第23話
《アイン視点》
僕たち勇者パーティーは、一年生のパーティーで最初に40層のボスを倒した。
「あっ…………」
(ボスを倒した瞬間に位階が上がった気がする……)
みんなで深淵迷宮から出て、入口付近にある【ギルド深淵迷宮前簡易出張所】へ行く。
通常のギルド支部と違って”買取専門”だった。
(ちゃんと鑑定水晶は設置してあるけどね)
「ステータスチェックさせて下さい!」
「どうぞ。奥の個室をお使い下さい」
僕は個室へ移動し、ステータスを確認する――
名前:アイン・アマテ
レベル:30
年齢:18歳
ジョブ:光の守護者
適性属性:光
魔法・技能
・光魔法:A ・剣術:A ・体術:A ・直感:A
・無属性魔法:A ・魔力操作:A
・身体強化:C
・アンチバッドステータス:F(New!)
(……よし!)
画面を確認して、僕は手を握りしめて小さくガッツポーズをした。
「ケイは本当に何でも知っているよ……」
少し呆れつつも頼もしい親友がいることに、僕は小さな勇気をもらった気がした。
その後――
”アンチバッドステータス”の熟練度を上げるために、さまざまな状態異常攻撃を所望する僕にラフィがドン引きするのは、また別の話だ……。
◇ ◇ ◇
《ケイ視点》
さて、今日もやってきました二学期クエスト。
(今日はリウムちゃんのクエストにするかな?)
目的の依頼書を取って、カウンターへ持って行き受付してもらった。
(今日はゴンザレスはいないな。しっかり仕事しているようで偉い偉い――)
ギルド内にゴンザレスの姿がないので安心していたが……。
地下の訓練場からワイワイと上がってくる一団が見えた。
「いや~、今日もゴンザレスさんの大胸筋が一番いい動きしてましたよ~」
「俺はやっぱり広背筋が素晴らしいと思いましたよ~。ザ!ゴンザレスって感じでしょうアレが」
「何言ってんだよみんな!ゴンザレスさんと言えば、やっぱり上腕二頭筋でしょうが!?」
「お前ら褒めすぎだぜぇ~、俺がお前たちを筋肉の高みに連れてってやるぜぇ!」
デレデレ顔のゴンザレスが筋肉子分を連れて上がってきた。
俺は黙ってバカ(ゴンザレス)の前を通る――
「っ!!!!」
――俺はそのままギルドを後にした。
『ゴンザレスさん!?どうしたんですか!?真っ青ですよ顔が!!』
『急にゴンザレスさんが震えだしたぞ!!』
『ダメだ!!意識が無いぞ!?神官さ~~~ん!!』
(マジで覚えていろよゴンザレス――)
俺は心にやつの罪を刻んだ――
◇ ◇ ◇
リウムちゃんの依頼②:おばあちゃんの手伝い――
「おにいちゃん、また受けてくれたの?」
俺はしゃがんで視線を合わせる。
「リウムちゃんの頼みは聞いてあげたいのさっ!」
俺はリウムちゃんの頭を撫でる。
「ありがとう~」
ニコニコのリウムちゃんと手を繋いで目的地まできた――
依頼の内容は隣の家のおばあさんのお手伝い。
「おばあちゃんがね、腰を痛めちゃってね、大変みたいなの~」
リウムちゃんの説明だと、庭の整備などの全般を手伝ってもらいたいそうだ。
(うん、この報酬額では誰もやらないクエストだね。……俺以外は)
「申し訳ないのう。忙しいだろうに、優しいこの子に付き合って下さって、ありがとのぅ」
おばあさんは俺にコッソリと囁く。
「適当でええからの?」
「心配いりませんよっ」
俺は笑って返す。
おばあさんには家の中で休んでてもらい、リウムちゃんと庭にやってきた。
(想像以上だぜ……)
庭は荒れ果てており、花なども全て枯れてしまっていた。
(倉庫に花の苗や種は買ってあるらしいが、まずは片付けからだな)
心配そうに見てくるリウムちゃん。
「大丈夫だよ、道具の場所だけ教えてくれるかい?」
(俺の身体強化を舐めないで頂きたいっ!)
片付けなどは秒で終わらせた――芝刈りだって一瞬で終わった。
途中、リウムちゃんが「すごい速いね~」と俺を見て言っていたが、それは”残像だよ”とは言えなかった。
(リウムちゃんを無視したみたいでゴメンね……)
粗方がきれいに整ってきた所で……。
リウムちゃんに庭のレイアウトなどを聞き、抽象的なイメージを形にしていく。
(花の回廊なんてよく思いつくな~)
などと感心しつつ、苗や種をリウムちゃんと植えたり蒔いたりしていった。
その作業が終わった頃におばあさんがやってきて驚く……。
「あらまあ、すごい。とても綺麗になっているわっ」
リウムちゃんも褒められてご満悦である。
「ここからがお楽しみだよ、リウムちゃん」
俺は片目をつぶり口元に人差し指を当て、リウムちゃんへ告げる。
「ここで見たことは内緒だよ」
俺は魔力を開放して、苗や種に魔力を流して活性化させていく――
パァァァァァ
庭の花々が一斉に咲き乱れた。
「っ!! すご~~~い!! きれ~~~!!」
リウムちゃんは大はしゃぎで喜んでくれた。
しかし、おばあさんは驚き腰を抜かしてしまった……。
(あっ!……やば……)
急いでおばあさんの腰を魔力で治療してみた。
腰の魔力回路が活性化させる――
「ありゃ?……痛くない?」
――腰痛が治った……。
(マジか……)
自分自身で驚いた――魔力マジで万能である。
「ありがとう! これあげる!」
渡されたのは、古びたメダル。
「また、拾ってくれたのかい?」
「そうなの!なんかお出かけ先でよく見つけるの!」
「そっか、ありがとう。おにいちゃんはこれをもらうの嬉しいよ」
俺は笑顔でしゃがみ込み、頭を撫でてから受け取る。
(謎の古びたメダル、二枚目ゲット――)
◇ ◇ ◇
《ゴンザレス視点》
俺の名はゴンザレス。
今は黒の死神の表のリーダーをしている。
俺らのパーティー『筋肉最強』は学園都市ギルドで最強クラスまで昇りつめている。
それだけ旦那の特訓や訓練法が優れているってことだ。
(あの時に命乞いして良かったな――)
あの日は闇組織の用心棒として夜の番でいたんだが……、どうにも筋肉具合がいまいちで、トイレでポージング調整を行なっていたんだ。
及第点になって現場に戻ったら――トラウマものの景色が広がっていた。
「は?…………」
見渡す限りの絶望。
空には首から上や腕、身体のさまざまな部位が、斬り飛ばされて舞っていた。
魔術師は首と身体が離れているのに気づかず詠唱しているやつもいた。
「あ……え……」
俺の思考は停止して、その場に膝から崩れ落ちた。
その光景を眺めたまま動けなかった、俺はいつの間にか大声で泣いていた――
「だずげでぐだざい!じにだぐない!うあああ~~~!!」
しばらくして……、
カツンカツンと足音が近づいて来て、俺の前で止まった。
「…………」
死の恐怖から俺の泣き声も止まり――漆黒の死神は告げた。
「……死にたくないのか?」
――よく覚えてないが、必死に泣き叫びながら懇願したと思う。
ため息の後に、「仕方ねーな」と呟いた言葉だけは覚えている。
俺が用心棒をしていたのは、“属性魔法適性の無い落ちこぼれ“だったからだ。
それに『暴力人』ってジョブも、周りからは煙たがられたな。
(ジョブと人格は違うのによ……)
だから俺はゴロツキみたいな用心棒になるしかなかったんだ。
でも、旦那は違った――
「属性魔法を扱った経験が無いことが、きっとお前を強くしてくれるだろうさ」
無いことを認めてもらって俺は少し嬉し泣きしちまったんだよな……。
でもよ……、強くなるための特訓は地獄だった――
《第一段階》
「手を出せ」
旦那に手を握られる。
(見た目に反して、ゴツい手だな?)
そんな感想も束の間、手が温かくなってきたと思ったら。
「いくぞ――」
――身体中に電流が走り、俺は意識を失った。
しばらくして、意識が浮上する。
「今のは、俺がお前の魔力を強制的に押し出し、吸収した」
(意味が分からねーーー!!)
「魔力はゼロになると増えるんだぜ?」
旦那は笑顔で俺の肩に触れる。
「……え?」
バシッ!!
そこからは……、意識を失う、覚醒、白目を剥く、朦朧とするを繰り返した。
何度も、何度も、何度も…………。
――もう意識が戻らないかも知れないと思った頃に唐突に終わった。
「……こんなもんかな?」
そんな軽い一言があった気がした。
《第ニ段階》
俺は魔力回路を限界まで拡げられ、魔力を強制的に循環させられたことで、魔力操作ができるようになっていた――
「圧縮しろ」
言葉はそれだけだった。
無属性魔力を球体にまとめ、圧縮する。
“良いと言われるまで“だ。
魔力を球体に維持するのも大変なのに、それを更に圧縮し続けろと言う。
集中させるということは、中心に力が集まる。
逆に分散しようという反発力も強くなっていく。
気を抜いた瞬間――
「イッ!?ガアアアア!!!!」
あまりの痛みに泣き叫んだ。
外傷は無い。
反発した魔力が、俺の魔力回路を逆流してズタズタにしたのだ。
旦那は――
「続けろ」
あまりの痛みに躊躇うが……。
(横で観ている旦那の視線が恐ろしいっ!!!!)
魔力回路だけでなく、身体中の筋肉もその過程で何度も裂けた。
何度も、何度も、何度も…………。
――いつの間にか、魔力回路だけでなく、身体中の筋肉も魔力を帯びていた。
「お前の筋肉が、飾りだけじゃ無くなったようだな?」
気付けば、俺の身体は
魔力を流すだけで、鋼のように硬くなっていた――
《最終段階》
「これが、最後の特訓だ」
俺は歓喜した。
いつ終わるか、何種類あるのか全く読めない中で、“最後“と言う言葉が出たのだ。
「構えろ」
(……え?)
次の瞬間、強い衝撃と共に意識を刈り取られていた。
しばらくして、意識が覚醒する。
旦那は近くのベンチに座っていた。
「立て、構えろ」
俺は何とか立ち上がり、構えた。
――瞬間、また意識を刈り取られる。
俺がフラフラになっても終わることなく続いた。
何度も、何度も、何度も…………。
いつしか身体の感覚は無くなり、意識だけが研ぎ澄まされていった。
ガシッ!!
「……ほぅ」
俺は無意識に旦那の攻撃をガードできていた。
旦那が笑い。
「よく耐え抜いた。特訓は終了だ」
旦那のうしろ姿を見ながら、俺は意識を手放した。
地獄の特訓は二度としたくない。
でも、だから俺はここで笑っていられる。
しかし――
(ギルドで会った旦那の目は……、あの特訓の時の顔だった気がする――)
明日、俺は生きているのかな?
俺はそんなことを思うのだった――




