第39話
《アーキ視点》
『じゃあ本日の最終戦、試合開始!』
アイナ副会長の開始の合図はありましたが――
(……隙が、ない……)
あたしは構えたものの、どう攻めるものかと迷っていた。
「…………」
(ルウも攻めて来ないけど、あれは彼女の元々のスタイル……)
予選の彼女を見た限り、あたしの遠距離攻撃(波動系)は恐らくきかない……。
(……なら、直接打ち込むしかない!)
ドンッ!! あたしは地面を強く蹴って走り出す。
『お~~と!アーキ選手が動いた~~! ルウ選手の周りをグルグルと高速で回っているぞー!』
『正面から突っ込んだんじゃカウンターもらうって、思ったんだろうね~』
『速い! 速いぞ~~~!!』
(アインの話を聞いて”魔力操作”の熟練度を上げたら、あたしの”身体強化”は以前の比じゃなくなった……)
「…………」
(ルウは動いてない……。でも、背中からでも避けそう……)
「でもっ!」
(近づかないと、あたしは勝てない!!)
高速回転の勢いのまま背面から飛び込む!
「せいっ!」「やぁ!」「っ!!」「むぅ!」
勢いのまま殴る!蹴る!蹴る!殴る!を叩き込むが……。
(全部っ!? 当たらない!?)
ザザーーっと、停止してルウを睨む。彼女は最初の位置から動いていなかった……。
(……これが、力の差!?)
あたしの得意とするスピード。それも予選に比べて格段に上がったスピードでも捉えられないなんて。
「……負けない!!」
あたしは被弾を覚悟して、正面から向き合うことを選択した。
(今あたしが出来る、最高の”身体強化”でっ!!)
魔力を身体中に最大限巡らせる。まだ不慣れなあたしは、反動のせいか身体中に痛みが走るし、脚にピキピキと変な音が鳴るけど、気にする余裕なんて無かった。
「獣拳っ!!乱舞っ!!」
魔力で硬度を増し、魔力で筋力を上げた剛拳の連続攻撃――
「やあああああああ!!!!」
ヒュンッ、バシッ、ヒュンッ、バシッ…………
『アーキ選手の猛攻~~!! しかしいいいい! ルウ選手~~!避ける!往なす!避ける!往なす!! 当たらな~~い!!』
『ハハッ。これはすごいね~』
(くそおおおおおお!!!!)
やがてあたしの連撃の限界がきた瞬間――
身体が浮く感覚がして、
視点がぐるりと回転した。
「え?」
そして腹部に強い衝撃――
「っぐう!!」
あたしは場外まで吹き飛ばされてしまった。
「…………」
(…………完敗かぁ)
ルウさんが来て、あたしに手を差し伸べてくれる。
「いい動きでした。久しぶりにギリギリの闘いでした」
よく見ると、彼女の手は震えていて、その言葉が本当なんだと思えた。
「……ありがとう、ございました……」
あたしは流れ出てしまった涙を隠したくて、彼女の手を取れなかった。
『試合終了ーーー!! 勝者!ルウ選手ううう!!』
うおおおおおおお!!!! 大歓声が響く。
『うん。本日最後を飾るいい試合だった。みんな !二人に大きな拍手を~!』
パチパチパチパチ……
◇ ◇ ◇
《ルウ視点》
(強敵でした……。まだ手が痺れています……)
「特に最後の連撃は、凄まじかったです……」
一人呟きつつ闘技場を後にしました。
「お疲れ~」「お疲れ様っす!」
控室に戻るとナミエとモニカが待っていました。
「二人ともお疲れ様です」
ナミエが笑顔で、
「なんか~、ケイ君が今日の労いで奢ってくれるってさ!」
「お腹ペコペコっす!」
私はそれを聞いた瞬間に――
ぐぅ~~っとお腹が鳴ってしまいました。
「……甘い物が食べたい……」
危ない、危ない……、涎が垂れてしまいそうです。
◇ ◇ ◇
《ケイ視点》
今日の試合で三人の成長も見れたし、俺の理論も正しいって証明出来たしで良い日だった。
「ケイ、満足そうね?」
「そうだね。満足は出来たよ」
姉さんは「良かったわね」と言って行ってしまった。やはり忙しいらしい。
「俺はあいつらを労ってやるかね」
どっちに転んでも今日は労うつもりだったので、最近美味しいと評判の店を予約していたのだ。
店に向かって歩いていると、学生たちが今日の試合の話をしているのが聞こえてきた。
「今日の一回戦は凄かったな~。特に後半!!」
「本当にそれっ! あいつら絶対に同級生じゃないよ!」
「私も同意~。セラフさんの無詠唱にもビックリだけど、ナミエって子はその上を行っちゃったもんね~」
「お前ら知らないのか? あのモニカ、ルウ、ナミエって、入試のワースト3人組だったんだぜ?」
「「「マジっ!?」」」
「マジ、マジ!凄いよなぁ。一年で一番強くなったのあの三人だろうな~」
「「「そうだね~」」」
(うんうん。俺が育てたんだぞ~)
誰も見ていないのにドヤ顔をする俺だった……。
◇ ◇ ◇
翌日――
「姉さん今日も時間作れたの?」
「頑張ったわ。だって、ケイと一緒に観戦したいじゃない?」
(姉さんに悶えそうだよおおおおお!!)
でも、姉さんの目の下に少し隈ができていた。
「姉さん、あんまり無理すんなよな?」
「フフッ。ありがと。優しいわねケイ」
まったく、この姉は……。
『さあっ! 一年生の部の二回戦も前半は終了しました! 今の所、どうですか?メルルちゃん』
『だーかーらー! ちゃん付けは止めるですっ!』
今日の解説はメルル先輩だ。
『そうですね~。前半は~~。大番狂わせなし!です!』
(メルル先輩……、それで良いのか?)
『……そうですね~』
(ほら、リー先輩が呆れてるぞ~)
『さてっ! ここからが見どころかもしれませんよ~!? 昨日勇者パーティーを倒したダークホースたちとラフィさんが残ってますからね~』
『リーちゃんの言うダークホース三人は、三者三様というパーティーみたいです~』
『え!? マジですか? なんとおおお!新情報です! あの三人は同じパーティーだった~!』
『そういう意味でも、後半は面白そうです!』
『そうですね~。さあ、準備が出来ましたか~。メルルちゃん試合コールよろです!』
『だ・か・らっ!もういいです!』
◇ ◇ ◇
《ラフィ視点》
(アイン以外で残ったのは私だけか……)
確かに彼女ら、三者三様は強い。
でも――
「炎が水に勝てるのかしら?」
私の属性は”水”。対してナミエさんは”火”。
(魔法はイメージ。果たして彼女は、私の水に勝てるイメージができるのかしら?)
『それでは! 試合開始です!』
私たちは向かい合ったまま、魔力を瞬時に練り上げた――




