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推しヒロインは俺が救う  作者: 白永央はひな
《第4章》合同迷宮探索編

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第25話

《アイン視点》

 合同迷宮探索が始まった――

 僕たち勇者パーティーの引率は、学生会のトップメンバーが担当してくれた。


「お前たちは40層も踏破してるんだな! じゃあ41層から行こうか! わたし達がいるからって油断するなよ?」


 アイナ・バビロン副会長は『槍聖』にして、隣国バビロン帝国の第一皇女様だ。

(すごいフランクなお姫様だな……)

 そう思ったが、自分のパーティーメンバーも似たようなものだったと思い出した。


「あんまビビらせんなよアイナぁ? お前らぁ、あたしらがいるから安心して良いぜ?」


 キララ・タイガー風紀長はアーキと同じ『拳聖』で高身長の虎獣人だ。

 チラっとアーキを見ると、険しい表情でキララ先輩を見ている。


「…………」


(同じ獣人族だし、昔何かあったのだろうか?)


「ですです。緊張し過ぎても、緩み過ぎてもダメですよ」


 メルル・ヘルメーズ書記長は、二年生で書記長を任せられている秀才だ。

(ラフィもだけど、メガネしてる人は頭が良い人が多いのかな?)

 

 僕たちも挨拶させてもらい、41層から探索開始となった。


「いつも思うけど、転移ポータル機能って偉大よね……」


 僕としては当たり前の機能と思っていたから考えたことがなかったけど、ラフィが言う通りで無かったら迷宮攻略なんて無理だろうなと思った。

 

 41層からは森林ゾーンで、獣系の魔物が出てくる。

 50層近くになると”キメラ”も出てくるようで、油断できないと思った。

 

「フォレストタイガーの群れだ!」


 先頭に立っていたミカエラが叫ぶ。


「結構な数がいるぜぇ、どうするよ勇者様?」


 キララ先輩が僕たちを煽る。


「僕たちが正面から当たります! こぼした敵をお願いします!」

「いいだろう! やってみせてよ!」


「はい! 行くよみんな!!」

「「「「「はい!」」」」」


(三十体はいるか!?)


「セラフ! ラフィ!」 


 二人とも高威力魔法の詠唱を終え魔法を待機させていた。


「ウォーター・スパイラル!!」

「ウインドォ~・バーーストォ!!」


 二人の魔法がフォレストタイガーの群れの真ん中に炸裂――

 その爆風の衝撃で周りの木々もへし折れた。

 巻き込まれた魔物たちは悲鳴を上げる暇もなく吹き飛び、半数が地面に崩れ落ちる。


「メテオォ・アタックー!」


 更に生き残りの中心に、ウリエの範囲攻撃が叩き込まれて地面が炸裂する――

 衝撃に耐えきれず、左右へと散った生き残りが体勢を崩した。


「行くぞアーキ!」

「……うんっ!」


「ライト・スラッシュ!」

「破岩連撃!」


 光の斬撃と重い拳がそれぞれ左右の魔物たちを、次々と倒していった。 


 キララ先輩がヒューと口笛を吹く。


「さすがだねぇ〜。問題なく下層に行けそうだよ」


 アイナ先輩たちも頷いていた。


「っ!? 警戒!……何か来る!」


 アーキがみんなに警戒を呼び掛ける。


「おぉ、ちゃんと気付いたな? いい感知だ……」


 キララ先輩のもの言いに対し、アーキは先輩を睨んだ。


「なんでそんなに嫌うかねぇ?」

(キララ先輩には心当たりないんだ?)


 そんなことを考えていると、警戒すべき敵が木々の間から姿を現した。


「お? レアを引いたようね~」


 この層ではレアな魔物――”キメラ”が現れた。

 しかも三体だ……。


「気を引き締めなぁ。……あいつは中々に強いぜ?」


 キララ先輩がヘイトを取って、キメラを一体連れて離れる。


「頭もそこそこいいから気を付けてね?」


 アイナ先輩が他の一体を横薙ぎにして吹き飛ばした。


「みんな、いくよ!」

(僕たちで残りの一体ってことだよね!)



◇ ◇ ◇

《キララ視点》

 あたしは、キメラの攻撃を笑いながら紙一重で躱していた。


「オラオラ、そんなもんかぁ!?」


 あたしの黄色のショートヘアが逆立つ。

 拳に力を集め、空気を震わせた――


「剛拳乱舞!」


 あたしの連撃が叩き込まれるたび、キメラの巨体が浮き上がる。

 最後の一撃で高く打ち上げ、追加のぉ――


「剛爪乱舞!!」


 空中に無数の斬撃を走らせ、肉片となったキメラが霧散した。


「さあて、あっちは平気かな?」



◇ ◇ ◇

《アイナ視点》

 わたしは横薙ぎで吹き飛ばしたキメラが起き上がる前に、敵の眼前まで移動した。

 キメラは驚き立ち上がろうとするけど――


「遅いよ」


 わたしの槍が、一瞬で四肢を全て串刺しにする。

 再び地に伏せさせられたキメラが、わたしを見上げて目を見開く――


「…………」


 橙色のミディアムヘアの間から覗かせるわたしの黄色の瞳がキメラに死を想像させたようで、震え脅えているように見えた。


「さよなら」


 わたしは一刺しでキメラを消滅させた。


(ふぅ、なんでか戦闘になると頭が冷静になるのよね……)

 

 わたしは戦闘時はクールになると周りの人たちから言われることが多かった。


「さて、あの子たち、大丈夫よね?」



◇ ◇ ◇

《アイン視点》

 僕たちも、いつもの連携で問題なくキメラを屠っていた。


「うんうん。この子たちは優秀ですです」


 メルル先輩も褒めてくれていた。

 アイナ先輩もキララ先輩も感心したような言葉をくれた。


「よろしい。どんどん行くわよ!」 

「「「「「「はい!」」」」」」


(アイナ先輩もキララ先輩も強い。僕はこの合同迷宮探索で先輩方からいろいろと教わって強くなるぞ!)


 その後も順調に迷宮探索を進めていった――



◇ ◇ ◇

《ケイ視点》

 合同迷宮探索が始まった――

 俺と姉さんは、全員がそれぞれ迷宮に入っていくのを見守っていた。


「みんな入ったわね? じゃあ、行きましょうか――」

「了解、行こっか!」

(さて、20層くらいで適当に――)


 転移ポータルに俺が触る前に姉さんが触れて言った。


「――50層」


 瞬間、俺と姉さんは50層の転移ポータルに飛んだ。


「…………」

「やっぱりケイは一人で50層まで来てたのね?」

「………うん」


 姉さんは上機嫌でニコニコであった。


「……さすが、俺の姉さんだよ」


 ため息が出てしまう。


「あら、ありがと? さすが私のケイね」


 笑顔で褒めてくれる。


「きっとここまで来る子はいないから、サクッとボスを倒して、訓練開始よ!」

「りょーかーい……」


 とても嬉しそうな姉さんであった。

(そんなに喜んでもらえるんじゃ、仕方がないか……)


 50層のボスをサクッと倒し、姉さんと対峙する。

 姉さんから発せられる圧は”双斧の戦鬼”バロンと同等のものだった。

(マジか姉さん、どんだけ強くなった?)


「いくわよ、ケイ!!」


 姉さんの姿は消え、斬撃が襲ってくる。

 ガリッ!! ガギッ!! ギャリッ!!

(うおぉぉ!? なんかすごい音!?)


 一度距離を取って、姉さんの長剣を見る。

 姉さんの剣の周囲を風の魔力が走っていた。


「あら気づいた? 魔法剣よ」


(いやいや、通常の魔法剣じゃ、あんな音しないでしょうよ?)


「私のオリジナルだけどね! 風の刃を限界まで強く薄くして――」


 俺に見えるように剣を前に出して見せてくれる。


「丸いブレードをたくさん形成してね、それを高速回転させてるの」

(チェンソーかい!? 怖!?)


「普通の剣なら真っ二つなんだけど?……ケイの剣は特別製?」


 実は最近ディーに渡された試作品であった。


「俺のも特別製。ミスリルと特殊繊維で出来た特殊鋼で、なんと純魔力伝導率80%だよ?」

「あなたの魔力で強化されてるわけね、なら納得かな?」

(姉さんの俺への信頼がすごいな……)


 そして姉さんは、”あの笑顔”になった。

 あの俺をボコボコにした時の笑顔に――


(あれ?……俺は余計なことを……)


「じゃあ、全力で打ち合えるのね?」

「いや!? これ試作品だからね!?」

「じゃあ余計に、限界まで使わないとね!?」


 そこからは姉さんの気が済むまで打ち合った――


 最近姉さんにも二つ名がついたのだ。


 『疾風の剣姫』


 その名に相応しい姿がそこには在った。


 俺の縮地と一緒で姉さんは身体強化×風魔法を身体に纏わせた高速移動を行なっていた。

(その上でチェンソー攻撃の魔力制御までも行えるのだから化物でしょ!)

 高速戦闘しつつ致命的な斬撃と打ち合う――俺も段々と楽しくなってきた。

 迷宮の天井や壁などは基本的に時間経過で元に戻るが、この部屋は元に戻るのかという有様になるまで二人で暴れまわったのだった。


 ――数時間後


 二人で大の字になって、息も切れ切れに話す。

 

「さすがねぇ、ケイ……」

「俺はもっと強くなってると、思ったんだけどね~」

「まったくこの子ったら、どれだけレベル差があると思ってるのよ?」

「……俺は、誰にも負けない力が欲しいんだよ~」


 そんなことを話しながら、久しぶりに姉弟で笑い合っていた。

(そうだ! 今のうちに姉さんに言っておこう――)


「――そうだ姉さん、お願いがあるんだけど?」

「何かしら?」

「お願いはね――」


 こうして合同迷宮探索は、大きな問題もなく終わった。

 

 風も冷たくなり、迷宮の外には冬の気配が満ちていく。

 俺はこれから始まる冬休みイベントへと思いを巡らせていた――


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