第36話
学園闘技大会の予選の日になった。
参加者が多いので複数のブロックに20名以上で分かれて、バトルロワイヤル方式で闘い、本選トーナメント参加者を決定していく。
参加者表を見てみると――
(おっ?三者三様のやつらは全員が別ブロックじゃん。勇者パーティーとも当たらなそうだしな)
彼女たち三人で、俺の理論が属性持ちでも通じることを証明していくつもりだ。
(あいつらなら、証明できるだろうさ)
「ケイ、久しぶりね」
姉さんが声をかけてくる。
「久しぶりだね姉さん。忙しいんじゃない?」
「まあね、学生会のメンバーが頑張ってくれているわ」
運営側は大変だ。
「あっ!あなたが目を掛けている女子たちと、アインたちはブロック分けておいたわよ?」
(姉さんが分けてくれてたんかい!?って知ってたの!?)
驚き、姉さんを見ると、
「もちろん知ってたわ。可愛い弟たちのことだもの」
(察しが良すぎるよ姉さん)
「ありがとう」
「……姉さん、心の声が読めるスキルでも生えたの?」
「何言ってるのよ、ただの姉パワーよ」
(なんだその謎パワー!)
「じゃあ行きましょう。観戦する時間は作れたの。一緒に観戦しましょ?」
まったく姉さんには敵わないや。
「姉さんのお誘いを断る選択肢はないね!」
「当然ね」
二人で談笑しつつ観戦席に移動した。
◇ ◇ ◇
観戦席には学生会の面々もいた。
「弟君じゃーん! どうしたの?」
「おっ!? ステラんとこのじゃん」
アイナ副会長とキララ風紀長が反応する。
「どうも。姉さんに誘われまして、お邪魔します」
「どうぞどうぞですです」
メルル書記長も快く入れてくれた。
学園闘技大会の会場はコロッセオの様な形で、俺たちのいる観戦席は貴族が使いそうな場所だった。さすが学生会といったところだ。
予選には円形闘技場が四つ用意されていて、土属性の先生方が頑張って作ったらしい。
「じゃあ、あたしは行くぜぇ!」
「よろしくねキララ」
「行ってらっしゃい先輩!」
「よろしくお願いしますです~」
キララ先輩は解説の仕事があるそうだ。
(お疲れ様です……)
学園闘技大会予選が始まる――
◇ ◇ ◇
『これよりっ!! 学園闘技大会を~っ!開始しますっ!! 実況はわたくし!コメンタ・リーがお送りしまっす!!』
うおおおおおおお!!!! 大歓声が響く。
放送部のエース、リー先輩は男子生徒に大人気だった。
『そして~っ!解説はこの人っ!! お馴染み風紀番長!キ・ラ・ラ・様だ~~!!』
うおおおおおおお!!!! こっちも大歓声が響く。
『いや、番長じゃねーし! まぁ、よろしくな!』
うおおおおおおお!!!!
(テンションがすごいな)
『まずは一年生の予選だ~! 予選には外部の偉い人は来ませんがっ!! 先輩方や学生会の面々が見ているぞ~! 頑張れ~一年生!!』
『予選はバトルロワイヤルだぜぇ。二十人以上で闘って、最後の一人が本選トーナメントに出場だ!気張れよ~一年っ!』
『さっそく最初の試合が始まりますが、キララ先輩の推しはいるんですか?』
『推し? あぁ、注目選手か? そうだな、勇者パーティーの奴らは合同迷宮探索の時からそこそこ強かったぜぇ』
『やはりあのパーティーですか~。確かに注目度ナンバー1ですもんね~! 他にもいるんですか?』
『そうだなぁ、注目してる奴はいたんだが、辞退しやがったぜ』
『っ!? そんな人がこの学園にいるんですか!? 逆に気になりますね~』
実況席からキララ先輩がこっちを見ていた。
(こっちを見るんじゃないっ!! 目立ちたくないんだよっ!!)
『勇者パーティーといえば、二名は不参加でしたね?』
『まぁ、エルは回復役だし、ミカエラも盾専門だからな~』
『エルさんと言えば。今年も協賛して頂いているシルク神聖国より! 神聖国僧侶団の皆様が回復役として来てくれました~!! 皆さんで感謝の拍手を~!!』
パチパチパチパチ……
『先程お話に出たエルさんも、回復役として待機してますよ~!!』
うおおおおおおお!!!!
(エルも人気だなぁ……)
『即死じゃなきゃあ大丈夫そうだなぁ? お前たちぃ!!気張れや!!』
キララ先輩の応援と同時に初戦が始まった……。
「……次、ケイが育てた女子じゃない?」
「ナミエだね。まぁ予選は問題ないでしょ」
「自信満々ね」
「ま~ねっ」
◇ ◇ ◇
《ナミエ視点》
予選が始まる――
(円形なら真ん中が良いかな?)
他の人たちはやや外側で、周りとの距離を取っていた。
(魔法使いは特に距離欲しいよね~?)
そんな中、あーしは闘技場の真ん中を開始の場所とした。
あーしを見た何人かは”魔法使い系”と判断して、すぐに攻撃できる位置取りをする。
(そうだよね~、あーしもそうするよ~)
「それでは!試合開始!」
(でもね~)
最初にカモと思ったあーし目掛けて、四方から襲い掛かってくる。
(それは詠唱する魔法使いのことさね~)
瞬時に顕現した炎の守り神である四体のシーサーが、四人を焼き尽くした。
(……焼き尽くしたら、まずいさね~)
焼き尽くすとマズイので火力を落として、シーサーたちに迎撃させる。
触れた瞬間――
「「「「ぎゃあああ!!」」」」
全身を炎で包まれた襲撃者たちが、火だるまのまま場外まで吹き飛ばされる。
他の選手たちが驚きつつも様子を見ているため。
(判断が遅いさ~!)
顕現させたシーサーたちを、あーしを中心に外へ徐々に広がって行くように滑走させる。
炎のシーサーが通った後の地面が、圧倒的な熱量によって黒く焦げ付いていく。
他の選手たちはそれを見て顔を引き攣らせる。
「燃えたくない人は、場外に逃げるさね~!」
それでも何人かはシーサーに突っ込んできて、吹き飛ばされるか、火だるまにされた。
残りは場外へ逃げて行く。
そして最後には、中心から”動いていない”あーしのみが残った。
「「「「「…………」」」」」
『……試合、しゅーーりょーーー!!』
『こいつぁ驚いたぜ。えらい高度な魔法制御だ。しかも無詠唱だぜぇ……』
『だーーーく!ほーーーーす!!現る~~!! その名はナミエ・シーーサーー!!』
うおおおおおおお!!!! 大歓声が響く。
(みょおおお? めっちゃ恥ずかしいよおお!)
注目されて恥ずかしくなったあーしは、小さくなって闘技場から逃げ出した――
◇ ◇ ◇
《モニカ視点》
(ナミエさんは立派でした。わたすも続かなくては!)
わたすは予選で相手を殺してしまうと不味いと思い――
メイスではなく、こん棒を装備していた。
「よーし。頑張るっすよ!」
『先程の試合はビックリしました。キララ先輩はあの子、知ってましたか?』
『いいや。普通の授業や、合同迷宮探索でも見たことなかったぜぇ』
『……そうですか。今年の一年生は、ビックリ箱みたいですね先輩~』
『ほんとだな~。もしかしたら、まだいるかもしれねぇな?』
『楽しみですね~。予選は残すところ、あと二回。果たしてまだ見ぬ強者が現れるのか!? 注目です!』
『準備できたみて~だな。では試合開始だ!』
(ホーリーアーマー展開!)
わたすの身体を聖なる鎧が包み込む。
「行くっすよ~!!」
近くにいた選手は、こん棒を持っているとはいえ”聖魔法”を使用した、(黙っていると)儚い雰囲気の少女が突っ込んできたことに驚いたみたいで――
「え!?」 バコッ!!
殴った選手が宙を舞った。
「どんどん行くっすよ~!」
「うそっ!!」 ボゴッ!!
見た目と言動に困惑した選手も宙を舞った。
わたすの聖鎧を割る選手もおらず、一人また一人と次々に宙を舞わせる。
自分でも今まで気づいてなかったんだけど……。
(みんな……、動きが遅いっす)
わたすは自分と周りの生徒との差に、驚き困惑しつつ次々と倒していく。
(聖鎧要らなかった?)
みんなわたすについて来れなくて、普段やっている”身体で受けて”のステップが必要ない状態だった。
「ちょっ、まっ!」 バコンッ!
最後の一人を宙に舞わせて、場外へ落とした。
「……終わっちまったっす」
「「「「「…………」」」」」
『試合、しゅーーりょーーー!!』
うおおおおおおお!!!! 大歓声が響く。
『やっぱりいたなぁ?異常なやつがぁ!一匹いればってやつだな!』
『いやそれG……、コホンッ。 一方的だった~~~!!』
『……なるほどねぇ。本当におもしれぇや』
『キララ先輩の顔が怖いっ! やはり知らない子でしたか?』
『ああ、知らないやつだったぜぇ。見事な”身体強化”だ……』
『あんなに可愛いらしい子が怪力でしたもんね~。……え?”身体強化”?』
『触れるな触れるな……』
『はいっ!! ダークホース二人目っ!! モニカ・ホワイトーー!!』
うおおおおおおお!!!! 再びの大歓声が響く。
物足りなさを感じつつ、わたすは闘技場を後にした――
◇ ◇ ◇
《ルウ視点》
『さあ! 予選最終組です! キララ先輩、また出ますかね?ダークホース』
『見てみなきゃわかんねーよ!』
闘技場に上がり、試合開始の合図を待ちながら杖の様子を確認する。
(二人の試合を見た感じでは、杖に魔力を通したら過剰な威力になる気がします)
体術と棒術、軽い身体強化で闘うことを決める。
『それもそうですね~。では! 本日最後の試合です! キララ先輩お願いします!』
『試合開始だ!』
私は意図的に魔法使いの選手の近くを陣取りました。
案の定、試合開始と共に私に向かって火球や石礫、風刃が飛んできます。
「……使わせてもらいますね?」
魔法の中心、魔力の塊を少しズラすだけで私の意図した方向へ飛んで行きます。
私に向かってきた魔法を、魔法使いを狙って近づいて来ていた選手へ、それぞれの魔法を直撃させます。
「「「ぎゃああああ!!」」」
魔法使いたちは、驚きながらも次弾を撃ってきました。
今度はズラして各魔法使いへお返ししていきます。
「っなあ!!」「えっ!!」「うそっ!!」
避けることも出来ず三人とも倒れました。
『……なんか異様な空間がありますね~キララ先輩?』
『あいつ、そんな強力な身体強化は使ってねぇけど……上手いなぁ』
私は向かってきた人を躱し叩く、往なし叩くを繰り返し行いました。
(叩く場所は適格に。一撃で意識だけを刈り取ります……)
そして最後の一人の意識を刈り取ると――
私の周りには、たくさんの選手が転がっていました。
「あれ?……」
「「「「「…………」」」」」
『試合、しゅーーりょーーー!!』
うおおおおおおお!!!! 大歓声が響く。
『こらまたぁ、すげーのが出来てたぜぇ? 先に言っとくと、あたしは知らねーぞ?』
『来ました~!! ダークホース三号! ルウ・シーープーー!!』
うおおおおおおお!!!! 再び大歓声が響く。
「……お腹が空きました~」
私はお腹を押さえつつ、
ケイさんが何か奢ってくれないかと考えながら戻りました――
◇ ◇ ◇
《ケイ視点》
「驚いた……。すごいじゃないケイ。三年生でも勝てる子、少ないかもよ?」
俺はちょっと自慢気に、
「入学発表の時から育てたからね?」
姉さんに自慢しつつ考える。
(姉さんやアインの強化具合を見て分かってはいたけど、俺の理論はやはり正しいようだ。一年弱の短期間でもここまで強くなれた……)
黒の死神を含め、俺は自身の勢力が強力になっていくことを確信していた。




