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推しヒロインは俺が救う  作者: 白永央はひな
《第6章》学園闘技大会編

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第42話

《アイン視点》

 学園闘技大会も無事に終わり、僕たち勇者パーティーは学園主催の後夜祭に参加していた。

(後夜祭の開始直後はヤバかったな……)

 僕たち勇者パーティーは、学園闘技大会で一年生として目覚ましい活躍をした。そのため、とても注目が集まってしまって、さまざまな国や機関からのスカウトが殺到したのだ。

 同級生からも質問攻めがすごく、やっとみんなで集まれたところだった。


「さすが大陸一の学園って感じよね~」


 ラフィが豪華絢爛な舞踏会場を見て呟いた。みんなもうんうんと頷いている。

(改めて見ると会場はキラキラしているし、生演奏もすごくて、料理もとても豪華だ)


「ねえねえ? あたいの感覚だと分かんないけどさ、辺境伯家令嬢が感心するくらいだから、この後夜祭はすごいってことだよね?」

「いやいや、私は辺境だから。ミカエラに聞いてよ」

「ん? 私か? 首都ドラドの王城にもこんなに豪華な舞踏会場はないな!」

「シルク神聖国にもないですね……」

「飾り付けの中には、魔導の粋もたくさんあるようですよぉ~」

「やっぱり学園すごい……」

「世界各国から集まるわけだね」


 僕たちが談笑していると、学生会の先輩方がやって来た。


「ごきげんようみなさん、楽しんでいるかしら?」


 ステラ姉さんは、今日も可憐だった。

(出来ればステラ姉さんと闘いたかったな……)

 少し憂鬱な表情になってしまう。


「どうしたのアイン? お腹空いたの?」

「ステラ姉さん? 僕は、もう小さい子じゃないですよ!」


 ステラ姉さんは、笑って両手を合わせてゴメンねポーズをしつつ、ウインクをした。


「フフフ、ごめんねアイン。私にとってはね、ケイもあなたも可愛い弟だから」


 僕はドキッとしてしまい「それじゃあ、しょうがないですね」と、頬を赤らめてしまう。ステラ姉さんを直視できず、僕は横を向いて頬を掻いた。


「いつっ!!」


 足に痛みが走ったので見ると、ジト目のラフィとウリエがそれぞれ僕の足を踏んでいた。


「ハハッ! おもしろいね~、君のパーティーは!」


 アイナ副会長が話しかけてくる。

(アイナ副会長――)


「ん? なんだい? まだわたしに”ボコボコにされた”のを気にしてるのかい?」


 そう、僕は昨日のエキシビジョンマッチでアイナ副会長に手も足も出ずに負けた。

 レベルの差はもちろんのこと、彼女の”魔武術”が圧倒的だった。

(まだまだ上がいるということだな。ステラ姉さんは、もっと強いんだもんな……)


「いいえ。先輩との闘いは僕にとって、最高の学びになりました!」

「お、おう? うん。精進しろよ勇者君!」

「はいっ!」


 横から出てきたキララ先輩が、


「あんま、いじめるなよなぁ~アイナ~。新年度になったらお前が会長なんだからな?」

「もちろん分かってますよ!」


 そして、真剣な表情になったアイナ副会長。


「ステラ姐さんもキララ先輩も、もうすぐ卒業だ。新年度はわたしが会長になるが、強い味方が必要だ。君や君のパーティーメンバーには期待している。強くなって、一緒に学園を支えてくれ!」

「はい! 僕たちは、あなたの期待に応えられるような強さを手に入れます!」


 アイナ副会長は口角を上げ、


「期待している!」


 そう言って振り返り行ってしまった。


「楽しんでね、アイン」「またな、お前ら!」


 ステラ姉さんとキララ先輩も一緒に行ってしまった。


 僕は改めて、もっと強くなろうと心に誓った――



◇ ◇ ◇

《ケイ視点》

 俺たちは学園闘技大会の後夜祭には出ず、黒の死神の本部で『三者三様のお疲れ様でした会』を開催していた。

(こいつらは学園の生徒だが、もう俺たち黒の死神のメンバーだからな。有象無象にスカウトされるわけにはいかないのさっ!)


 大ホールに集まった人数を見て思った。

(めっちゃ増えたな……)


 元の持ち主が成金だっただけあって、この屋敷は学園都市でも有数の大きさだ。しかも、この大ホールはとても広い。それでも入りきるのが、やっとなくらいの人数だった。

 俺たち幹部と今回の主役である三者三様は、大ホールを見渡せる主賓席に座っていた。

 隣のオルトに聞いてみる。


「なあオルト、めっちゃ人いない?」

「ハハッ、すげえ増えたぜオーナー。今日のこの会だって、抽選で選ばれた奴しか参加できてねーからな?」

「マジ?」

「大マジだよっ! 本当に苦労してるよ俺!?」


 聞けば、今ではこの学園都市で一番大きなクランになったのだとか。参加希望者はあとを絶たず、厳選した人材を入れている現状でも飽和状態だそうだ。

(それだけ属性がないってだけで、不利益を被っている人が多いってことか)

 黒の死神は基本的に、属性なし・不遇ジョブを集めているのは有名な話になった。

 その上で学園都市最強のクランだ。

(俺でも無属性で不遇ジョブなら、このクランを選ぶよな……)

 それほど大変な状況になっていると聞き、ボスをオルトにお願いして良かったと、改めて思った。


「たまにはオーナーにも手伝って欲しいぜ……」


 オルトの悲痛な表情に対して、俺は笑顔で応える。


「いつもありがとう」

「感謝よりも、秘書とか助手とかを頼むよオーナー」


 俺は顎に手をあて思案する。


「……近日中に、紹介できると思うぞ?」

「本当か!? 信じてるぜ! オーナー!」


 オルトは表情が明るくなった。

 俺の計画通りに進めば、春休みで人員を大量ゲットできるはず……。


 背後に気配がした――


「ダーク様」

「エンジュ、どうした?」


 音も無く背後に現れるとか、マジで忍者を目指しているようだ。


「会場に参加者が全員揃いました」


 普通に言えばよくない!? 背後にシュタッする意味とは……。


「わかった、始めようかオルト。エンジュも席に着きなよ」

「はいっ、ダーク様」


 シュタッと俺の隣の席に着く。どうしても忍者ムーブをしたいらしい。

 エンジュは隣の席に着いてから、逆に落ち着きがなくなり何かモジモジして、時折こっちをチラチラと見てくる。

(……トイレかな?)

 

「旦那~。今日はそっちの格好ですかい?」


 ゴンザレスが俺の格好に言及するのは、漆黒の死神モードだからだ。


「まあな。幹部以外には秘密だからな。お前マジで言うなよ?」


 ゴンザレスは引きつった笑顔になった。


「も、もちろんですぜぇ! 旦那ぁ!」


 あとでよく確認しようと思った。


「…………」


 何かを感じ取ったゴンザレスは、うつむいて黙ってしまった……。


「まったくバカが。たぶん大丈夫な奴にだけ言ってると思いますよ、オーナー」


 オルトが把握している奴なら平気かな?


「じゃあ始めますよ?」

「頼む」


 オルトは立ち上がる――


「お前らぁ!! 三者三様のお疲れ様会を始めるぞぉ!! 注目しな!!」


 全員の視線が俺たちに向く。


「さあ、主役は立ちな!」


 オルトに促されて、恥ずかしがりつつも三者三様は立つ。


「みんな知ってると思うが! 俺たちの仲間! 三者三様が、先日の学園闘技大会で本選トーナメントに残り、良い成績を残した!!」


 ワアアアアアアと大歓声が上がる。


「頑張ったこいつらを祝してっ! 今日は好きなだけ飲み食いしやがれ!! 騒いでこいつらを労ってやろうぜ!!」


 ウオオオオオオと叫び声が響く。


「野郎どもっ!! 飲みもんは持ったか!? いくぜ~~!! 三者三様に乾杯っ!!」


「「「「「乾杯っ!!!!」」」」」」


 こうして、お疲れ様でした会が始まった――

 


 ある程度の飲食が進んだ頃に、俺は三者三様へ話しかけた。


「よう、改めてお疲れ様な。食べてるか?」


 ナミエは、はにかんで笑っている。


「うぅ~。いろんな人に褒められて嬉しいけど、恥ずかしいさ~」

「ハハッ、もっと強くなったら更に注目されるぞ? もう止めておくか?」


 そう問うとナミエは真剣な顔になり――


「ううん。あーしはケイ君に着いていくよ」

「そうか?」

「うん」

「じゃあ、もっと強くなるんだな」

「わかった!」


 ナミエは、満面の笑顔でそう言った。


「モニカは食べてるか?」

「美味しいものばっかりで、やばいっす!」


 いい笑顔で応えてくれる。


「よかったよ。今回の大会で何か最強への道筋は見えたか?」


 モニカは食べる手を止め、考えるが……。


「……上には、上がいるっす。わたすは一歩ずつ、前に進むのみっすね!」

「そうか。考えることは止めるなよ?」

「了解っす!」


 元気に敬礼をする。本当に分かっているんだか?


「ルウは……、大丈夫か?」


 ルウは口に食べ物を入れ過ぎて、頬が倍以上に膨らんでいた。


「…………」モキュモキュモキュモキュ……。


 しばらくして飲み込むと一言。


「大丈夫」


 そしてまた、ケーキを口に詰め込み出した。


「まったくな。いっぱい食えよ」


 ルウはモキュモキュしながら、うなずいた――


「ディー、準備はどうだ?」


 俺はディーに春休みのイベントへ向けた装備品などの準備をお願いしていた。


「予定通りに。しかし本当にダーク様の発想はすごい! その至高な知識を私にもっと頂けませんか?」


 ディーの目が血走っていて怖いし近い。

 頼もしいけど、そのうち俺のことを人体実験したいとか言い出しそうなんだよな……。


「春休み前に、実行部隊の実践運用するから用意しておいてくれよ?」

「おおっ! 実践! 了解です! すぐに用意を!」

「いや、お前そろそろヤバそうだから一旦寝とけ!」


 ドスッ! パタッ。


「エンジュ、寝かしておいてくれ」

「了解です。ダーク様」


 物理的に寝かしたディーを、エンジュは引きずって連れて行った。

 ディーは、嫌われているのかな?


 ドンチャン騒ぎも落ち着いてきて、宴も終わる時間になった。


「オルト、最後に俺から大事な話がある。いいか?」


 ダークモードで俺の表情は分からないだろうが、オルトは俺の声色や雰囲気で察してくれたようで……。


「大事な話ですか。組織の大事ですか?」


 オルトにとっても組織の存続は重大な話だもんな。


「ああ。先にオルトと幹部のみんなに話そう……」


 俺の正体を知るメンバーに集まってもらい、これから語る内容を告げる。

 みんな驚きつつも真剣に聞いてくれた。


「……オーナー。俺から代表して、一つだけいいですか?」

「ああ」

「オーナーは目的が達成しても……、ここに、居てくれますか?」


 オルトの質問に俺は面食らった。

 俺は正直なところ、気にするところはそこ?と思った。


「オーナーはそこ?って思っているかもしれないが、俺たちにとっては大事なことだ」


 オルトの言葉に、他のみんなも真剣な顔でうなずく。


「俺たちはオーナー。いいや、あんたに救われて集まったんだ。最後まで責任もってくれよケイさん」


 みんなの信頼の眼差しがくすぐったかったけど――


「そうだな。俺はずっとお前たちと一緒だ」


 みんな安心した顔になった。


「ならいいさ。俺たちは着いていくだけだオーナー」

「そうか、ありがとう」


 オルトと共に俺は主賓席の中心に立つ。


「お前らっ!! 注目っ!!」


 オルトの声に、再び全員の視線が集まる。


「俺たち黒の死神のオーナーよりお話がある!! みんな静かに聞いてくれ!!」


 俺を見た参加者たちは―― 

 普段いないオーナーとは誰か? 

 噂の漆黒の死神じゃないのか? 

 そんな声でざわつく会場――


 俺は一瞬だけ、最弱の”魔殺気”を発動する――


 ほとんどの者が顔面蒼白になり、その場に崩れ落ちる……。


「聞け、お前たち」


 全員の視線が俺に集中する。


「俺が、この黒の死神という組織を作った理由を今から説明する――」


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