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推しヒロインは俺が救う  作者: 白永央はひな
《第6章》学園闘技大会編

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第33話

 冬休みも終わり、三学期が始まった。

 まだまだ寒い日が続いていたが、学園の生徒たちはやる気に火がついていた。

 

「学年末恒例、“学園闘技大会“ね……」


 学園闘技大会は学園都市の名物行事にもなっており、普段よりさらに世界中から人々が集まり、都市全体がお祭り騒ぎになるそうだ。


 生徒や学園関係者以外が、エイユウ学園の敷地内に入れる数少ない機会でもあった。

(悪党の監視を、さらに強化しねーとな……)


 世界中から注目される学園闘技大会は、生徒たちにとって卒業後の就職先を確保する大事な機会になるため、みんなメラメラと燃えているというわけであった。

(就職活動ってどこも大変だよね……)


 俺はみんなに実力を見せるわけにはいかないので、早々に“不参加証“を学生会へ提出していた。

(学生会の面々は、会長の弟の実力が見たいとかゴネていたが却下だ却下!)

 

 姉さんだけは、“知ってた“という顔をしていた。

(さすが姉さん……)


 俺はこの日を待っていた――

(――俺は“あの子たち“を参加させて、自分の理論を証明するつもりだ)



◇ ◇ ◇

《アイン視点》

 三学期も始まり学園闘技大会に向けて、みんな修行に勤しんでいた。

 僕たち勇者パーティーは、大会自体が個人戦なので敵同士になってしまう。

 そのため、お互いに全力を尽くそうと約束していた。

(先日の反省も踏まえて、各々の課題に向き合うのに良いタイミングだったしね)

 

 それに――

(ラフィとウリエに会うと、ドキドキしてしまって集中して訓練ができないんだよね……)

 好きと言ってくれた二人。

 正直、とても嬉しい……。

(だけど僕は勇者として魔王を倒すために、今は強くならないと――)


 僕は雑念を捨てるため、大会までソロで迷宮に潜り、ケイに聞いた効率的な迷宮攻略法を必死に行なっていった。 



◇ ◇ ◇

《ラフィ視点》

 私はカフェでウリエと向き合って座っていた。

 ウリエに一度話をしようと誘ったのだ。


「……いつから好きだったのさ?」


 ウリエらしい直球な聞き方だった。


「あれは辺境伯学園にアインが入学して、しばらく経った頃だったかな?――」


 アインを好きになったエピソードを話した。


「そんな前からかいっ!?……じゃあ、あたいが婚約者宣言した時は、嫌だったんじゃない?」

(本当に優しい子ね……)


「いいのよ、私がなかなか素直になれなかっただけだもの。それに……、どっちが先とかじゃないでしょ?」


 笑顔で返すと、ウリエも笑顔になる。


「そらそうだ! 気持ちは戻らないしね!」

「そうそう。遠慮はいらないわ。私も全力でアタックしていくんだから!」

「あたいも負けないよ!」


 お互い固く握手をする。

 そして、私はため息をする。


「でも、押すとアイン逃げるのよね……」

「本当それな!」


 二人で最近のエピソードも踏まえて、アインがいつ自分たちに対して近づいて来てくれていたか、情報のすり合わせをしてみた。

 結果として、向こうから来る時はグイグイくるが、私たちが積極的に行動すると逃げてしまうのが共通していると分かった。


「……押してダメなら、引いてみる?」

「っ! それは良いかも!」

 

 こうして私たちは、恨みっこ無しのラブバトルを開始したのだった。



◇ ◇ ◇

《オルト視点》

 俺の名はオルト・クローニン。黒の死神のボスをしている。

(少し前まで、ただのスラムのリーダーだったのが偉くなったもんだな……)

 この世界には”魔法適性”に”ジョブ”と、生まれ持ったものと天から授かるものがある。

 その結果次第で大きく人生が変わってしまうのが現状だ。

 大きな夢を掴む者もいれば、逆に不遇に陥る者もいる。

(どの国でもその差が、特に都市部では、その差がエグいんだよな……)


 俺はそんな不遇故に足を踏み外した者を集めて、組織を作ろうと思っていた。そんな時にオーナーに声を掛けられて今に至っていた。

(なんか個性強いやつが多いけど、ここが俺の居場所って思えるようになったな……)

 急成長故の弊害――デスクの上に積まれ過ぎて前の見えない書類の山と闘いながら、オーナーとの出会いを俺は思い出していた。


「ただいま。オルト」

「うえいっ!!」


 耳元で急に囁かれて変な声が出てしまう。

 振り向くと彼がいた。


「ったく。勘弁してくださいよ、オーナー」


 俺の反応を見て、ケラケラと笑うケイ・ツクヨミ。オーナーを見て文句を言う。


「わるい、わるいって。いつもオルトは反応良いよな」

(絶対悪いって思ってねーな、この人)


 半眼の視線で抗議するが届いてないだろう。


「そうだオーナー、ゴンザレスから預かりましたよ例の物」


 俺は引き出しから取りだして渡す。


「おおっ! 信じてはいたけど心配だったんだよぉ。やっぱゴンザレスは、やる時はやる漢だな!」


 例の”暴風玉”を手に喜ぶオーナー。


「聞きましたが、辺境は酷いありようらしいですね?」

「そうだな……」

「でも首都とイセ村は、死者もいなかったんでしょ?」

「まあな。他の町村は全滅だけどな……」


 少し暗い顔になるオーナー。


「……オーナー。一人じゃ全部は救えねえんだ。全部自分で抱えなくて良いんですよ?」


 オーナーは驚き、表情が和らぐ。


「っ!……ありがとな、オルト」

「俺の方が年上なんだ。力はないですが、それ以外なら頼って下さいよ?」

「お前は本当に良いやつだよ! これからも頼むぜ、ボス!」

「お任せを。オーナー」


 二人で少し談笑していると、ゴンザレスが例の三人を連れて戻ってきた。


「おっ!? 旦那ぁ!! おかえりなさいませっ!!」


 いつも思うが、あのポージングは必要なんだろうか?


「ゴンザレスっ! これ、ありがとうな。お前を信じて任せて正解だったぜ!」

「その信頼に答えるのが俺ですぜ? 旦那ぁ!!」

「お前らも久しぶりだな。ゴンザレスにしごかれたか?」


 オーナーが同じ学園に通う三人に話しかける。

 この三人は表のクラン、黒の死神に所属するパーティー『三者三様』の三人だ。


「なんくるないさ~、余裕だったよ~」


 この子はナミエ・シーサ。エルドラド王国南方の島国出身の『霊媒師』だ。


「ゴンザレスさんは優しかったっす!」


 この子はモニカ・ホワイト。シルク神聖国の辺鄙な村出身の『聖戦士』だ。


「ゴンザレスさんは飴ちゃんくれるので好きです」


 この子はルウ・シープ。羊獣人の『杖使い』だ。


「ゴンザレス甘々か?」


 少し呆れるオーナー。アハハと横を向き笑っているゴンザレス。


「よし! お前ら、いよいよ学園闘技大会が近づいてきたぞ! 学園のみんなの度肝を抜いてくれよ?」

「やったるさ~」

「了解っす!」

「頑張る……」


(うちの奴らは、みんな返事が統一しねーな……)

 チラッとオーナーを見ると、同じ様な顔をしていた。


 ゴンザレスたちが出ていき、オーナーと二人になる。


「いろいろ頼むことも多いけど、頼むなオルト」

「正直大変ですが……。オーナーのおかげで毎日夢を見させてもらってますよ!」

「やりたいことはできたのか?」

「形になってきてますね。魔法適性やジョブなんて関係なく働ける、一緒に笑える環境――」


 本当に夢みたいな場所に近づいた。


「いつも感謝してますよオーナー」

「……そうかい。じゃあ頑張って働いてくれ」


 オーナーはそう言って部屋を後にしていった。


「じゃあ働きますかね!!」


 そして俺は、書類の山との闘いを再開した――


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