第41話
《ナミエ視点》
「準決勝の相手は、ルウかぁ」
(うん。勝てる気がしないさ~)
ルウの魔力制御は、その杖が届く範囲であれば他者の魔力にも影響を及ぼせる。
(あーしの手持ちの技じゃ、崩せないさね……)
何か方法がないかと、あーしは待機室でウロウロと歩き回りながら考え続けた。
『圧勝~~!! アイン選手の勝利で~~す!!』
(あちゃー。もう時間になっちゃったさー)
でも、やれるだけやろうと、気持ちを切り替えて待合室を出た。
闘技場でルウと、向かい合って構える。
「ルウ! お互い全力でやろうっ!」
「うん、ナミエ。全力……」
『さあっ! 準決勝第二試合です。どうでしょうねぇ、アイナ副会長!』
『このカードは……。見ればわかるっ!』
『ええ~。仕事して下さいよ~』
『うるさい。黙って見てなさい! 試合開始!!』
なんか雑な開始の合図だけど――行くさっ!!
(最初からっ! 全力!!)
16体の炎獣を顕現させ――螺旋収束っ!!
「獅子砲~~!!」
ラフィ戦で使った最大火力技をぶっ放す。
ルウは動くことなく、スッと杖を前に出す。
あーしの獅子砲が当たる瞬間――
強く輝いた杖先に誘われるように、獅子砲の軌道が変わっていく。
杖の軌道を追いかけるように回転する獅子砲が、ルウを照らす。
(……綺麗)
ルウがあーしの獅子砲と、まるでダンスをしているかのような光景だった。
(やばっ!? 見惚れてたっ!)
ルウと目が合うと、彼女は微笑んで「行きますよ」と呟いた。
次の瞬間、彼女の魔力も上乗せされた獅子砲が、遠心力も合わさって、元の威力と速度の比じゃなく返って来る――
「っ!? 獅子方陣!!」
ドゴオオオオオッ!!!!
灼熱の炎弾を、16体の炎獣全部を使って全力防御する。
「うみゅうううう!!」
防御してなお、高熱があーしを襲う。
(くううう!! マジでギリギリなんですけど~~!!)
「ゴメンね」
「っ!?」
その言葉を聞いた瞬間、あーしの意識はブラックアウトした。
◇ ◇ ◇
《ケイ視点》
『勝者!! ルウ選手~~!! 圧勝~~!!』
うおおおおおおお!!!! 大歓声が響く。
「……どう? ケイ」
迎賓席で観戦していた俺に、隣の席の姉さんが話しかけてくる。
「いやいや。姉さん分かってるのに、俺に聞かないでよ」
『だから、黙ってみてなって言ったろ?』
『なるほど?』
「いいじゃない。ケイの弟子たちのことなんだから、ケイから聞きたいのよ」
「ハア。まあね、相性だからね。仕方ないさ……」
『ナミエ選手は、強力な魔法使いさ。それは間違いない。だけどね~』
『だけど?』
『ルウ選手は、きっと魔法使いの天敵なのさ!』
「ルウの杖使いジョブと魔力制御特化は、一対一の魔法使い戦が、一番強いからね」
『狭いフィールドで、更に遠距離攻撃しかできない人は、彼女にきっと勝てないよ』
『おぉ~~。みなさん聞きましたか!? ルウ選手! 彼女は魔法使いキラーだったあああ!!』
うおおおおおおお!!!! 大歓声が響く。
「あら、可哀そう」
「あ、めっちゃ恥ずかしがって逃げてった」
俺は、あとで甘いものでも奢ってあげようかと思った。
(ちゃんとナミエを抱えて逃げるところが、ルウの優しさが出てていいね)
「次は決勝ね。何かアドバイスしに行くの?」
「いいや。俺がしてあげられることは、もうしたから。あとは、ルウの頑張りしだいだね」
(あいつらは強くなれた。でも、アインはきっと……)
◇ ◇ ◇
《アイン視点》
僕の決勝の相手は、三者三様のルウ選手だ。僕は最初に見た時から、ルウ選手が三人の中で一番強いと思っていた。
そして――
彼女たちとの闘いは、僕たち勇者パーティーへのケイからの挑戦状だろう。
(さすがケイだよ。僕たちが、一年生最強で敵なしなんて思っていたタイミングでの刺客。絶妙すぎて恐いくらいだ……)
僕以外は負けてしまった。僕まで負けてしまったら、きっとケイは悲しむだろう。
(ケイと僕は、昔から一緒に高め合った親友だ。いくら弟子とはいえ、親友が負けてしまったら気まずいだろうからね?)
でも、安心してくれケイ。僕は勝つよ――
◇ ◇ ◇
《ステラ視点》
ケイが、急に震えたので聞いてみる。
「どうしたのケイ? 寒い?」
「いや、なんか急に悪寒がしただけ。誰か俺のことを、勘違いして称えてる気がして……」
意味が分からなかったが、ケイのことを理解して好いてくれるのは良いことだと思った。
(ちょっと変わっているけど、ケイは優しくて良い子だからね)
「いやいや姉さん。良かったわねみたいな顔で、頷かないで。普通に、知らないところで称賛されても嬉しくないよ?」
「そういうもの?」
「そういうもの!」
男の子って難しいわねと思った――
◇ ◇ ◇
《アイン視点》
「アイン選手。決勝なので、アナウンスされたら出て来て下さい」
「了解です」
「では、ご武運を」
そう言って、大会運営の生徒が闘技場の入口から戻って行った。
僕は目を閉じて瞑想する。身体中に魔力を循環させ、澱みなく流れることを確認する。
(……問題なし)
そして――
『お待たせしました〜!! これよりっ!! 一年生の部、決勝戦を開始します!! まずは一人目!! 世界の希望と言われている“勇者“っ!! アイン・アマテ〜〜!!』
僕は闘技場の光の下へ出る――
うおおおおおおお!!!! 大歓声が響く。
「「「「「「せーのっ! アイ~~~ン!!」」」」」
勇者パーティーのみんなの声が聞こえる。みんなに向かって手を振ると。
「「「キャーーー!!」」」
(なんで悲鳴が!?)
僕は困惑しつつ、闘技舞台へ昇りながら迎賓席をチラリと見る。
ケイ――。 ステラ姉さん――。
(みんなの声援、ケイ、ステラ姉さん。僕は必ず勝つよ――)
改めて決意を固めて、相手選手を待つ。
『続いて~っ! 二人目!! ダークホースの筆頭っ!! ルウ・シープ~~!!』
うおおおおおおお!!!! 大歓声が響く。
彼女は静かにこちらに歩いて来る。彼女も決意の眼をしていた。
(確かに、彼女の魔力制御はレベルが高い……)
そして、彼女と向かい合った――
『さあっ! 副会長! この試合の見どころは!?』
『ふむ。今回も黙って見ろ! だねっ!』
『その心は?』
『ふぅ、まったく。まず、生徒諸君っ! このエイユウ学園は大陸最強の学園だ!! 今日の試合は一年生最強を決める闘いだ!! しかしっ! エイユウ学園の生徒たるもの、優勝者にどうすれば勝てるのか!? そう考えないなんて有り得ないっ!! よって、一年生たちよ! 刮目せよ!!』
うおおおおおおお!!!! 大歓声が響く。
『そして、来賓の方々。我が学園の新しい芽を、よく見ていって下さい。今後の世界平和の一翼を担うかもしれない若者たちです!』
パチパチパチパチ……
『ありがとうございます! それではっ! 試合開始ですっ!!』
ルウさんの杖捌きや、魔力制御は確かに脅威。構えを見る限り隙もない。
(こういうタイプとの闘いは、モニカさんの闘い方が一番正解だったね……)
「反応できない速度か、受けきれない力か、捌き切れない手数で攻めればいいだけ――」
”身体強化”に光魔法を重ねる――”光纏い”
僕の身体中が、光を纏う。
「さあ、行くよっ!!」
◇ ◇ ◇
《ルウ視点》
アインさんの身体に光が纏わった――
(あれが来るっ!!)
自称学年最速のフラッシュさんが、一撃で倒されたあれが――
アインさんが消えた瞬間に、私の右側の魔力領域に反応があった。
「くぅっ!!」
私は反射的に反対へ跳びつつ杖を両手で持って防御――した瞬間に、ものすごい衝撃で吹き飛ばされる。回転しつつ杖で地面を削り、なんとか場外を免れた。
(うぅ……。速さも重さもギリギリだ……)
何とか受けた腕は痺れているが、杖で自分を支えつつ彼を見る。
彼は、私がいた場所の右側の位置で横薙ぎの姿勢のまま止まっていた。
(だけど強力なだけに、反動があるのかな……?)
アインさんはこちらに振り向き、「さすがだね、ルウさん」と笑った。
(何とかあの一撃を避けて反撃を……、は難しいか。カウンターはもっと難しい……)
アインさんは、再び光を纏う。
そして剣を持つ手を引き、空いた手をこちらに開いて向け、腰を落とす。
(……刺突の構え?)
「申し訳ないけど、ちょっとケガさせてしまうかもしれない」
(……あなたは強いっ! でもっ!!)
私は、その一言に少し冷静さを欠いてしまって――
「……行くよ。閃光・連」
彼の姿が、輝きブレる。
「っ来る!!」
ギャリイィ!
杖で何とか軌道を逸らす。
(反動で動けないところに反撃をっ!!)
しかし――
私が見たのは、数多の光で……
(流星?……)
いくつかの刺突は逸らせたが、流星の輝きが収まった頃には私は――
両腕・両足・身体中が多数の刺し傷や切り傷で流血……。
力が入らず、私はそのまま崩れ落ちました。
◇ ◇ ◇
目が覚めると――
グウ~~。(お腹が空きました……)
「お? 目が覚めた!」
「良かったっす~」
「ナオミ? モニカ?」
ケイさんも顔を出して。
「俺もいるぞ。お疲れ様、ルウ」
医務室ってことは……。
(……負けて、しまいましたか)
「お腹が空きました……。あと悔しいです……」
涙は出ませんが、悔しい思いが胸の中にありました。余計にお腹が空きます。
「まず空腹って……。そっか、悔しかったか?」
ナミエとモニカも一緒に悲しそうにしてくれています。
私が二人に勝たせてもらったから、代表として勝ちたかったのに……。そういう気持ちがあったのに……。
「ごめん。二人とも……」
「気にすんなし」
「問題ないっす」
二人とも笑顔で受け入れてくれて……、本当にいい仲間だ。
「ルウ。アインの最後の技は見れたか?」
ケイさんが唐突に聞いてくる。
「……刺突が連続で来ました。あの技は連続で使えないと思ったんですけど」
「他に気づいたことは?」
(なんでしょうか? 何かあるのですね……、強いて言えば――)
「最後の技は……、その前の一撃ほどの重さがなかった気がします」
「いいね。よく感じた。速度はどうだった?」
(っ!? 言われれば、刺突が見えた……、そういうことですか?)
「少し、遅くなった気がします……」
ケイさんは笑って、「上出来だ」と褒めてくれました。
「どゆことさ?」
「分かんないっす!」
「いや、お前らは少し考えろよ。まあ、いいか。アインはまだ完璧に”魔武術”を使えてない、だから使えるレベルまで出力を下げたのが最後の技だな」
(納得です。だから視認できたんですね……。避けられませんでしたが……)
「とにかく、みんなお疲れ様。ルウが平気ならご飯食べに行くか!」
「奢りさね~」
「ケイ殿に感謝を」
「ケイさん、早く行きましょう」
課題はたくさん残りましたが、今は美味しいご飯が先ですね!!
こうして私たちの、学園闘技大会は終わったのでした――




