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推しヒロインは俺が救う  作者: 白永央はひな
《第1章》 少年~入学前編

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第3話

《???視点》

 ……暗い。

 知らない森では、あたしの加護が働かなかった。 

 どこから来たのか、もう分からなかった。

 足が痛い。

 転んだときに擦りむいたのか、じんじんする。

(……帰らなきゃ)

 そう思うのに、どっちが“帰り道”なのか分からない。

 同じ景色ばかりで、歩くたびに不安だけが増えていく。

 ――怖い。

 声を出そうとして、やめた。 

 ぎゅっと服の裾を握りしめた、その時だった。


「……あ」


 男の子の声。

 びくっと肩が跳ねる。

 木々の間から、こちらを見ている影があった。

(なんか目が血走ってる、鼻息も荒い……。すごく変な子……、正直怖い)

 どうやって逃げようか迷っていると――


「……迷ったの?」


 声はすごく優しくて、心配してくれているのがわかった。

 でも、すぐには答えられなくて。 

 あたしは小さく、頷いた。


「そっか」


 私が警戒しているのがわかるのか近づいてくることなく、笑顔で話してくれる。


「ここはイセ村の近く、西の森だよ。君は迷いの森のクルフ村から来たのかい?」


 なぜか、知っているみたいな言い方。


「……君の村は、あっち」


 指を差す。

(……ほんと?)

 でも、その子は嘘をつく顔じゃなかった。


「一人で行けそう?」


 また、頷く。


「じゃあ、気をつけてね」


 それだけ言って、その子は背を向けて行ってしまった。


(あ……、名前……)


 聞こうとして、言葉が出なかった。

 あたしは今、男性がとても苦手だから。

 だって迷いの森から出てしまったのも……。


 その背中を、しばらく見ていた。

 なぜか、忘れちゃいけない気がしたから――



◇ ◇ ◇

《ケイ視点》

 心臓の鼓動がうるさくてヤバい――

 

(いやいやいやいや!! こんなの知らないぞ!! ゲームの知識にない!!)


 綺麗な銀髪に可愛い紫の瞳……、幼かったけど……、アゼル・レヴァイア。

 ダークエルフ族の族長の娘で……、俺が救いたい隠しヒロインの一人だ。

(マジで尊かったぁ……、生アゼルはヤバかったなぁ……)


 あれ?ちょっと待て……そういえば――


(なんか顔とかスゴイことになってた気がする!?気持ち悪いって思われたかな!?思われてたら死んでしまうぅぅぅ!!)


 一人で悶えていると――


「ケイー! 忘れものあったのー!?」


 姉さんの声が遠くから聞こえた。


「あったよ! 今行くー!」


 俺は森を振り返らずに、走り出した。



◇ ◇ ◇

 アゼルとの出会い。

 その日から俺の修行は、限界突破をした―― 


「うおおお!!!!」

 

 無駄に声をだして、限界まで自分を追い込む。

 

「やあああ!!!!」

「今日はここまでよ!」


 姉さんがそう言うまで、剣を振り続ける。


「ふおおお!!!!」


 魔力が空になるまで、操作を繰り返す。


 そんな俺のやる気を見てか、アインも前以上に黙々と修行に明け暮れていた。 



◇ ◇ ◇

 二年後――

 俺とアインは十三歳に、そして姉さんは十五歳になった。


 この世界では、十五歳になると“洗礼”を受ける。

 その人の生き方を決める、“ジョブ”を授かる儀式だ――

 

 洗礼式は、静かな儀式だった。

 神殿の中。

 石造りの床。

 そして、名前を呼ばれ中央の台座に立つ、姉さん。

  

 ほとんどの人は、農夫、職人、兵士などの平凡なジョブを得て、平凡に生きる。


 しかし、ごく稀に――


 光が、姉さんを包んだ。

 その光の輝きに、ざわりと周囲が騒めいた。


「……剣聖です」


 神官の声が、はっきりと響いた。


 一瞬、時間が止まった後――神殿中から大歓声が起きる。


(……だよな)


 ゲームでは知っていた。でも、現実で見ると印象が全然違った。

(知ってたけどさ、俺の姉さんがって思うと違ってみえるよな……)


 姉さんはその結果に少し驚いた顔をした後、俺たちの方を見て優しく笑った――


 『剣聖』は貴重なジョブだ。 

 その力を正しく育てるためという名目で、各地域の領都にある学園へ進むことになる。

 領都の学園で成績優秀者になると、さらに上へ――

 世界中から才能が集まる場所、【エイユウ学園】へ進学する。

(……ゲームの舞台)

 それはもう、遠い未来の話じゃないんだな……。 



◇ ◇ ◇

 そして、姉さんが領都へ出発する日――


「ケイ! アイン!」


 姉さんが俺たちの前に立つ、その表情はいつもより強張っていた。


「無理、するんじゃないわよ!」

「姉さんこそね」「はい!」


 姉さんは一瞬、言葉に詰まって俯く。

 そして、顔を上げるといつもの笑顔に戻っていて――


「あんたたちならきっと、すごいジョブを授かるわ!」


 そう言って姉さんは背中を向けた。


「先に行って……、待ってるわ!」


 一方的に告げて――姉さんは歩き出す。


 姉さんは振り返らなかった。


 でも、背中で俺たちへの信頼を語っていた気がした――


(もっと俺も、強くならなくてはな。姉さんの期待に応えるためにも!!)


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