表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
推しヒロインは俺が救う  作者: 白永央はひな
《第7章》エルフの里・救済編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

48/55

第47話

《アイン視点》

 春休みに入り、僕たちはエルフの里を目指していた。

 エルフの里へ向かっている理由は二つあった。

 一つ目はレベル上げ。闘技大会で自分たちの課題を確認できたので、無属性魔法や魔法操作の熟練度上げ、更にレベルも上げ、さまざまな環境での実戦経験も積みたいと思っていた。

 エルフの里には、春にだけ入れる特別な迷宮があると聞いた。僕たちは、そこに挑戦しようという話になったんだ。

 二つ目は、セラフへ里帰りするようにと手紙が来たから。

 セラフは森エルフ族長の娘らしく、春休みの時期に執り行う神事に参加する必要があるそうだ。

 そんなわけで、僕たちはエルフの里までの旅の途中だった――


「ねえアイン。今度はセラフを落とすの?」


 隣を歩いていたラフィが、急にそんなことを聞いてくる。


「え?」

「アインならやりそ~。現にあたいたちは、帰省が切っ掛けだし?」


 反対を歩いていたウリエも同意してくる。


「ええ!?」

(僕は、そんなに信用がないんだろうか?)


「今回狙われるのはセラフなんだからっ! 気をつけなよ~」


 後ろを歩いていたセラフに、冗談っぽくウリエが言うと、


「えっ!? あうぅぅ」


 セラフは慌てて顔を伏せてしまうが、覗く頬は赤く染まっていた。


「ちょっ!? 意識しちゃうからっ! 逆にそういうことは、言っちゃだめだよ!」


 ラフィがウリエを嗜める。


「あ~。あたい、やっちゃった?」

「まったくも~~!」

(二人でいろいろと言っているが……、恥ずかしがっているセラフがちょっと可愛いと思ったことは、口に出さないようにしよう)


 僕は少し賢くなったと、自画自賛した――



◇ ◇ ◇

 僕の故郷、ジパン辺境伯領のイセ村が在った場所の更に先には、大森林が広がっている。正確な広さが分からないくらいの、大きな大森林だ。

 その大森林の中心には、世界樹と呼ばれる古代からある大樹があった。世界樹を中心にしてエルフの里があり、エルフの民は世界樹の守り人とも呼ばれていた。


「この方向で合ってる?」


 僕はセラフに、エルフの里の方向を確認した。

 この広大な大森林は、エルフの案内無しではエルフの里に辿り着けないと言われている。


「はい~。この方角ですぅ。森が教えてくれますからぁ」


 セラフの話だと、一部の森エルフは森の声が聞こえるのだという。


「ふんっ、ふ、ふん~」


 セラフは森林がとても好きなようで、森に入ってからとても機嫌が良いようだった。

(もしかして……、鼻歌出てるの気づいてなかったりして?)

 その時、エルが無邪気にも聞いてしまった。


「セラフさんのその歌は、故郷の歌かなんかですか?」


 セラフはバッと振り返り、みるみるうちに顔を赤くしてしまう。


「声が……、出てました?」

「いいえ。先ほどから鼻歌で楽しそうでしたので」


 セラフは、両手で顔を隠して座り込んでしまう。


「うううぅぅ~~!!」


 とても恥ずかしかったようで、悶絶しているようだった。

(……可愛いな、セラフ)


「っ!?」


 突然両足に痛みが走る。

 足元を確認すると、ウリエとラフィがそれぞれの足を踏みつけていた。


「どうしてだい?」


 ウリエとラフィに聞いてみた。


「「顔がニヤけているからっ!!」」


 僕の表情筋は成長していなかったと、反省するのだった――



◇ ◇ ◇

 鼻歌を封印したセラフに続いて、しばらく歩いていると……。


「ちょっと待って下さいねぇ~」


 大森林の中でも、特に方向感覚がおかしくなりそうな場所に着いた。


「うん、間違いないですね。ここからはエルフの里周辺、迷いの森に入ります。絶対にわたしから離れないで下さいねぇ~」


 そこへ踏み入った瞬間から、完全に方向感覚が無くなった――


「これは……、絶対にセラフから離れられないわね」

「「「うんうん」」」


 セラフから離れず、彼女の背中だけを見て歩いた。数分か数時間か……、時間感覚も狂いそうな気がした頃……。


「着きましたよっ!」


 満面の笑顔のセラフが、振り返り教えてくれる。


 眩しい光の向こうに広がっているのは――

 大きな木々で作られた、たくさんのツリーハウス。木漏れ日に照らされて、地面や空気中を漂う不思議な淡い光。迷いの森とは違う、清涼感のある空気。


「フフ、ようこそぉ、エルフの里へぇ~」



◇ ◇ ◇

 僕たちは、セラフに連れられて族長の家に通された。族長の家までの間に会ったエルフのみなさんは、どの方も好意的に接してくれたのが印象的だった。

 ウリエがみんなの気持ちを代弁する。


「なんか、すごく歓迎されてたね?」


 エルも同意して、


「本当にそうですね。まるで私が、神聖国にいる時みたいな歓迎ぶりでした」

(神聖国の聖女って! 僕たち、初めて来たのにどうしてだ?)


「この里には、勇者信仰があるからでしょうね」


 セラフに連れられて、部屋に入ってきた女性が教えてくれる。

(セラフのお姉さん?)


「まずは、こんにちは。私は族長のセーラ・フォレスターよ。よろしくね勇者様」


 簡単な挨拶をしながら族長席に座ったセーラさんは、とても若く見えた。


「この度は里への滞在を許していただき、ありがとうございます!」

「固いことはいいわ。いつも娘がお世話になってるしね。里を上げて歓迎させてもらうわね」


 セーラさんはニヤリと笑い、


「それにね、勇者様とそのパーティーというのは、エルフにとっては大事な存在なのよ」

「さっきの勇者信仰……、ですか?」

「ええ。私たちが守る世界樹がね、初代勇者様の樹木魔法で作られたって伝承があるのよ」

(初代勇者様……)


「初代勇者様はエルフの始祖様と一緒になって、この地で最期を迎えたって言われているの。伝承によっては、世界樹自体が勇者様ってのもあるのよ?」

「それは……」

「エルフは長命だからね。一緒に居るためにって、自身に樹木魔法を掛けたって話でね。ロマンチックでしょ?」


 スケールが大き過ぎて、圧倒されてしまった。


「だからね……。魔王を討伐した暁には、うちの娘を嫁にもらってちょうだいね?」


 セラフは顔を真っ赤にしつつ、


「……よろしくお願いしますぅ~」

 

「「「「「えええええ!!!!」」」」」



◇ ◇ ◇

《セラフ視点》

 夜になって、勇者パーティーの歓迎会が始まった。里中からみんなが集まって来て、歓迎してくれていた。焚き火を中心にして、エルフ謹製のお酒や森の恵み、お肉も惜しみなく出されていて、すごく歓迎しているのが分かった。

 わたしたちの里には、本当に昔から勇者様の伝説がたくさんあった。初代勇者様は、数千年前の話だから流石に真偽が不明なんだけど、わたしは個人的に永遠を誓った勇者様と真祖様が世界樹になった話が好きだった。わたしたちエルフは長命だから、先立たれてしまうのはやっぱり寂しいかなって思っていたから……。


「これうちで作った酒です!飲んでくださいよ!」

「俺が狩ってきた猪なんです!食べてください!」

「この果実は私が採って来たんですよっ!食べてくださいね!」


 みんなが我先にと、アインさんへ勧めていた。


「っ!! ありがとうございます! いただきますね?」


 アインさんは笑顔で食べていた。


「大人気ですね~。本当に神聖国での私みたい」

「私も王国では、こんな感じかもしれんな」


 エルとミカエラが、既視感を覚えている様子でした。

 勇者――世界樹――そして世界樹の守り人であるエルフ。

 わたしたちエルフは、どうしたって勇者様を大切にしてしまうのだろう。


「「「勇者さま~」」」

「ん? なんだい?」


 大人のエルフたちが去ったタイミングで、次は花束を抱えた小さな女の子たちが、たくさんアインさんの周りに集まった。


「「「勇者さま! これあげる~」」」


 女の子たちは、思い思いの花束をアインさんへ渡していく。


「ありがとう。とても綺麗な花たちだね」


 アインさんが笑顔で、一番前にいた子の頭を撫でながらお礼を言っていました。撫でられた子は頬を赤くし、モジモジとしていて……。


「あのね……、勇者さま……」

「なんだい?」


 アインさんは笑顔のまま、女の子を覗き込む姿勢になって。


「大きくなったら、わたしたちをお嫁にもらってね!」

「「「もらってね!」」」

「え!?……」


 アインさんは表情は崩さなかったものの、撫でる手は止まってしまいました。

「言っちゃったね~」と、女の子たちはキャアキャアと喜んでいました。

 

 そんな女の子の一人が抱えていた本に、わたしは目が行ってしまいました。


(あ、あれは……)


 わたしが”勇者様”に憧れた、

 大好きだった絵本でした――



◇ ◇ ◇

 わたしは、幼い頃から本を読むのが大好きでした。特に好きだったのはもちろん、勇者様の冒険譚でした。

 その中でも、初代勇者様の世界樹になった物語の絵本が大好きで、お母様がうんざりしてしまうくらい何度も読んでもらいました。


(だからでしょうか? 私は他の子より早く文字が読めるようになりましたね……)


 わたしは自分で読めるようになってからは、世界樹の側の丘の上でいつも大好きな絵本を読んでいました。

 男の子なんかは魔王討伐のシーンが好きだったみたいですけど、わたしがこの絵本で一番好きだったのは、愛する始祖様と永遠を誓うシーンでした。

 何度も読み直してはニマニマとして、「勇者様、カッコいい」と呟いていました。


 絵本の内容は――

 魔王によって魔物が活性化されて、人類と呼べる者たちは大陸に居場所が無くなりそうなほどに追い詰められていました。

 そんな時、主神テラス様より勇者が遣わされたのでした。

 勇者はエルフ、ドワーフ、獣人、賢者、聖女、魔法使いを仲間にして勇者パーティーを作り、魔王討伐の旅に出ました。

 魔王の刺客や強力な魔物を次々と倒し、ついに魔王城まで辿り着きました。

 魔王討伐直前に、勇者の方から絶世の美女だったエルフにアプローチがありました。


「魔王を打ち倒して世界が平和になったら、俺と共に人生を歩いてくれないか?」


「今も一緒に歩いてるわよ?」


 この後に、勇者は「結婚してくれないか?」と言い直して、エルフはビックリしつつも、その求婚を受け入れました。

 仲間の力を集結して、魔王を討伐した勇者パーティーは人類を救いました。

 勇者とエルフは大森林で愛を紡ぎ合い、永遠に幸せに暮らしましたとさ。

 おしまい、おしまい……。


「ハァ〜。何回読んでも良いですぅ」


 そう言って、世界樹を見ました。

 わたしは、伝承にある二人は永遠のために一緒に世界樹になった説を推していました。

 わたしは両手で頬を挟んで、「ロマンチックですぅ〜」と一人悶えていました。


「おお、ここに居たかい?」


 悶えている所に声をかけられてビックリしましたが、そこに居たのは曾祖母様でした。曾祖母様は七大聖王と言われていて、めちゃくちゃ強いと聞きました。


「曾祖母様ぁ〜。お久しぶりですぅ〜」

「ああ、久しぶりだね。元気にしてたかい?」

「はい〜」

「そうかい、そうかい。おや? それは初代様の本かい?」


 曾祖母様もこの本を知っていることに、わたしは嬉しくなりました。


「はい〜。大好きな本ですぅ」

「私も、幼い頃によく読んだよ。初代様もカッコよかったでしょうね〜」

(初代様も?)


「他にも、勇者様はいるのですか?」

「ん? もちろんさ。魔王が現れる時に、勇者も現れるってな。ちなみに、私は勇者様と魔王討伐の旅をしたことがあるんだよ?」


 わたしは、とても驚きました。


「エエ〜〜!? 本当ですか!? 曾祖母様ぁ!」

「ああ本当さ。もう五百年以上も前だかね」

(すごい、すごい、すごい!!)


 わたしは興奮して、いろいろと曾祖母様に聞いてしまいました。


「セラフは、本当に勇者様が大好きなんだね?」


 そう言って、頭を撫でてくれます。


「私にとっての勇者様は、やっぱりあいつなんだよね。どんな困難な時も、諦めないあいつ。仲間同士でギスギスした時も、上手く纏めてくれるあいつ。それなのに、こっちの気持ちには鈍感なあいつ――」


 曾祖母様は懐かしいような、少し寂しそうな、そんな表情で話してくれました。


「勇者様ってのは希望だ。世界の希望。話せば普通だけど希望になった人さ、だから私は……」

(……なんだろう。これ以上は聞けない)


「おっと、話しすぎたね。そうさね、もしもセラフの代で勇者様が現れたなら、セラフは素直に勇者様に向き合いなっ!」


 曾祖母様はニヤリと笑い、行ってしまいました――



◇ ◇ ◇

 アインと女の子たちのやり取りと、あの絵本で小さな時のことを思い出した、わたしは……。

(勇者様に会えた奇跡、曾祖母様から言われた“素直に向き合う“という意味。今なら分かります)

 

 短い時間ですが、わたしが自分の目で見て感じたこと。

 アインの優しさ、絶望的な時の頼れる背中、不器用だけど女の子に向き合う誠実さ……。


 御伽話の勇者様じゃないけど、わたしは勇者様が、アインが好きなのだと、素直にそう思えるのでした――


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ