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推しヒロインは俺が救う  作者: 白永央はひな
《第4章》合同迷宮探索編

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第22話

《ステラ視点》

 エイユウ学園では【生徒学生会】が強い権力を持っている。

 理由は簡単で――

 生徒学生会のメンバーは学園における”強者”だからだ。

 ”完全実力主義”を謳っている通り、生徒学生会――通称、学生会は各学年の強者だけが入ることを許されているのだ。


 生徒学生会室――


「みんな揃ったわね。じゃあ、学生会会議を始めてちょうだい」

「了解です姐さん! あたしが司会進行をするよ!」


 学生会長である私の合図で、今学期の会議が始まった。

 なぜか席に着かず、私の横にずっと立って進行するのは”学生会副会長アイナ・バビロン”だ。

(とても懐いてくれて可愛いのだけれど……)

 小さくため息を吐き、事実の確認だけはしておく。


「……あなたの姉ではないのだけれど?」 

「細かいことは良いじゃないですか!姐さん!」


 いつものやり取りなので、私以外の周りはスルーしている。


「進めてちょうだい」

「了解です! 今日は毎年恒例の”合同迷宮探索”における、組分けを決めていく!」


 アイナがテーブルの右側、三年生の先頭に座っている”学生会風紀長キララ・タイガー”を見る。


「どうですか先輩? 今年入った奴らの情報は集まりましたか?」


 キララは歯を剝きだして笑いながら答えた。


「ああ、他のメンバーと一緒に、目ぼしい奴らのチェックをしてきたぜ? メルルにデータは渡してある」

「ありがとうございます。メルル、もう仕分けはすんでるの?」


 アイナはテーブルの左側、二年生の先頭に座っている”学生会書記長メルル・ヘルメース”を見る。


「はいです。もう済んでますよ副会長!」


 メルルがメガネをクイッと上げて答える。


「よろしい。ではそのデータを元に、各学年の組み合わせを決めていくよ!」


 アイナの音頭で組み分け作業を行なっていった。


 合同迷宮探索とは上級生が一年生を引率して深淵迷宮を探索する行事だ。

(通常の一年生は、まだ上層で探索に慣れている頃だもんね……)

 そのため、この企画は毎年一年生から大変感謝されるイベントでもあるのだ。

 

 毎年一部はいる例外――

 今年は勇者パーティーがそれにあたり……。

(もう40層手前まで到達……ね……)


「姐さん、学生会トップはやっぱり勇者パーティーの引率ですかね?」


 私は手を顎に当てて思案する――

 隣でアイナが「考える姿も凛々しい!」とうるさいので黙って欲しい。


「あの子たちは、学生会トップメンバーに任せるわ。リーダーのアインは私の可愛い弟だから、みんなよろしくね?」

「えっ? 姐さんは?」


 私は笑顔で人差し指を口元に当てアイナへ微笑んだ――



◇ ◇ ◇

《ケイ視点》


「ケイっ!」


 廊下を歩いていると、遠くから姉さんの声がして振り向く。

(姉さんだ! 相変わらず美しいっ!)

 振り返り、俺も姉さんの方に歩いていく。


「姉さん、久しぶり。忙しい時期だろうに、どうしたの?」

「ふふふ、相変わらずねケイは」

「そんなことないよ! めっちゃ忙しいよ?」

(本当にいろいろと忙しいんだよね……)


「そうなのね? 今日はケイに良い話を持ってきたのよ――」


 ん?……なぜか、寒気がした?

 姉さんを見ると、とても良い笑顔であった。

(あれ? この笑顔、どこかで……っ!!)


 そうだ……、あれは姉さんに”魔法防御”を伝えた時の――


「合同迷宮探索あるでしょ? フフフ、学生会長権限でね? 二人で行けるように手配したわっ」

(ああ……、そういう……、俺は、生きて帰ってこられるのかな?……)

「じゃあ、楽しみにしててねケイ。私も忙しいから行くわね~」


 姉さんは言いたいことは言えたと手を振って、今度は走って行ってしまった。

 俺は去り行くうしろ姿を、ただ見守ることしかできなかった――



 ◇ ◇ ◇

《アイン視点》

 僕は合同迷宮探索を楽しみにしていた。

 そんな合同迷宮探索の組み合わせが貼り出されたと聞き、僕は掲示板へ足を進めていた。

(ステラ姉さんは今年で卒業。一緒に深層迷宮へ潜れるのは、これがきっと最初で最後だよね……)

 僕たち勇者パーティーは、一年生の中でトップパーティーだ。

 慣例だと学生会トップメンバーは、一年生のトップパーティーと組むらしい。

(久しぶりだし、どれだけステラ姉さん強くなったんだろう? 想像もつかないなぁ~)


 上級生から更なる強さへの導きを乞える機会への期待。

 ステラ姉さんの強さを観れる期待。

 強くなった今の自分を見たステラ姉さんが、どう思うのだろうという期待。

(ステラ姉さんとの探索を全力で――)


 そして、組み合わせが掲示してある掲示版を見た――


 『勇者パーティー』 × 『生徒学生会トップチーム』(ただし会長は除く)


 僕は静かに崩れ落ちた――



◇ ◇ ◇

《ケイ視点》

 合同迷宮探索のことは一旦置いておき、俺は二学期のクエストを受けにギルドへ来ていた。

(お目当てのクエストは……、あった。今日は一件にしておくかなっ)

 俺は三枚の依頼書のうち一枚を取りカウンターへ持っていく――

 そこには、ギルド受付嬢を口説くバカ(ゴンザレス)がいた。


「あれ!? だん」

 

 俺を見たバカが何か言おうとしたが、全力で睨んで止める――


「だんだんだんだん飲みたくなってきた~」


 そんなことを言ってゴンザレスは飲食スペースへ歩いて行った。

(後で教育が必要だな……)


『おおぅ!?どうしたんですかゴンザレスさん急に震えて、顔色悪いですよ?』

『か、か、か、カゼかなぁ?酒飲めば治るだろうぜ』


 後ろで何か聞こえる気がするが無視する。


「これ受けます」


 依頼書を受付嬢に渡すと――


「……これは」

「ん?」

「このクエストは何組も失敗しているのですが、大丈夫ですか?」


 内容を見る。 

(フムフム。なるほど?)


「もしかして、依頼主が納品されても『これじゃない』って言ってます?」


 受付嬢は驚いて。


「よくご存じですね?」

(やはりな……)

「見当がついたので、大丈夫だと思います!」


 受付をしてもらいギルドを後にした。去り際に、ゴンザレスをもう一度睨んでおいた。



◇ ◇ ◇

 ゲンナイの依頼②:”トレント”の入手――

 そう、トレントの素材ではなく、”トレント”の入手だ。

 素材になってはダメらしい。ゲンナイらしいと言えばらしい。

(これが他の冒険者が依頼達成できない要因だろうな……)


 ゲームだと確率で”生きたトレント”なるドロップが落ちて、それを納品すれば良かったけど……。

(現実は確率ドロップじゃないよなぁ、きっと……)


 学園都市の南にある【魔性の森】へ来た。 

 ”トレント”は木の魔物だ。

 魔力を帯びた木?ではなく意思がある魔物だ。

 

「ゲームでもトレントは強い魔物であり、弱い魔物であるって言われてたなぁ」

 

 動きは速くないが遅くもない。しかし、力はとても強い。

 そのため、トレントの擬態を看破して遠距離からめった打ちにして倒す。それができないパーティーはこの魔性の森には近づかないのだ。

(相性次第ってやつだね~)


「さて、いろいろ試すかね?」


 魔性の森にはたくさんのトレントがいる。

(実験し放題ってね!――)


 …………


 結果として、十分量確保できた、大量だ。素材だけならヤバい量だ。

 魔核周囲を刳り貫けば”生きたトレント”が確保できた。しかもアイテム扱いみたいでアイテムボックスに仕舞えたのがでかかった。


「この素材、何かに使えそうだから後でディーにでも渡すかな?」


 そんなひとり言を呟きながら帰路に就いた。



「これじゃあ!!これじゃよ!!ありがとの!!」


 ゲンナイはダッシュできて、奪って行った。

(前と同じやん)


 ――数時間後


「おおう! あれ? また儂やってしまったの?」


 コクリと頷いておく。


「申し訳ない。たしかお主は前もやってくれた子じゃな?」

「はい、そうです。俺はケイ・ツクヨミ。ケイって呼んでください」

「ケイか、覚えたぞ! また依頼があったら頼むからよろしくの!」


 笑顔で握手をして店をあとにした。


(よし、これでさらに進んだぞ)



◇ ◇ ◇

 学園寮へ帰る前に黒の死神本部に寄って、ディーに”生きたトレント”とトレントの素材を渡した。俺はこれで研究が進むと良いねと軽い気持ちで渡したのだが……。


「そういえば、エイユウ学園の制服って布なのにやたら防御力高いよね?参考になる?」

 

 何気ない一言を添えて――


 ディーは目を見開き、そして俯いた。


「そういうことですか……」


 メガネを輝かせ、口元に弧を描き、笑いながら行ってしまった。


 

 この日を境に、黒の死神の武具は加速度的に進化していくことを俺も予期していなかった――


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