第2話
決意をした日から早いもので六年が経った。
十一歳になった俺は、今こんな感じ――
名前 :ケイ・ツクヨミ
レベル:1
年齢 :11歳
ジョブ:未取得
適性属性:なし
魔法・技能:
・無属性魔法:A ・魔力操作:A
・身体強化:E
・剣術:C ・体術:C
……おっとヤバい、ニヤニヤしてしまう。
魔法と技能の熟練度を見てください。
本当に頑張りました。
熟練度は通常F~Sでランク分けされる。
ゲームでは”Cで一人前”、”Bで一流”、”Aで達人”、”Sは人外”とカテゴライズされていた。(まあ同じランクでも、グラデーションはあるけど……)
このペースで頑張れば、俺は世界最強クラスになれるかもしれない――
このゲームシステムのキモは“熟練度“だ。
レベルアップ時に体力や力、素早さといった”見えないステータス”も上昇するのだが、その上昇値に熟練度が関係してくる。獲得した魔法や技能の熟練度が、関連するステータスの上昇率を底上げしてくれるのだ。
レベルは“99“でカンスト――
(どれだけ熟練度を上げてからレベルアップさせるか。これが、最終的な強さに直結するんだよな……)
だから俺はレベルアップを避けて、熟練度の鬼になった。
そして――俺は姉さんとアインにも死んでほしくないって思っている。
そう考えた俺は、二人に魔法や技能が生えるようアドバイスして誘導したり、熟練度を上げるために魔法や技能を繰り返し使用するよう仕向けた結果――
「だから熟練度を上げるには――」
「ケイっ!いちいちうるさい!!」
――ドゴッ!!
「姉さん、その技も何回も繰り返し使えば――」
「本当っ!しつこい!!」
――バキッ!!
「最後にもう一回だけ言わせて、熟練度は――」
「っもお!ケイなんか嫌い!!」
――ゴンッ!!
姉さんに何度も何度もボコられながらも伝えた。
(姉さん違うんだ、お願いだから嫌うのはやめてください……)
アインは苦笑いしながらも「ケイが言うならやってみるよ」と素直に聞いてくれた。
(めっちゃ良いやつ!アイン良いやつ!)
今覚えられる技能の中でも、魔力操作はどんな魔法にも応用が効くし、誰でも覚えられる無属性魔法は生やして損はない。
(いやっ!絶対に必要だ!!)
俺は姉さんに覚えてもらうために必死のプレゼンをした。その時の俺は、姉さんの恐ろしさにまだ気づけていなくて……。
姉さんは無属性魔法の魔力防御の説明に食いついた。
「姉さん魔力防御を覚えると、もっと殴りあえるよ」
この部分が琴線に触れたらしく――輝くような瞳ですぐに無属性魔法を覚えた。
その後は分かるだろ?
俺の爆上がりしていた魔力量を上回る殴り合い――
いいや、一方的な暴力が俺を待っていたよ。
◇ ◇ ◇
《ステラ視点》
ケイは変わった……、気がする。
あの子が五歳の時に、私が頭を木刀で殴った日から。
可愛い弟であることは変わらない。
でも――
白目で寝るようになった。
すごく落ち着いて話すようになった。
それに、大人も知らないような強くなる方法を知っていて……。
一番変わったのは――
「強くなりたいって顔ね……」
私は木刀を肩に担ぎながらケイを見る。特訓前の少しの時間も無駄にしないと意気込み、庭で魔力操作の訓練をしていた。
ぎゅっと目を閉じて、額に汗をかいて、とても集中しているように見えた。
「……んんん……くっ……!」
(……努力してるんだ)
誰に言われたわけでもないのに頑張るケイ。
(置いていかれたくないの? それとも……誰かを助けたいの?)
なら、姉の私がしてあげられることは一つよね!!
「よし、今日も特訓するわよ、ケイ!」
(ボコボコにしてでも……あなたを強くしてあげる!!)
「動きが悪い!」 ドゴォ!
「はぎゃっ!」
ケイが綺麗な放物線を描いて飛んだ――
「魔力操作を鍛えてるのは知ってるけど、身体も動かさないとダメなのよ? 魔力以前に殴られて死ぬわよ」
「死ぬ前提はやめて……」
ひょこっと立ち上がるケイ。
(しぶとい……、最近私も教わって使えるようになったから分かる――魔力防御。ケイの言う通り、無属性魔法は偉大だわ……)
私は自然と口元が緩んでしまうのを、止められなかった。
何度殴っても、何度吹き飛ばしても、何度暴言を叩きつけても付いてくるケイ――
(やっぱり、世界一可愛い弟だわっ)
私は――私なりの愛を弟にたっぷりと注いでいった。
◇ ◇ ◇
《アイン視点》
幼馴染のケイはステラ姉さんに似て、黒髪に黒い瞳の男の子だ。そんなにやる気のある性格じゃなかったんだけど……。
ある日からケイは変わった。
(最初は気のせいだと思っていたけど……)
この六年……、ケイに言われた通り修行をしていたら、さまざまな魔法や技能を覚えることができた。
(あの希少な光魔法も僕が使えるって言って……、本当にできるようになった……)
ケイ自身も剣の振り方が雑なくせに、諦めだけは絶対にしない。
魔力が少ないのに、無茶な魔力操作ばかり繰り返す。
「ケイ、大丈夫?」
息を切らして倒れ、ボーッとしているケイに声をかける。
「……推しヒロイン……救う……」
「……何言ってるんだよ」
意味は分からないけど――
だけどなぜか……、胸の奥が少しだけ熱くなった。
(ケイはいつも前を見ている)
僕よりずっと、弱いはずなのに。
適性属性も、無いはずなのに。
(それでも、自分のことを諦めていない)
そういうところが少し……。いいや、とても羨ましかった。
僕は剣を握り直す。
(僕も強くならなきゃ!)
この世界に災いが訪れる。
根拠はない、だけど――
(胸の奥にずっと警鐘のような予感があるんだ。……確信めいた予感が)
視線を上げると、村の空は今日も青く平和だ……、でもきっと……。
隣で倒れているケイの姿に苦笑しながら、静かに呟いた。
「……大丈夫。僕も強くなるよ……みんなを守れるように……」
だから、何度でも剣を振る。
掌が裂けて血が滲んでも。
足が震えても。
――それが、僕にできることだ!!
◇ ◇ ◇
《ケイ視点》
三人でいつもの様に村へ帰っている時、ふいに森の方が気になった――
(可愛い女の子の気配がする気が……。ん?なんだそれ?……でも、なぜか行かないといけない気がする……)
俺は前を歩く二人に声を掛ける。
「姉さん、アイン、俺ちょっと森に忘れものしたから取ってくる! 先に帰ってて~」
二人に告げて俺は、気配のした西の森へ走り出した――




