第38話
闘技場が爆炎で包まれ、セラフが場外へ吹き飛ばされる。
『ものすごい爆発っ!! セラフ選手は場外~!! 勝者ナミエ選手ですっ!!』
うおおおおおおお!!!! 大歓声が響く。
『どっちも良い魔力制御だったよ~。セラフ選手は負けちゃったけど、予選とは見違えたね~。この短期間に何か掴んだんでしょうね~』
『と、言うと?』
『壁を越えたってことさっ! 君も強くなれば分かるよ~』
『ぶ~!意味深ですが、まあ良いでしょう!! あの炎獣は4匹以上出せたんですね~』
『今までが、出す必要もなかったのか……、何か制限があるのか分からないけど。分からないって時点で有利だね~』
『ですね~、次のナミエ選手の試合も注目ですね!』
『そうだね~。次はどんな手が飛び出すか楽しみだね~』
◇ ◇ ◇
(ナミエはいろいろと、手の内を晒さざるを得なかった感じだな~。それにしても……)
「ケイ。勇者パーティーも”覚醒”したようね。アインが話したのかしら?」
「十中八九そうだね。でも一人は既に”覚醒”してたから、時間の問題だったよね」
僕たちは、『魔力操作』が”A”に到達すると覚える『身体強化』が使えるようになった者のことを、”覚醒した”と言っていた。
「そうね。それにケイがあの三人を育てたって分かれば、情報解禁で良いと思ったんでしょ?」
(あいつ、仲間には話して良いって言っといたのに、今まで秘密にしてたのかよ……。本当に良いやつだよ、お前は……)
「セラフちゃんも予選の時は覚醒してなかった。たった一週間で、このレベルまでなれるなら強くなるわね、あの子も……」
「本当、これからに期待だね」
「あの~。コソコソと二人で話さずに、私も混ぜてくださいよ~です」
姉さんは人差し指を口に当て、
「姉弟だけの秘密よ?」
ウインクする姉さんを見て、ブホォと鼻血を飛び散らせて倒れるメルル先輩だった。
(この学生会メンバー、姉さんのこと好き過ぎじゃね?)
◇ ◇ ◇
《セラフ視点》
目が覚めると、知らない天井が見えました。
「あっ!セラフ、目が覚めたのかい?大丈夫かい?」
(そうでした、わたし試合に負けてしまったのですね……)
目に涙が溜まってしまいました。
(……勇者パーティーなのに、面目ないです)
ウッウッとわたしは泣いてしまいました。
「え!?セラフ? どこか痛いの?エルが治ったって言ったけど、大丈夫かい?」
アインさんが慌ててしまってます。ちょっと面白いです。
「違うんです、どこも痛くないですよ。ちょっと悔しかっただけですぅ……」
「……そう、か。うん。大丈夫。セラフは強くなってるよ」
「フフッ。ありがとうございますぅ」
さすが勇者様です。簡単にわたしの涙を止めてくれました。
(男の人に寝ている姿を見られるのは恥ずかしいですね)
わたしは恥ずかしくなり布団を被る。
「励ましてくれて、ありがとうございますぅ。わたしは大丈夫ですからぁ」
「そう?大丈夫かい?」
「はい。それより次の試合は……」
うおおおおおおお!!!! 大歓声が聞こえる。
『勝者っ! ラフィ選手~~~!! 圧倒的だった~~~!!』
「ラフィが勝ったみたいだね」
(さすがラフィさんです……。次はわたしも負けないように頑張ります)
「ラフィさんに、わたしの悔しさは託します……」
「……うん。きっとラフィなら勝ってくれるさ」
――もっと強くなろうと、改めて思える敗北になりました。
◇ ◇ ◇
《ウリエ視点》
セラフが負けて、ラフィは勝った。
(やっぱりあの三人は強い……)
あたいの対戦相手は三人の内の一人、モニカ・ホワイト。
(あたいも人のことを言えないけど、あの細い身体にどれだけの力があるんだか?)
モニカは綺麗な金髪を、頭の上の両側でお団子に纏めている正直変な髪型だ。まつ毛も長くて白眼。深窓の令嬢みたいな見た目をしているけど……。
(でも、喋ったりこん棒を振り回すと。そうは見えないよね~)
闘技場の中心で握手をする。
「今日はこん棒じゃないんだね?」
「ウリエさんはお強いですから。手加減なんてできねえですよ!」
「ありがと! じゃあお互い頑張ろ!」
「はいっ! よろしくお願いしまっす!」
お互い一定の距離を取り、向き合う。
『それでは準備が整ったようです! 副会長、よろしく!』
『リー、雑になってきてるよ。ではっ! 試合、開始!!』
あたいは体内の魔力を身体中に循環させて、自身を強化する。
身体強化――
みんなと一緒で”獣人”の種族特性だと思っていたあたいは、アインの話を聞いてめっちゃ驚いた。
(でも、爺ちゃんが同じドワーフなのに、桁外れに強かった理由も分かった気がするよ)
あたいは元々ドワーフという種族的に、細くて小さい見た目でも力が強かったけど、身体強化を使える様になった今の力は、以前とは段違いに強くなった。
(リミットブレイク程じゃないけど、いつでも使えるし成長すればもっと強くなれる)
あたいは新しく手に入れたこの力を、試してみたくてウズウズしていた。
「始めから! 全力で行くよっ!!」
「望むところっす!!」
新しい相棒の両手斧――“進化の斧“をギュッと握る。
相棒もあたいの気合いに応えてくれている気がした。
足に魔力を込めて、全力で踏み込む。
ドンッ!と地面にヒビを作り、あたいは正面からモニカに切り掛かった。
モニカは聖鎧を纏った様で、仄かに輝いていて、あたいの攻撃を正面から受けようと、メイスを両手で持って構えていた。
「ドリァーーー!!」
ドガァ!!!!
「フンヌゥーー!!」
強化されたあたいの一撃を受けたモニカの足元の地面が、割れてクレーターができる。
衝撃でモニカの聖鎧は砕けたが、モニカの防御は崩せなかった。
あたいは押し込もうと力を更に込める。
モニカは押し返そうと力を込めていく。
お互いの細腕、足腰、全身の集約された筋肉が魔力を帯びて力を増していく。
ピキッ、ピキッと空気か、地面か、もしくはあたいたちの身体か分からないけど、まるで悲鳴を上げる様な音がする。
「グググッ!!」
「ヌヌヌッ!!」
均衡は突然崩れる。
「っ!!」
「せりゃあああ!!」
更に強い力で押し戻したメイスに、あたいの斧が打ち上げられてしまう。
(ヤバいっ!!)
モニカはその勢いのまま、あたいに向かってメイスを降り下ろしてくる。
ゴオオーー!!と空気を砕くような音を立てつつ迫るメイス。
あたいは咄嗟に身体を回転させ、その勢いを乗せた一撃で迎え撃った。
ガインッ!!!!
武器がぶつかった音で空気が震えて、衝撃が広がる。
「うおおおおおお!!」
「むぬううううう!!」
連撃・連撃・連撃……。
あたいたちは、超重量の両手武器を片手で高速連撃で打ち合った。
お互い遠心力を乗せた一撃をぶつけた瞬間――
ギャインッ!!!!
想像以上の衝撃波が発生して、お互いに吹き飛ばされ、元の位置に戻ってしまった。
「……やるね。モニカ」
「ウリエさんこそ……」
お互いにニヤリと笑ってしまう。
静寂のあとに、うおおおおおおお!!!! 大歓声が上がる。
『す、すごい連撃~~~!! 本当に二人とも一年生なのかあああ!?』
『ここまで衝撃が伝わってきたよ~。すごいパワーだね、二人とも!』
(正直、パワー勝負は負け……、だよね。じゃあ、どうやって崩すか。リミットブレイクは試合で使っていいもんじゃないしね……。あたいも課題がたくさんだよ)
どう攻めるか決めかねていると、モニカから突っ込んできた。
「来ないなら行くっすよーー!!」
ブオンッ、ブオンッとメイスを振り回しながら突っ込んでくる。
(暴風みたいな音!? 武器の出す音じゃないよ!!)
あたいも迎え打つ。再びの連撃。
「たりゃああああ!!」
「うみゅうううう!!」
いつ貼り直してるの!?と思う程にいつの間にか聖鎧を纏っていて、あたいの攻撃が掠って、砕け、また纏ってを繰り返している。あたいは少しづつ、傷や打ち身が増えてきた。
(うう……、段々身体の疲労と痛みが溜まってきたかも……)
対してモニカは”無傷”だった。……意味が分からない。
(あたいの攻撃も多少は当たっているはずなのに!?)
よく観察すると――モニカが時々淡く光るタイミングがあった。
(この子っ!! あたいと打ち合いながら”回復魔法も使ってる”!?)
このままだと打ち負けると思った時には遅かった。
ズキッと軸足に違和感があり、体重の乗らない一撃で受けた瞬間――
相棒が手から離れて飛ばされてしまう。
次の攻撃を何とか両手でガードするけど――
ボキボキッ!! 「っ!!くぅ!」
あたいは場外まで吹き飛ばされてしまった。
『試合終了ーーー!! 勝者! モニカ選手ううう!!』
うおおおおおおお!!!! 大歓声が響く。
「ハハッ、身体動かな~~い。……痛っあああ」
「あわわ、大丈夫っすか? 思いっきり打ち込んじまいました」
モニカが来て回復魔法を掛けてくれる。良いやつじゃん。
「ありがと。いいよ、全力で闘ってくれたってことでしょ?」
「……えぇ。ウリエさん、予選の時とは別人みたいに強かったっすから」
「そう。来年はもっと強くなってるから、楽しみにしててよ」
「はい。わたすも負けませんよ」
――お互いに再戦を約束して握手した。
◇ ◇ ◇
《ルウ視点》
『さあっ!本日の最終戦です~~!! 一年生の部本選、一回戦最終組は~~』
『なんで急にそんなに溜めだしたの?』
『黙って副会長! 今日のトリですから! ゴホンッ!本日の最終組は~~。勇者パーティーの黒猫族~、アーキ・ビーストおおお!! 対するは、ダークホース三号~、羊獣人族、ルウ・シープ~~!!』
うおおおおおおお!!!! 大歓声が響く。
『おお、おお、みんなまだ元気だね~。最後までみんなで応援しようね!』
うおおおおおおお!!!! 大歓声が響く。
闘技場に静かに立ちます。
対戦相手のアーキ・ビーストさん。
(やはり、勇者パーティーは皆さん覚醒されたのですね……)
アーキさんの魔力制御が予選頃と比べて、澱みなく魔力が流れていますもんね。
「……よろしく」「お願いします」
お互い握手を交わし、開始位置へ戻ります。
大切な黒杖へ魔力を流して具合を確認します。
(今日も調子は良いですね。澱みなく杖の端まで感覚が伝わります)
「……さて、二人は勝ちました。私も負けませんよ――」




