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推しヒロインは俺が救う  作者: 白永央はひな
《第7章》エルフの里・救済編

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第46話

《オルト視点》

 エルフの里へ向けて、オーナーも旅立って行った。エンジュたち黒影と三者三様も、こちらに寄らずに直接行くと連絡があった。


「補給部隊も送るか……」


 俺なりに状況を見て、必要な手を打っていく。


「オーナーにとってこの戦いは、失敗が許されない戦いだ……」


 デスクの書類を整理・確認しながら、考えを口に出してしまう。


「そのようですな」


 驚き見ると、ソファに座りながらコーヒーを飲むディーがいた。


「お前……、いつからいたの?」

「しばらく前からですね。『補給部隊』の件も聞いてましたよ。了解です、あとで手配しますね」

「……頼んだ。ありがとう」

「どういたしまして」


 そう言って、コーヒーを飲みくつろいでいる。


 …………。


「お前、暇なのか?」

「いえ? 開発中の装備や、ダーク様の新しいアイデアを形にするのに忙しくて忙しくて。でも、とても楽しい……、いえ、充実しておりますよ?」

(正直なやつだ……)


「で? 何の用なんだ?」

「よろしいので? ボス」

「そこで待たれた方が、俺の仕事効率が落ちそうなんだよ!」


 ”心外な”みたいな顔をするディー。


「では失礼して。私にも、ダーク様のビジョンを共有して下さい」

「あ……」


 同じ幹部であるこいつへ、説明していないことに今気がついた。


「あ?」

「いや、なんでもねー」


 どこから、話したもんかな……。


「幹部以外が知ってる情報は、収集済みです」

「どこまでだ?」

「組織を作った目的。……ダーク様には、どうしても救いたい子が三人居ると。そして、これから起こるエルフの里の動乱で、一人目を救うのだと。……そのくらいでしょうか」


 あの場で、会場にいた全員が聞いた内容か。


「不可解な点はたくさんあります。なぜ、未来に起こる事象を知っているのか? その三人を救う理由はなんなのか? そして……、それがなぜ組織を作ったことに繋がるのか?」


 ディーの疑問はもっともだ。あの場に居なかったから、冷静に分析できるんだろう。


「俺たちにも全ては語ってない。教えてくれたのは、確定の未来では無いこと。そして、救いたい子たちは、以前、以前っていつかは知らないが、逆にその子たちに救われたからだそうだ。俺は勝手に、オーナーの先祖の恩とか考えている」


 ディーは、納得のいかない顔をしている。


「組織は?」

「組織は、”どんな運命も覆せる力が欲しかった”と言っていた……」

「…………どんな運命でも…………」


 その時のオーナーの表情を、思い出す。


「その時のケイさんは、何があってもやり遂げるって顔をしていたぜ……」

「そうですか……」


 ディーは、何か考えるように俯いた。


「……ダーク様は、やり遂げたら、消えてしまうのでしょうか?」


 俺は、思わずニヤけてしまった。


「ちょっ! 私は真剣ですよ!?」

「いやいや、すまん。お前もオーナーのこと大好きなんだなってな」


 ディーは慌てて、


「何バカなことを!」


 俺は、手を前に出し制止する。


「みんな同じ気持ちだった。だからその質問は、その時にしたよ」


 ディーはハッとなり。


「それで?」

「”俺はずっとお前たちと一緒だ”ってさ」


 ディーはホッとした顔になった。


「わかりました。……そうですよね、そもそも私たち自身が、行き場の無いものばかり。それなのに、何でも教えろなんて傲慢でしたね」

(解釈は、人それぞれだろうけどな……)


 だけどオーナー。俺たちは、あんたを信じて一緒に歩こうと決めたんだ。

 俺たちの信頼を裏切るのだけは、勘弁してくれよな――



◇ ◇ ◇

《ゴンザレス視点》

 俺たちのクラン”黒の死神”は今、学園都市の治安を守るため日夜活動を行っている。

 黒影は大変なことをやっていたのだと、痛感しているところだ。

 しかし……。


「やっぱ、数の力はすごいぜ!」


 クランメンバーが激増した現状ならば、問題なく治安維持が出来ていた。

 俺は、クランハウスで”最強筋肉”のメンバーと話をしていた。


「でも、あの人数でやってたエンジュたちはすごかったんだな~」


 俺は、黒影の働きに感心をしていた。


「あいつらなら、今回の任務も完遂してくれるだろうぜ」


 デルトが、上半身の筋肉を膨らませながら言った。


「そうだな、あいつらは細腕の中に筋肉を蓄えてるはず」


 アブドが、背中の筋肉を膨らませながら言った。


「ゴンザレスさんが一番すけどね!」


 カーフが、足の筋肉を膨らませながら言った。


「おいおい、お前たち筋肉を褒めすぎだぜ!」


 俺はニヒルに笑い、膨らませた筋肉でシャツを破った。


 ハッハッハッとブラザーたち笑いながら……、俺はこれからエルフの里に起こると、旦那が言っていた内容を思い出していた――



 あの日、旦那が語ったのはこれから起こる話。

 エルフの里の話。

 そして、旦那が救いたいと願う子の話――



「俺が知っている未来を、お前たちに話す。今回の春休みに、エルフの里で種族間抗争が起きる……。森エルフとダークエルフでだ……」

(同じではないにせよ、エルフ同士でですかい?)


「理由は……、ダークエルフ側の、種族存続の危機だ。アホらしいと思うかもしれないが、今のダークエルフ男子は……、巨乳好きばかりだ」

(意味が分からねえ……、何でそれで?)


「ダークエルフも長命だが、子を授かれる年齢の女子が、今は全員結婚できていないんだ……」

(え? 本当ですか?)


「嘘かと思うのも分かる。でも事実だ。この状況を何とかするために革命軍ができる。そして、森エルフで一番の巨乳……、勇者パーティーのセラフが里帰りをするこの春休みに、革命軍が武力紛争を起こすんだ」

(それじゃぁ……)


「そして俺が救いたい人、アゼル・レヴァイアは革命軍のリーダーにして、ダークエルフ族長の娘だ。勇者たちによって制圧された革命軍は、その責任を全てアゼルのものとして処刑するんだ。……磔にされて、火あぶりにされるんだ……」


 旦那が悲痛な表情になる。


 巨乳好きの俺としては気分的に微妙だったが、処刑はやりすぎだろうというのが感想だった。きっと、種族間のいろいろなこともあるんだろうがよ。


「何にせよ、旦那が笑える結果にして欲しいよなっ!」

「「「だなっ!」」」


 みんなが返って来るまでは、俺たちがこの街を守ってるぜ!

 だから――


(安心して、想い人を救ってきてくだせえ。旦那!!)



◇ ◇ ◇

《ステラ視点》

 私は、卒業の日までにレベル80に到達できた。

 卒業してしまったら”深淵迷宮”に入れないから、本当にギリギリだった。

 レベル80になった状態で、鑑定水晶を使って確認する――


 名前:ステラ・ツクヨミ

 レベル:80

 年齢:20歳

 ジョブ:風魔剣聖(New!)

 適性属性:暴風(New!)

 魔法・技能

 ・暴風魔法:F(New!)・危険察知:B

 ・無属性魔法:S  ・魔力操作:S  

 ・身体強化:S  ・魔武術:B



「ケイの言った通りね……」


 『レベルが80になって、魔武術を習得していれば最上級職になるよ』


 いつもあの子は、知らないことを知っている。 


「本当に、何なのかしらね……」


 不可思議なことが多い子だけど、とても良い子なのを知っている。

 だから私は、特に不安な気持ちにはならなかった。


「まあ、ケイだからね」


 そう呟きつつ、私は学園に戻った。


 卒業式の前日に、学園長に呼び出された。


(式の内容の確認だろうか?)


 学園長室のドアをノックすると「どうぞ」と、中から声がかかる。


「失礼します」


 私は中に入り勧められ、ソファに座って学園長と向き合った。

 ミネルバ・フォレスター、七大聖王の筆頭。

 恐らく人類最強といわれる人。千年近く研鑽を積んだ魔法使い。レベルは90。

(底が見えない強さを感じるわね? 私はまだまだなようね……)


「ふふっ。さすが姉弟ね。あなたの弟さんも、入学式にそんな眼で私を見ていたわ」


 ハッとして謝罪する。


「申し訳ありません……、ケイもですか?」

「そうよ。この年になってからは、久しぶりの経験だったわね」

「重ねて、失礼しました」

「いいのよ。おもしろい経験をしたって意味だから。気にしないでね?」


 恐る恐る視線を戻すと、優しい顔で微笑んでいた。


「それで、要件なのだけど。あなた、卒業したら七大聖王の末席ね」

「え?」

「今の末席の子は降格。あなたが新しい七大聖王よ」

「…………本気ですか?」

「本気、もう決定事項。実際に今の子より、あなたの方が強いしね。あなた、最上級職になったでしょ?」

「ご存じでしたか……」

「まあね。それにほら」


 そう言うと、ミネルバ様の瞳が輝きだす。


「私はね。鑑定眼を使えるのよ」

(なるほど?)


「相手の強さが分かるってこと。鑑定水晶の能力を、見るだけで相手に使えるってことよ」

「それはズルなのでは?」

「そうかもね?」


 手をヒラヒラとして、


「まあそれはいいの。だから私の判断で、あなたを七大聖王にするって話よ」


 断る……、のは無理そうだ。


「謹んで拝命致します。……しかし、私は卒業後にジパン辺境伯領の騎士団長に就職が決まっているのですが、よろしいですか?」

「問題ないわ。魔族。いいえ、魔王との戦いの時に尽力してくれれば、それでいいわ」

(魔王……、本当にいるのかしら?)


「魔王はいるわ。きっと遠くない未来で、相まみえる」

「それも、何かの能力ですか?」


 ミネルバ様は真剣な表情になり――「エルフの勘よ」と言った。


「そうですか……」


 こうして私は無事卒業して、

 『七大聖王』の一角になった――


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