんの顔をたくさん殴ってしまったけど――みんな、恥ずかしさが99%だった気がする。残り1%は、他の子への嫉妬かな?


 わたしは、自分の大きな胸が好きじゃなかった。だって、足下が見えなくて危ないし。それに、みんな驚いた顔をした後に、ジロジロと見てくるのも嫌だった。

(パーティー内でも、この里でも、わたしが一番、大きいみたいだし……)

 そんなことを考えながら、自分の胸を持ち上げてみる。

(重い……)

 これのせいでわたしは、バランスをよく崩して転んでいる気がする……、だけど――


「アインさんが喜んでくれるなら……、悪くないかも?」


 わたしは初めて、この大きな胸に感謝した――



◇ ◇ ◇

《アイン視点》

 翌朝になっても顔の腫れが引かなかったが、エルが「昨日はごめんなさい」と回復魔法を掛けてくれた。他のみんなも、昨日のような表情はしておらず、どことなく気まずそうな表情をしていた。

(一晩明けて、みんな冷静になってくれたようだね……)


 朝食のハニーバタートーストを食べながら、僕はみんなに昨晩考えた、泉の精への対策を話そうとするが、


「みんな、聞いて欲しい――」


「美味しい〜!、あま〜〜い!」「うんうん!」

「ハチミツとバターが本当に良い感じにマッチしてる!!」

「これは何枚でもいけるよ!!」「うんうん!」

「やっぱり美味しいですぅ〜」


 みんなハニトーにメロメロで、聞いてくれそうになかった。確かにすごい美味しい。アーキがいつも以上に、うんうん言ってるのも納得の味だった。


 みんなが満足して手が止まったタイミングで、話を切り出した。


「みんな、僕が考えた泉の精対策を聞いてくれるかい?」


 今度はしっかりと、みんなの視線が僕に集まった。


「熟練度とレベルアップの効率的にも、きっと良いアイデアだと思うんだよ。それはね――」



◇ ◇ ◇

《ウリエ視点》

「ウリャーー!!」 ドシャッ!!


 エルにピンポイント聖結界を張ってもらい、あたいが突っ込んで一撃で倒す。


「お疲れ様です。ウリエさん」

「慣れてきて、簡単に倒せるようになったね!」


 二人で、ハイタッチする。

 あたいは大声で――


「終わったよー! 交代ー!」

 あたいたちは、次のチームと交代した――



◇ ◇ ◇

《ラフィ視点》

(確かに、ナイスなアイデアね……)


 私は指先に圧縮に圧縮を重ねた水を、可能な限り高速回転させていた。


「コッチですっ!!」


 アーキが泉の精の周囲を高速移動しながら、けん制をして、気を引いてくれていた。

(二人一組だったら、経験値の旨みがパーティーの比じゃないしねっ!!)


 指先に溜めた水の弾丸を放つ――


『っ!?』


 泉の精が気づいた時には、核を撃ち抜いていた。


「「お疲れ様!」」


 二人で拳を突き合わせた――



◇ ◇ ◇

《セラフ視点》


「行きますぅ!!」


 掛け声と共に、わたしを守ってくれていたミカエラさんが横に避けます。

 暴力的な旋風が、泉の精を貫きました。


「お疲れ様、セラフ」

「お疲れ様ですぅ、ミカエラさん」


 二人で笑い合う。


「確かに、これは効率良いね。パーティーが変われば、すぐにリポップする所もいいね」

「本当にそうですねぇ。熟練度も上がりが良いですぅ。それに――」



◇ ◇ ◇

《アイン視点》


「ハアッ!!」 ザシュ!


 僕は光を纏い、泉の精を切り裂いた。

(レベル上げ、熟練度上げ、いろいろとメリットを説明したけども、一番のメリットは――)


「……泉の精との、やり取りを聞かせたり、聞いたりしなくて良いのが、一番のメリットだな」


 僕はしみじみと思いながら、予備の剣を拾った。


 こうして僕たちは、世界樹迷宮が閉まる日まで、泉の精を狩りまくったのだった――



◇ ◇ ◇

 今日の夜に世界樹迷宮が閉じるとのことで、里のエルフたちは総出で神事の準備をしていた。世界樹の周りに木魔法で舞台を造り、飾り付けをしていく。

(ここでセラフは、神事を執り行うのか……) 


 詳しくは聞いていないが、セラフは今代の『世界樹の巫女』らしく、世界樹迷宮が閉まるタイミングに合わせて、毎年神事を行っているそうだ。

 神事のために身を清めているそうで、今日は早朝から世界樹迷宮1層の、”世界樹の泉”へ行っているそうだ。僕が今朝、起きた時にはもういなかった……。

 そのため、迷宮探索は昨日までで終了。今日は、『世界樹の巫女』だけが迷宮に入れる決まりと、セーラ族長が教えてくれた。



 だんだんと、辺りも暗くなってきた頃――

 時間までと思い、族長宅の前で素振りをしていると、セーラ族長が声を掛けてくる。


「勇者様、神事が始まるまでの間も屋台でいろいろ食べれますから、お仲間と見に行っていらしたらどうです?」

「屋台ですか?」

「ええ。この神事も一種のお祭りになってましてね、神事が始まるまでは皆で騒いで、世界樹を喜ばせるんですよ」

「そうなんですか?」

(みんな美味しいものが好きだし、行ってみようかな……)

「ありがとうございます。みんなを誘って、行きますね!」


 セーラさんは、笑って頷き。


「そうして下さい。みなさんには先に伝えたので、今出掛ける準備をしてますよ」

「じゃあ汗だけ流して、みんなを待ちますね!」

「はい。私は用意などありますので、先に行ってますね」


 セーラ族長はそう言って、先に世界樹の方へ歩いて行った。


 僕はすぐに用意をして、外でみんなを待っていた――


「あっ! アイン、待たせちゃった?」


 ウリエの声に、振り向くと――

 エルフの民族衣装を着た、みんなが立っていた。

 若草色や薄青色、薄紫色の淡い色にさまざまな花や葉の模様がある浴衣。髪型もいつもと違って纏めていたりして、うなじが出ていて色気があった。


「どう? アイン?」


 ラフィが寄ってきて、聞いてくる。

 近づかれると、胸元の隙間が気になってしまい、横に目を逸らしてしまった。


「みんな綺麗で、目のやり場に困る……かな?」


 僕は照れて、そんな返ことをしてしまった。

 ラフィはちょっと頬を赤くして、僕の腕を抱きしめる。


「ふ~ん……、そうなんだ……」

「あっ! あたいも~!」


 反対の腕を、ウリエにホールドされる。


「えへへ」


 下から笑顔で覗き込んでくる、ウリエの破壊力もヤバかった……。


「……じゃあ、行こうか」


 僕はなんとか理性を保ちつつ、二人にくっつかれたまま歩いて向かった。


「あの~。私たちも、いますからね~」

「まあ、良いじゃないかっ!」

「……あったかそう」


 エル、ミカエラ、アーキも一緒に向かったのだった。



◇ ◇ ◇

 どうなることかと思ったけど、祭り会場に到着したら開放されて、みんなは思い思いの食べもの屋台へ突撃していった。両腕が少し寒くなったけど…。

(助かったような、寂しいような……) 


 難しい気持ちになったものの、世界樹周辺の賑やかな様子を見て、気持ちを切り替えた。

 世界樹迷宮の門の前に、朝から造っていた大きな舞台があり、舞台を中心に左右へ屋台が連なって並んでいた。いろいろな軽食から甘いものまで食べ物が多く、その他にも輪投げや葉っぱの型抜きなどといった遊戯もあった。

(森エルフ意外のエルフも、来ているんだ……)


 昨日までは居なかった、別の里のエルフも参加しているようで、さまざまな種族のエルフがいるようだった。

 僕はそんなものかなと、特に気にすることなく祭りを楽しんだ――



◇ ◇ ◇

 

 シャンッ


 喧騒の中、澄んだ鈴の音が響いた――

 その瞬間、先程までの喧騒が嘘のように静まりかえった。


 そして皆が、舞台の上に注目する。


 そこには……、月明かりに照らされたセラフが、幻想的な衣装で凛と立っていた――

 

 シャンッ


 鈴の音と共に舞が始まる――

 

 淡い翠色の巫女装束は、舞と共に揺れるかがり火を受けて淡い光を魅せていた。

 優雅な舞で扇が揺れると、扇から淡い光が溢れだす。

 鳴らす鈴の音は、まるで心を浄化するかのような不思議な音色をしていた。

 舞うセラフの表情はいつもの可愛らしい感じとは違って――綺麗だった。


 僕は完全に見惚れてしまっていた。いや、きっと僕だけじゃないだろう……。


 舞が佳境に入る頃、世界樹が淡く光りだす――

 幹や枝、葉に至るまで世界樹から出た光がセラフへと降りそそいだ。まるで世界樹が意思をもって、セラフの奉納への感謝をしているかのような……。

 

 舞を終え、世界樹の光に包まれたセラフは、

 まるでお伽噺の精霊女王様みたいな美しさだった――


 息を整えていたセラフと目が合った時――

 セラフが微笑んだ――


 瞬間、僕は――顔がすごく熱くなって、胸の鼓動が激しく打っているのを自覚した。


(あれは反則だよ!)


 そんなことを考えながら、恥ずかしさで後ろを向くと……。

(……何しているんだ? あの人たち――)


 ドガアアアッン!!!!


 舞台や複数の屋台から、

 突然爆発が起こったのだった――


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