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推しヒロインは俺が救う  作者: 白永央はひな
《第6章》学園闘技大会編

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第37話

《アイン視点》

 予選を終えた僕たち勇者パーティーは、ミカエラお勧めのカフェに集まっていた。


「みんなお疲れ様。順当に勝ち残ったね」

「お疲れ様です皆さん。お怪我も無いようで良かったです」


 ミカエラとエルが称賛と労いをくれる。


「ありがとう。……たぶん、みんな思ってることは一緒だよね?」


 僕が代表して言うと、


「そうね、あの三人でしょ?」


 ラフィが答えてくれて、みんなで頷く。


「あのナミエって子、無詠唱な上に魔力制御がとんでもなかったですぅ」

「あたいはモニカって子の、動きがすごいって思ったよ。速いね、あの子……」

「あ、モニカさんはホーリーアーマーを使ってたので、聖魔法使いですね」

「え? 前衛じゃないの?」

「聖魔法を使う前衛でしょうか? 神聖国の守護騎士にそんな人もいますね」

「……ルウって子も強かった。羊獣人は、普通あんな強くない」

「ナミエさんは私が最近やっと理解した、魔法は詠唱よりもイメージという原理を、自然に実践していたわね」


「「「「…………」」」」


 みんな黙ってしまう。

 仕方ないか、組み合わせ次第では当たる相手。しかも、明らかに強敵だ。


(――ケイ、だよね……)


 きっと、あの子たちはケイが仕込んだ子たちだ。


(これからずっと一緒に戦って行く仲間だし、いつまでも情報を出し渋るのは良くないよね……。みんなだったら信用もできるし、そもそも、言っちゃダメなんて言われてなかったかも?)

 

 僕は今こそ自分の知る知識を仲間と共有する時だと思った――


「みんなに話したいことがあるんだ。絶対に人には言わないで欲しいんだけど――」


 僕は話した、ケイから教わったこの世界で強くなる方法を――


 驚きつつも、みんなは真剣に聞いてくれた。


「じゃあ、アインって無詠唱が普通にできるの?」


「できるよ」と言いながら、ポッと光球を出す。

 頭を抱えながらラフィが、


「最近覚えた私がバカみたいじゃない!? なんで使わなかったの?無詠唱」

「知られちゃいけないと思ってたのと……、カッコイイからね!詠唱!」


 みんな一緒に、ため息をつかれてしまった。


「まあさ? 友だちを守るために黙ってたんでしょ? アインらしいじゃん! あたいは好きだよ!そういうの?」


 ウリエが僕の腕を抱いてくる。 ムニュッ。

(ちょっと!ウリエさーーーん!?)


「あっ! ウリエちょっと!」

 ラフィも反対の腕を抱く。 ポヨン。

(ラフィさんまでーーー!?)


 恥ずかしくてフリーズしていると、アーキが聞いてきた。


「……そのケイさんの話だと、あたしたち獣人が使う”身体強化”は、獣人種の種族特性ではなくて、どんな種族でも使えるもの……、ということ?」

「そうなるね。単純に体内の魔力制御で、自分の身体を強化した状態だね。僕も身体強化は使えるしね」


 アーキは驚きつつも、納得する。


「……確かに、アインの身体能力。それに強い先輩方はみんな、人族と思えない身体能力があった。レベルによるステータスの恩恵と思ってたけど……」


『引いてみるんでしょ?』 『そうだった』


 アーキと話している時に、僕の後でウリエとラフィがコソコソと話して僕から離れる。


「では、あの異常な三人はケイ君の仕込みってことなのかな?」

「たぶんね」


 ミカエラが問い、僕が答えた。


「なんにせよです。私たちは先日の戦い以降、どうすれば強くなれるのか悩んでいました。ここに一つの道が示されたのです。感謝して自己研鑽致しましょう」


 エルが祈りを捧げるような佇まいで言った。


「そうね」「賛成!」「了解ですぅ」

「そうだね」「……うん」


 ちょっとドキドキしたけど、みんな優しい気持ちで受け止めてくれて良かった。


「本選まで時間がないぞ!? アインに教わったことを少しでも自分の物にできるよう、早速特訓だ!!」


 試合に出ないはずのミカエラがなぜか、気合十分だ。


「どんな怪我も癒してみせます!」


 エルも、いくらでも怪我して下さいとばかりに気合が入っている。


「アイン、行きましょう!」


 眼の輝きを取り戻したみんなに連れられて、僕たちは残り時間を特訓に費やした――



◇ ◇ ◇

 そして、本選トーナメントが始まる――


『これよりっ!! 学園闘技大会、本選トーナメントを開始しますっ!! 本日も、実況はわたくし! コメンタ・リーがお送りしまっす!!』


 うおおおおおおお!!!! 大歓声が響く。


『そして~っ! 本日の解説はこの人! 学生会副会長〜、アイナ・バビロンだ〜!!』

『みんな〜、よろしくね〜!』


 うおおおおおおお!!!! 大歓声が響く。


『ついに本選ですね〜、副会長〜』

『そうだね〜。今年の一年生はすごいね!強い子がたくさんいるね!』

『本当ですね〜。一年生の優勝者は副会長と当たると思いますが、お気持ちは?』

『誰が来ても負けないよ〜。まだ二年生の優勝者はわたしって決まってないけどね?』

『さて! くじ引きも終わったようですね。一回戦は……、おおっ! いきなり注目選手だ!!』


 僕はくじ引きで一番を引いてしまったので一回戦になった。

 みんなとあの三人は反対のブロックになったので、僕が闘えるのは決勝戦みたいだ。


『それでは早速始めていきます! 一回戦の二名は闘技場に上がって下さい!』


 決勝は会場の中心に予選の倍以上の大きさの闘技場が用意されていた。

 形も円形では無く正方形だ。

 闘技場の中心で、相手選手と握手を交わす。


「初戦で君に当たるとは運が良いよ。私が君より上だと、こんなにも早く証明出来るからね!」


 対戦相手のフラッシュ君が声を掛けてくる。


「僕も今の実力を、試させてもらうよ」


 フラッシュ君は、一年で一番素早いって言われている実力者だ。風魔法を上手に使って、素早く動いていると噂で聞いた。

(ステラ姉さんの真似をしている感じかな?)


「ふんっ!そんな余裕は今の内だ!」


 フラッシュ君は背を向け行ってしまう。


『さあ、両者位置に着きました。副会長お願いします!』

『おーけー。ではっ!試合開始!』


 フラッシュ君はブオンッ!と待機させていた風魔法を纏う。


「風を纏った私について来れるかなっ!?」


 僕は魔力を身体の隅々まで循環させていく。

 全ての細胞が活性化して身体が軽くなり、感覚も研ぎ澄まされる。


 身体強化発動――

(ここからが、実験だ……)

 

「いくぞ! 勇者アインよ!」

 

 次の瞬間――


「グハァ!!」


 フラッシュ君は倒れ、僕は彼の”うしろ”に立っていた。


「「「「…………」」」」


『な、なにが起こったあああ!? 気付いたら終わってた~~!!』

『これは驚きですね~。一年生でこれは、すごいですよ~』

『副会長解説をお願いします!!』

『はいよ~。簡単に言うと、フラッシュ選手は風を纏った。対してアイン選手は”光”を纏ったのさ!』

『……マジですか!?』

『マジマジっ!』

『すごいぞアイン選手~~! 本当に一年生なのかああ!?』

『本当に今年は粒ぞろいよね~』


 正直、立っているのがやっとだった。

(属性魔法を纏う……、想像以上に難しいぞ。でも、これは強力な武器になる)


 僕は成果を胸に、闘技場を降りた。



◇ ◇ ◇

《ケイ視点》

(驚いた、アインのやつ自分で”魔武術”に辿り着いてるじゃん。さすが勇者様だね!)

 この世界の上位者は”身体強化”は勿論、”魔武術”を使えるやつが多い。

(姉さんも使うしな~)


「ケイ、アインは強くなったわね? まだまだ術の制御は甘いけど、きっと強い勇者になるわ!」

「俺もそう思うよ姉さん。アインは最強の勇者になるさ」


 姉さんは頷き、笑顔で、


「じゃあ、今はまだ慢心させるわけには……いかないわね?」

(うわぁ、俺たちをボコボコにしていた時の顔だぁ〜。アイン、ドンマイ!)


「ここからは後半まで、退屈かもしれないわね?」

「姉さん、思ってても言わないでね、そういうこと……」

「イヤイヤ、お二人とも声に出し過ぎですですよ」


 メルル先輩に注意されてしまった……。



◇ ◇ ◇

《セラフ視点》

 アインさんに教えてもらった”ケイ君理論”はわたしにとって、いえ、わたしたちにとって衝撃の内容だったと思います。


 ――でも、わたしは納得した部分もありました。


 それは曾祖母様の強さです。

 『七大聖王』の一人で”暴風の魔女”……。


 曾祖母様は高齢なのに身体能力にも優れ、魔法の発動も威力も桁違いなのです。

(”身体強化”、”魔法はイメージ”。単純な話でもないのでしょうが、この二つの存在を知ることで”意味の解らない強さ”から”納得の強さ”に変わりました)


「やはり、曾祖母様は偉大ですぅ」


 短縮詠唱やら無詠唱やらと言っている時点で、見当違いな所に注力していたことが分かりました。でも、無駄なことなんてなかったと思うのです。魔力を集中したり、制御したりした経験は無駄じゃないはずだから。


(相手はあのナミエさん……。勝てるでしょうか……)


「やれるだけ、やるだけですぅ」


 わたしは気を引き締めなおして、闘技場の階段を昇っ――


「っ!?あ痛っ!」


 階段に躓いて転んでしまいましたぁ……。

(胸が邪魔で足元が見えないから困りますぅ~~)

 わたしは恥ずかしくなって、顔を赤らめたまま闘技場に立ちました。



『さあ一年生の部、一回戦も後半に来ました! 次のカードは勇者パーティーの風魔法使い、セラフ・フォレスター対ダークホース一号、ナミエ・シーサ!!』

『好カードが来たよ~、注目ですね!』

『二人とも魔法使いですからね~! ド派手な対戦を期待しましょう!』

『観戦してる生徒は、彼女たちの魔力制御に注目して勉強しなさいよ~!』

『なるほどっ! 派手さにばかり目をやっちゃダメだぞ~お前ら!!』

『リーもね!? じゃあ、用意できたみたいだね。試合開始!』


(ナミエさんの炎獣は出が早いです、わたしも一番早い魔法で対応を!)


 わたしは試合開始と同時に、風の刃をイメージして放ちます。

(まずは速度で圧倒します!)


 以前のわたしでは無理だった速度・鋭さ・数の風刃を、彼女に飛ばす。

 わたしが放つ瞬間には、彼女も炎獣を顕現させていたが、


「わたしの攻撃が先に届きますぅ!!」


 当たった!と思ったが――


「……さすがですぅ」


 炎獣たちが、全ての風刃を砕いていた。


「少しビックリしたさ~」

(ビックリした程度ですか!? でもっ!!)


 風刃を放ってすぐに集中させていた風穿を、最大威力で放つ。


(わたしの最大威力です!!)

「ウインドォ~・スパイラルゥ!!!!」


 高速回転した風のドリルが、彼女へ真っ直ぐに向かって行った。


「っ!? 人に向ける威力と違うさ~!」


 彼女は炎獣四体を縦に正方形で配置して、炎獣の盾を作る。


「獅子方陣!!」


 ギュリリリリリリリリ!!!!


 風穿と獅子盾が激突して激しい音が響くが……。


「危ないさ~」

「くぅ」


 防御を貫くことが出来なかった。

(まだです! 次を!)

 次の魔法を!と集中しようとするが――


「次は、あーしからだよ?」


 気が付くと、わたしの周りに小さな炎獣がたくさんいて――

(まずいです! 防御をっ……)


「獅子爆」


 瞬間――全ての炎獣が爆発。

(ダメッ!! 間に合わなっ!?)

 

 風壁も間に合わず、わたしは爆炎に撒き込まれて吹き飛び、意識を失いました。


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