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推しヒロインは俺が救う  作者: 白永央はひな
《第7章》エルフの里・救済編

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第48話

《アイン視点》

 盛大な歓迎を受けた僕たちは、族長の大きなツリーハウスで休ませてもらうことになった。滞在中はずっと使って良いと、部屋を一つずつ借りてしまった。

(今日は、いろいろとあったなぁ……)

 幻想的なエルフの里、初代勇者の伝説、楽しかった歓迎会、小さな女の子からの求婚、そして、セラフからも――


(ダメだぞっ! 今でさえ、ウリエとラフィに振り回されているのに!!)


 でも、正直に言えば、とても嬉しい……。


(ケイ……、僕はまた、困難な壁にぶつかったようだよ……)


 遠くにいる親友へ、想いをはせた夜だった――



◇ ◇ ◇

 翌朝、僕たちはセーラ族長の案内で、世界樹の足元へ来ていた。

 下から見上げる世界樹は、てっぺんが見えないほど高く壮大だった。世界樹の幹や枝、葉の一枚一枚から淡い光が溢れていて、生命の神秘を感じることができた。


「すごい……」


 誰かが呟いた一言に、みんな同意していた。言葉も出ないとは、こういう事を言うのだろう。


「そうよね、そうよね。初めて見た人は、大体が同じ感想を言うのよ」


 セーラ族長は、誇らしげに話してくれた。

 そして、世界樹の足元の一部に幻想的な扉が在った。


「これが……、世界樹迷宮の入口よ」


 世界樹迷宮――

 年間で、春の時期にだけ開放される迷宮。

 大体この頃から、セラフが行う予定の神事までの間だけ開放される迷宮なのだ。


「一説にはね、世界樹になった勇者様と真祖様が、子孫たちが元気にやっているかと見に来ているって話もあるんだよ」

(エルフのみなさんは、ロマンチックな話が大好きみたいだなぁ~)


 そんなことを思いながら振り向くと、ちょうどセラフと目が合った。


「っ!!」


 セラフは顔を真っ赤にして、横を向いてしまう。


(……可愛い。……ハッ!?)


 ラフィを見ると、ジト目で自身の口を指さしていた。

 僕は自分の口に触れると緩んでいて……、どうやらニヤけていたようだった。

(あちゃ~~)


 僕はみんなに背を向けた。


「よ、よし! みんな行こうか!」


 迷宮に入る時、誰も返事をしてくれなかった――



◇ ◇ ◇

 世界樹迷宮に入ってからは、いつも通りにしっかりと連携を取りつつ戦闘を行えていた。

(さっきのことで平気か心配だったけど、みんな戦闘になれば大丈夫だったようだ……)


 世界樹迷宮は期間限定なため、深度は浅く20階層が最深部とのことであった。

 幻想的な森林地帯が続いており、魔物はトレントやキノコ系、花系が中心だった。

 第10層のボス、ビックトレントを倒したところで休憩になった。


「お疲れ様、みんな大丈夫かい?」

「だいじょぶ!」「問題ないわ」「平気ですぅ」

「大丈夫だよ」「問題ないです」「うん」


 今回の迷宮探索には、目的をもって臨んでいた。

 まずは、魔力操作を常に行い、身体強化を使用し続けること。身体強化の熟練度を上げていき、最上位スキルの”魔武術”の発現を目指すのだ。

 そして、基本のレベル上げ。効率的な場所を知ってたらと思い、エルフの里へ出発前にケイに聞いてみたのだ、そんな場所はないのかと……。

(……本当に知っているんだもんなぁ、ケイ……)


 第17層の北西部にある泉を目指せと言われた。レベル上げも、熟練度上げもそこで良いと言っていた。

(今日中に16層まで攻略して、明日から迷宮開放中の時間を、17層で集中して修行をしよう!)


 僕たちは急ぎながらの攻略になったが、目的の階層まで進むことができた――



◇ ◇ ◇

 翌日――

 僕たちは、目的の泉の前まで来ていた。


(ケイが言うには……)


 僕は、予備の剣を泉に投げ入れた。

 次の瞬間、泉は眩く輝き、中心から波紋が拡がっていった。

 

 そして――

 金の剣と銀の剣を持った、泉の精が現れた。


 泉の精は女性型で、中心の核以外は泉の水でできていた。


『あなたが落としたのは、この金の剣ですか? それとも銀の剣ですか?』


(答えは……、本当にこれ言うのか?)


「…………あなたが欲しい」


 僕はみんなにジト目で見られつつ、手を彼女に差し出した――

(事前に説明したのにっ! なんで、みんなそんな目でみるのさっ!)


『…………』


 しばらく見つめ合い。


『私はお前のものにはならない!!』


 泉の精が、襲い掛かってきた――


「みんなっ! いくよっ!」

「「「「「…………」」」」」

(返事をして~~!!)


 泉の精の周りに多数の水球が出現し、即座に撃ち出してくる。

(速いっ!) シュインッ!

 発生の速さにも驚いたけど、撃ち出された攻撃の速さにも驚いた。何とか避けた弾道の先を見ると、深く地面が抉れていた。


「想像以上の攻撃力だっ! みんな気をつけて!」

「「「「「了解っ!」」」」」


 雨の様に降りそそぐ攻撃、これは身体強化が切れたら避けられないだろう……。


「くぅっ!!」 バシュウッ!


 ミカエラは身体強化を掛け、自己強化魔法を掛けてやっと逸らせている。


「これは正面から受けたら、盾を貫通しそうだっ!!」


 それでも捌けるのだから、ミカエラの技量も上がっていると言える。


「っ!!」 ビシュッ!


 エルは聖結界を全面に、それも弾きやすいように菱形にして展開して、後ろへ流していた。


「やはり、真っ直ぐな攻撃にはこの形が良いようですねっ!」


 イメージで魔法を使うという方法を知り、エルは自由な形を手に入れたようだ。


「…………」


 身体強化を掛けたアーキは、黒い幻影の如く動き回り、水弾が捉えることができない様子だった。


「せいっ!……せいっ!」


 動き回りつつ、時折波動攻撃を水の精に飛ばしてけん制してくれていた。


「どっせいっ!」 バシンッ!!


 ウリエは、器用なことに打ち返していた。


「どりゃどりゃ~~!!」 バシバシバシッ!!


 ウリエは身体強化の熟練度がすごく上がっているのだろう、両手斧である進化の斧をすごい勢いで振り回していた。


「フフフ……」 ヒュインッ!


 ラフィは手を前に出し、自身の周りに水球を展開して撃ち出していた。


「水属性の賢者として、負けられないものね?」


 相手の水弾に対して、最初は相殺だけだったものが、だんだんと押し返す勢いになっていった。 


「行きますよぉ~」 キュインッ!


 セラフは両手を広げ、自身を中心とした竜巻を展開して弾いていた。


「どいて、くださいぃ~~~!!」


 みんなが射線上から避けたのを確認したセラフは、両手を前に突き出す。


「トルネード・ブラスト~~!!」


 射線上の水弾を全て弾き飛ばしながら、暴力的な旋風が泉の精を貫いた――


『私の身体は好きにできても……、心はお前のものには……、ならないわ……』


 そう言って泉の精は消え、泉の畔に僕が投げ入れた剣が落ちていた。


「「「「「…………」」」」」


(ええぇぇぇ、何この後味の悪い感じ……)


 僕は、無言で剣を拾った。



◇ ◇ ◇

 僕たちは話し合いをした結果、泉に投げ入れる係を交代制にしようという話になった。


「じゃあ、あたいから?」


 ウリエが予備の斧を投げ入れると――


『君が落としたのは、この金の斧かい? 銀の斧かい?』


 イケメン風の、泉の精が現れる。

(ええ!?)

 ウリエは少し照れながら、手を伸ばして。


「あたいは……、君が欲しい」


 ズキンッ、なんか嫌な気分になった。


『君は私に相応しくないよっ!!』


 水の精が襲い―― 

 ズシャッ!! 


 僕はいつの間にか、光を纏って水の精を一刀両断していた。


「「「「「……いやいや、ダメでしょ?」」」」」


 僕は振り返って頭を掻きつつ、


「ごめん、咄嗟にやっちゃった」


「まったく、次は私ね」


 ラフィは予備の杖を、最近杖とか使ってない気が……。まあ杖を投げ入れた――


『君が落としたのは、この金の杖かな? それとも銀の杖かな?』


 キザっぽい泉の精が現れる。

(ぬっ!?)

 ラフィは頬を染めて恥ずかしがりながらも、手を前にだして。


「……私はあなたが……、欲しいかも」


 ズキリ!! 胸が締め付けられる。


『ハッキリしたまえっ!…………え?』


 僕はいつの間にか、光を纏った状態で剣を振りぬいていた。光の波動が遠くへ行くのを見守るみんな……。


「うん。間違ったみたいだね」


 僕は、そう言って頭を掻いた。


「「「「「何を!?」」」」」


「次は、わたしが行きますぅ~」

 セラフが予備のブレスレットを、泉に投げ入れる――


『あなたが落としたのは、金の腕輪かい? 銀の腕輪かい?』


 勇者風の、水の精が現れる。

(なぜに勇者!?)


 セラフはプルプルと恥ずかしさで震えながらも、手を差し出す。


「あなたがぁ……、欲しい……ですぅ」

(グウッ!! くそっ!! 怒りが……)


『貴様のような! でかい胸の女には興味はな~~い!!』


「大きい胸だって! 良いじゃないかっ!!!!」


 僕は光を纏い飛び掛かって、水の精を滅多切りにした。


「「「「「…………」」」」」


 僕は振り返り、


「今日は、もう帰ろうかっ!」


 満面の笑顔で、僕はみんなに言った――



◇ ◇ ◇

 族長の家に着いて――


「勇者様、その顔はどうしました!?……そんなに激戦だったのですか?」


 僕の顔を見て、セーラさんが心配して声をかけてくれる。


「だうぃじょぉぶ、どぅえず」

「全然、大丈夫に見えないけど。平気なのかしら?」

 

 僕は、顔だけが異様に腫れあがっていた――


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